お茶会です!?
「あなた方が例のクラスですね。今日はよろしくお願いしますね?」
「もちろんですよ。よろしくお願いします。」
委員長同士の顔合わせから不安はあったけど、一触即発はないようだ。
そして、互いに握手を交わし……?
噂の委員長……水沢真理さんの顔がおかしくなっていく。
「どうしたんですか?」
「ど、どうも、ぐぎぎ……あ、あなた、手!」
「ただの握手がそんなに嫌ですか?」
「そ、そちらが、その気であるなら、ぐぎぎ……!?」
「させませんよ?」
握手をする二人の様子が変なのはみんな分かっているようだ。
そのうえでよく手の方を見ると、黒瀬の手は血管が浮き上がっていた。
そして、力強く握りつぶす勢いで握っていた。
お相手の委員長もやり返そうとしているみたいだけど、握力で敵わなくて一方的にやられていた。
挨拶である握手は握り合いに発展していた。
何をしているんだとあきれながらも、二人を止めようと動こうとすると委員長が見計らったように握手をやめた。
そして、水沢さんがこちら全体に睨みを利かせながらもどうにか席に座ってくれた。
黒瀬のせいで本当に暴動へなりかけたけど、相手が大人だったおかげでどうにかなった。
「今日両クラスに集まってもらった理由は分かると思いますが、改めて私達から言わせてください。」
「最近、両クラスにおいて、お互いを悪く言う噂が流れています。これに関しては、私達実行委員が話した所どちらも悪質な嘘である事が確定しました。ですが、この噂に影響されて、相手を貶した人がいると聞いています。」
「ですので、今回は互いに謝罪……と行きたいのですが、多分無理だと思うので、お互いにスッキリするまで話す場を設ける事にしました。」
「私達はあくまでも中立なため、会話に参加することはありません。ですが、暴力に走る事になれば私たちも動く事になりますので、そうならない様にしてください。」
それだけ告げると、私達は席の隅っこにある小さなテーブルを囲む様に座る。
それを合図に、両クラスの委員長が声を荒げると、他生徒も声を上げ始めた。
どちらも声を発するだけで聞く耳を持とうとしない。
醜い争いとはまさにこの事だろう。
「あの、本当にこれで大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫では無いと思うよ。」
「どうせいつかは言い争いになってたと思う。だから、今回やらせたる事にした。そうだよな、紅桜。」
「うちの委員長は短気ですぐ手が出やすいから、溢れる前にどうにか発散させないといけない。そして、そっちの委員長も話を聞く限り同じタイプだからこう言う場を設けた方が怪我人を出さずにすむはずだよ。」
「ですが、暴力を……いえ、どうせ放っておいたら手は出るでしょうし、むしろこちらが監視してるうちで起きた方が止めやすいですね。」
「私達が至らないばかりにすみません。」
「こっちも委員長が既に仕掛けちゃってたからお互い様だよ。私達だけでも平穏にいようよ。」
「そうですね。」
部屋の中心では今にも手が出そうな言い争いが繰り広げられ、その隅っこで持ってきたお菓子と飲み物を手に和気藹々としていた。
数分はマウントの取り合いの様なものばかりで、その後徐々に言葉が汚くなっていった。
私は、後ろから聞こえてくる言葉をその時点でシャットアウトした。
「それにしても、小道ちゃんたちのクラスって委員長一強みたいクラスでは無いんだね。ちょっと羨ましいかも。」
「そんなにいいものでは無いですよ?やはり、今回の様に勝手に先走る人が多いですから。」
「私達は委員長の意見に便乗する人ばかりで止める人がいなくて大変だよ。そういう意味で言えば、止める人が多くて羨ましいですよ。」
「霜雪さん達がいるから大丈夫そうに見えますよ?」
「そんな事ないよ。いつもギリギリで抑えてるだけだからね。」
「私たちからしてみれば、霜雪さん達みたいに制御できる人がいるほうが羨ましいです。結局止める事が出来る人はいませんから。」
お互いに持ってないものは羨ましいと思ってしまう。
持ってる持ってないの話になると、結局こう言うところに落ち着くよね。
「話に割って入るようで申し訳ないけど、このお菓子は手作りだよね?」
「そうですけど……もしかして口に合いませんでしたか?」
「いやいや、逆だよ。これ市販のものかもって思うぐらい美味しいよ。」
「本当ですか?こっちの有賀ちゃんが作ってくれました。」
「あ、うぅ……恥ずかしいです……。」
え、うそ、これ手作りなの?
お高い所のお菓子なのかと思っちゃってた。
「永久はよく気づいたね。私はお高い所のだと思ってたよ。」
「勘だよ。美味しいから、売ってるものならネットにありそうだけど、見かけた事ないと思ってね。」
「有賀ちゃんは将来パティシエになる事が夢で、よくお菓子を作って来てくれるのです。」
「羨ましいね。こんなの食べてたら市販のものが満足出来なくなりそう。」
「最近の悩みですね。有賀ちゃんのお菓子が美味し過ぎて、他の物が受け付けなくなるぐらいですよ。」
「や、やめてよ。……うぅ、恥ずかしい。」
「恥ずかしがるものではないと思うよ。むしろ、誇っていいぐらいだよ。」
そういえば、有賀ちゃんみたいな雰囲気を前も感じたことあるなと思ったら、これ美和ちゃんだ。
出会った頃は人見知りでオドオドしてて眼の前にいる有賀ちゃんみたいだった。
「このお菓子と一緒にこちらの紅茶もどうぞ。有賀ちゃんのお菓子に合うように特別にブレンドしたものなのです。」
「いただきます。」
渡された紅茶を喉に通すと、スッキとした味わいが喉を通り過ぎていった。
お菓子が甘いのに対し、落ち着いた風味の紅茶によってお菓子の甘さを引き立ててる。
周りにもお菓子と紅茶を配っていた。
不意に目をやると、みんな肩の重荷が抜けたように喋り合っていた。
向こう側に比べて、こっち側はみんな楽しめているようで何よりだ。
「すごく美味しいです!」
「お口にあったようで何よりです。」
「……ですが、このブレンドとかどうやってるんですか?」
「多少嗜んでおりまして、……あ、ですが趣味程度です。プロの方に比べれば……」
「そんな事ないですよ!私とかそういうの疎いですし、趣味で嗜むなんてお金持ちの方のイメージしかないですよ。……もしかして、そういった家系で?」
「いえいえ、一般の家庭ですよ。多少は周りより裕福かもしれませんが。有賀ちゃんに比べれば私なんて……」
「わ、私のお家も別に……」
あれ、これ……お金持ちの家の人が世間に疎くて、自分なんてっていう例の会話では?
もしかして、満さんと美和ちゃん同様のお金持ち?
いや、二人と同類では?……てことは、二人ともお金持ち同士の交流で面識があるかも?
「少しお聞きしたいのですが、満と黒咲っていう名字に心当たりあります?」
「黒咲は分かりませんが、満なら心当たりが一つ。」
「私もです。」
「もしかして、お家の付き合いとかで知った感じですか?」
「いえ、引っ越しの挨拶としてですね。」
「私もそのような場で会いました。それで、学校も同じって話を聞きました。それで、クラスに名前があったので会えると思ったのですが……」
「ただそれ以降にお会いすることもなくて、どこにいらっしゃるのでしょうか?っと思っていたらこの間実行委員の会議の場でお会いできました。」
「あ、それは……」
口に出そうとして止めてしまった。
これを私の口から言って良いのか迷ってしまう。
……でも、この二人なら信頼できそうだし、上手く行けば満さんの助けになるかもしれない。
自身の天秤にかけて慎重に比べる。
「あの、満さんについて少しおはなしが……」
私なりに考えた上で口にした。
といっても喋っていいと思った部分のみを抜粋してる。
そして、少し協力してほしい話を持ちかけた。
話を終えると、二人ともそう言うことならと私に協力してくれると言ってくれた。
あっさりと協力してくれると言ってもらえたので荷が降りた。
「二人ともありがとう。」
「いえ、クラスメイトと仲良くすることは普通のことですから。」
「と、友達が増えるのは私も嬉しいですし……」
楽しく話し合う場としてたのに、いつの間にか相談する場となってた。
二人には申し訳ないなと思いながらも、内心嬉しさもある。
「そう言えば、先程からあちらでの声が一段と大きくなったように感じるのですが……」
「そうですね。そろそろ仲裁に入……!?」
机を叩く大きな音が部屋を包んだ。
慌てて目をやると、お互いの委員長が我慢の限界と言わんばかりに額に怒りのマークを浮かべていた。
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