略奪愛11
その動画を見た松村妻は、泣きながら席を立ち店を出て行ってしまった。奥さんを追いかけようとする松村さんを俺が制止し、太田さんに後を追わせた。
松村さんは、『終わった』といった顔をしていた。
「松村さん、やっちゃいましたね。これはヒドい裏切りですよ、友達だと思っていた人に旦那を寝取られた奥さんは今、どんな心境でしょうね。奥さんの友達と一線を超えた時、どんな気持ちでしたか?さぞかし興奮して熱い夜を過ごしちゃんでしょうね。こんな動画を撮ってしまうくらいですから、相当に楽しかったんでしょう。高校時代からずっと想ってきてくれた女性を裏切った罪は重いですよ。」
俺はとことん、松村さんを追い込んでいった。その間、松村さんは心ここに在らずといった感じで、抜け殻のようになっていた。
お店を出て行った奥さんを追いかけた太田さんは、『とりあえず何処かに座りましょう』と言って、近くの公園のベンチに奥さんと腰掛けた。その公園にたまたまジョギングしていたという設定で、ヒカルが二人を見かけて声を掛けてきた。
「あれ?太田さんじゃないですか。え?どうしたんですか?松村さんの奥さん泣いているじゃないですか?」
「いや、私が泣かしたわけではなくて。私も本当は泣きたいくらいで。」
「とりあえず、ここじゃなんなんで、ウチに行きましょう。ここからすぐのところなんで。詳しい話はウチで聞きますので。」
ヒカルは近くに借りていたレンタルルームに二人を連れ込み、色々と話を聞いてあげることにした。
太田さんは泣きながら、事の顛末をヒカルに話した。
「なにそれ、酷すぎる。友達の旦那や彼女を寝とるなんて、あの二人は最低ですね。そんな裏切りはありえない。私、不倫や浮気って絶対に許せないタイプなんです。二人とも、早くそんな人たちとは別れた方が絶対に良いよ。」
ヒカルは全てを知っているはずなのに、本当にキレているようだった。
「まぁ、ここならどれだけ泣いても大丈夫なので、今は二人で心がスッキリするまで泣いて、傷ついた者同士、慰め合ってください。私は今から3時間くらいランニングしてきますから。それじゃ」
そう言って、二人を部屋に残した。