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12. エレナのために

 

 リヒトが自分の言葉に後悔していた時、部屋をノックする音が聞こえた。

「入れ」

 すると扉から騎士団長、料理長、庭師などいろんな役職の人たちが10名ぞろぞろ入ってきた。


「お前たち揃いも揃ってなにしにきた?」

 こんなに同時にリヒトの部屋に人が集まることはない。いつもはリヒトに怯えてよっぽどのことがない限り近寄らないからだ。

「陛下、僭越ながら申し上げたいことがございます」

 そう言ったのは騎士団長のルイスだった。


「言ってみろ」

「はっ。私が申し上げることではないということは重々承知の上なのですが、エレナ様こそが陛下の婚約者に相応しいお方だと思います」

「ほう。お前が俺に意見するなんて珍しいと思ったらそのことか。ルイス、なぜそう思うんだ?」

「エレナ様は何度も我々の訓練を見学されては差し入れを持ってきてくださったんです。それに騎士団を労う言葉も。そのような言葉をいただけたのは初めてでエレナ様のおかげで兵士たちはみな訓練に精が入っておりました。自分がエレナ様をお守りするんだと」


(騎士団のところに行ってたのか。知らなかった)

「その、差し入れとは具体的にどんなものを持ってきていたんだ?」

「差し入れ、ですか。そうですね、エレナ様がお作りになった軽食やお菓子がほとんどでした」

「そうか、それで他のものはなにしにここへきた?」

「私もルイス様と同じです」

 そう言ったのは王宮の料理長だった。


「エレナ様は、いつも私たち料理人に感謝の言葉を欠かしませんでした。それに、時々私に料理を教えてほしいとおっしゃるので、何度か一緒に料理をお作りしたことがあるのですが、一度気になってなぜ料理をされるのか理由を伺ったことがあるんです。すると、いつか陛下に自分の作った料理を振る舞いたいとおっしゃいました。エレナ様は陛下が夕食を召し上がらないことをとても心配されていました」

(俺は一度あいつが持ってきた料理を拒んだんだぞ。それなのに俺のために?)

「あいつは元々料理ができるのか?」

「はい。とても侯爵家の令嬢とは思えないほど手際がよく、初めから包丁を上手に扱われていました。おそらく日頃から料理をされていたのだと思います」

(そうだったのか。きっとあの時持ってきたスープもあいつが作った物だったのだろうな。それなのに俺はあんなことを)


「私もエレナ様ほど素晴らしいご令嬢を他に知りません」

 次に言葉を発したのは庭師のガードナーだった。

「エレナ様は私が手入れしているお庭にいらっしゃっては、私に花の名前をお聞きになるんです。それに私は歳で、広大な庭の花たちに水やりをすることが辛くなってきていたのですが、エレナ様はそんな私の様子に気づいて、一緒にお花の水やりもしてくださいました。私は王宮で庭師をして長いのですが、私のことを気にかけてくださった方はエレナ様が初めてでした」


「そうか、あいつはよく見てるんだな」

「ええ、本当によく見ておられると思います。私はエレナ様が困っている方をお助けしている姿を何度かお見かけしました」


「確かにエレナ様は気配りが大変上手でとても優しいお方です。もっとわがままでもいいとさえ思います。私はエレナ様のわがままならなんだって叶えたいと思います」

 クリスタもガードナーの言葉に賛同するように言った。

 普段はリヒトのことが怖くて自分の意見を言うことなんてほとんどない。それなのにエレナのためにみんながリヒトに物申した。

「そうか、あいつはこんなに愛されていたのか」

 そう言ってリヒトは少し考え込んだ


「アーサーを呼んできてくれ」

「ここにおります。陛下、シンクレア家に行かれるのですね?」

「ああ」

「すぐにでも出かけられるよう準備は整っております」

「さすがだな。行くぞ」

「はっ」


「陛下、エレナ様を婚約者に戻していただけるんですか?」

 エレナのためにここに集まった者たちはリヒトの返事に期待した。

「婚約者? いや、違うな」

「で、ではなんのためにシンクレア家に行かれるのですか?」

「あいつを取り返して俺の妻にするためだ」


 部屋をでたリヒトは自分の言葉に驚いていた。

「妻、か。俺が結婚したいと思える女が現れるとは思ってもみなかった」

「私も驚きました。まさか陛下の口からそのような言葉が出るとは」

「あまり触れるな。恥ずかしくなってきた」

 リヒトは顔を赤らめながらそういった。




 2人はロゼッタを連れてシンクレア家に馬車を走らせていた。

「陛下、どちらに向かわれてるんですか? あ、もしかして王都で私に何かプレゼントを? それならそうとおっしゃってくださればよかったのに」

 1人でぶつぶつ言っているロゼッタの言葉を無視して馬車を走らせた。


 しばらくしてシンクレア家に着いた。ここがエレナの育った家だ

「ここはうちの屋敷じゃないですか。王都に行くんじゃなかったんですか? 一体何のようでここに?」

「いいから降りろ」

「きゃっ」

 ロゼッタを強引に馬車から引きずり下ろした。エレナを苦しめていたロゼッタに対して、とても優しくなんてできるわけがなかった。


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