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24. 必死の捜索

 

 エレナが王宮から出て行った日、みんな夜中までエレナを探していた。しかし、どれだけ探しても見つからなかった。リヒトもエレナを探しに街に出ていた。


「エレナ、どこにいるんだ」

 リヒトは馬車の中で1人呟いた。


 王宮に戻ったリヒトはそのまま牢へと向かった。牢にはエレナをひどい目に合わせた奴がいる。

 牢に行くと拷問(ごうもん)を受け、悲惨な姿をした男がいた。こいつだけは絶対に許さないと決めていた。でも、こいつと同じぐらい自分も許せなかった。


(俺は、エレナを助けたかっただけなのに)

「おいおい、そんな顔をしたいのは俺の方だぜ?」

 突然、男が話しかけてきた。


「お前がこんな目に遭ってるのは自業自得だろ?」

「さあ、どうだか。そもそもあんたがもっと国のことを考えていれば、俺だってあんなことしなかったさ」


 その言葉に俺は何も言えなかった。

(たしかに、俺は今まで国民のことを見ていなかった。国王として何もしてこなかった。全部俺のせいだ)

 この男を責める資格は俺にはないのかもしれない。それでもこの男がエレナにした仕打ちを許せるはずがなかった。




 そして、エレナがいなくなって1ヶ月が経った。リヒトがエレナの捜索を止めることはなかった。

「エレナ、一体どこに行ったんだ」

「陛下、少しお休みになられてはいかがですか?」

「ああ、そうだな」


 焦ったところでエレナは見つからない。でも、またエレナがひどい目に遭っていたらと思うと気が気ではなかった。

(無事ならいいんだが)


 王宮は昔のような冷たい空気が(ただよ)っていた。エレナがいたときはリヒトも笑っていた。しかし、リヒトはエレナがいなくなって以来笑顔を見せることはなくなった。


 エレナが見つからない怒りを毎日牢にいる男にぶつける。こいつを殴っている間だけは少し気持ちが楽になる。無心で殴り続けた。時折骨が折れるような(にぶ)い音がした。それでもひたすら殴った。どれくらいの時間がたったのだろうか。気がつけば男は気を失っており、リヒトの手も血がたくさん出ていた。


 なかなか戻らない俺を不思議に思ったのか、牢の外で待機していたアーサーが中に入ってきた。

「陛下、怪我の手当てをいたしましょう」

「いや、いい。なあ、アーサー」

「はい、なんでしょう」

「俺を本気で殴ってくれないか?」

「何をおっしゃっているんですか?」

「こいつを殴ってて思うんだ。本当に殴られるべきは俺なんじゃないかって。俺がもっとちゃんとしてればこんなことには」


 パァン


 その時、牢屋に乾いた音が響いた。アーサーがリヒトの顔を叩いたのだ。リヒトは驚いた。

「陛下が弱気になってどうするんです? あなたはこの国の王です。後悔してる暇があるならこれからどうするべきか考えてください。私も全力でサポートいたします」


 アーサーのこんな怒鳴るような大きな声は初めて聞いた。

「ああ、すまない。おかげで目が覚めた」

「いえ、いくら命令とはいえ叩いてしまい申し訳ありません」

「いや、情けない姿を見せたな。俺は国王としての自覚が足りなかった。けどお前のおかげでようやく覚悟ができた」


(遅すぎるな。気づけば国王になって5年。あの日からもう5年も経ったのか)



 それからその言葉通りリヒトは国民のことを考え、このクロデリア王国をよりよくするために動いた。他国の視察などもして、いいところは自国に取り入れたりと、毎日忙しく過ごしていた。


 その間ももちろんエレナを探し続けた。もしどこかで幸せに暮らしているのならそれでいいと思っていた。ただ無事かどうかだけ知りたい。


 そして、エレナがいなくなって半年がたった頃。ようやくエレナが見つかったという報告が入った。その者の話によるとエレナは幸せに暮らしているという。もちろん、エレナの幸せを邪魔をするつもりはない。ただ、一目見たかった。笑っているエレナの顔を。


 1週間後、他国に視察に行く途中にエレナがいるという街に立ち寄った。半年ぶりに見るエレナは本当に幸せそうだった。街の人とも親しいみたいでいろんな人から話しかけられていた。エレナはここに自分の居場所を見つけたんだ。自分が居場所を作ってあげられなかったことは悔しいが、エレナの笑顔を見たらこれでいいと思えた。


(どうか幸せで)

 リヒトはエレナの姿を目に焼き付けた。


「行くぞ」

「はっ」

 そう言って馬車に戻ろうとした時、路地裏からみすぼらしい格好をした女性が出てきた。この街は彼女みたいにみすぼらしい格好の人は1人もいない。貧しくても、きちんとした家はあるし、服も食べ物にも困ることはない。そんな街にいる彼女の姿は異質だった。そんな彼女見ると誰かを睨むように見ていたので、彼女の視線の先を見るとそこにはエレナがいた。


(そういえばどこかで見たことあるような……)

 そう思った時、その女性がナイフを握っているのが見えた。


(まずい)

 俺は咄嗟(とっさ)に体が動いた。

「あんたのせいで。あんたさえいなければ」

 そう言いながらエレナに近づく女性に、周りの人は誰も気づかない。エレナを含めみんな会話に夢中だった。


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