あっと言う間に時間が過ぎました!?
文化祭当日、なんやかんやあった出来事も無事に超えた上でスッキリした気持ちで迎えることが出来た。
晴天に恵まれて、問題なく文化祭を楽しめそう。
「元気よさそうだな。彼氏待ちか?」
「ち、違うよ!みんなを待ってるんだよ。その中に樹も居るよ。」
「そっか。」
いつになっても慣れない。
やっぱり、私の中で樹という存在は彼氏より特別。
異性として意識することはないけど、そばに居て嬉しくて離れると悲しいそんな人。
今後も一緒に居たいと思うけど、いつかは羽ばたいといけない。
「彼氏とはどうなんだ?」
「まあ、ぼちぼちかな。もうちょっと積極的になっても良いんだけどね。」
「まあ、紅桜に手を出すと姐さんにどんな事をされるか分からないからな。ま、我慢だな。」
「その言い方だと私が欲求不満みたいじゃん!違うからね!?」
樹は面白おかしく笑って見せた。
別に笑うようなところなんて無かったのに、酷いよ。
「そっちこそどうなの?彼女とは上手くやってるの?」
「それなんだが……」
「何?もしかして何かやらかしたの?」
「いや、……まだ付き合ってないんだ。」
「ウソっ!?すごく良さそうだったのに!?」
「……仮付き合いって形になってて、文化祭明けに正式に付き合うかどうか決めるって言われてるんだ。」
そうだったんだ。
すごく嬉しそうにしてたし、デートをどうするかとか相談に乗ったから完全に付き合ってるものだと思ってた。
心配事があるのかな?まだ昔の事が残ってる?
「ほら、もう2人いるじゃん!早くしないと樹君に取られるよ?」
大きな声を響かせながら3人が走ってくる。
昨日は夜遅くまで学校に居たのに、朝から走るのは辛そう。
「おはよう。みんな朝から大変そうだね。」
「神事君が衣装を持って来忘れてたんだよ。だから、それ待ってたら遅くなっちゃった。」
「学校に着く前に気づいて本当に良かったよ。朝早くから準備のために学校に行くからって、着いてからだと今の倍以上だから、みんなの迷惑になってたよ。」
「その話は何度も謝ったじゃん。本当にごめんって。」
永久と黒瀬から総スカンを喰らっていた。
まあ、忘れ物に付き合わされたんだったら仕方ない気もする。
「そろそろ行こうか。ここで駄弁って遅れたらそれこそ笑い者だ。」
「そうだね。」
樹を筆頭に歩き始める。
このメンバーで投稿するのももう何度目か分からないけど、この中にいるのがすごく安心する。
満さん達には申し訳ないけど、やっぱりここが一番安心してしまう。
日常をやっと取り戻したように感じて心が休まる。
ゆっくりとした足取りで学校に向かうと、何人かの生徒が足早にすれ違う。
彼らも私たちのように早く向かって最後の仕上げを行うんだろう。
年に一度のイベントだから楽しみでしょうがないのかな。
私も胸が高鳴ってるし、他の意味でもドキドキしちゃう。
「テント組はほぼ終わりそうだな。」
「後で設置完了の確認へ行かないとね。」
「朝ぐらいゆっくりしたいな。」
「それは忘れ物をしなかった人が言う事だよ。」
「手厳しい。」
私達みたいに教室を使わない組は、冷えている朝から外で活動しないといけないので大変そう。
その分、入り口付近なので人目につきやすく買い手が多い。
早朝寒さを凌げればメリットが多い。
けど、私達の組は楽しくやろうの精神で売り上げを気にしないためそんな無茶を選ばなかった。
それと、出し物の内容的にスペースが必要だから必然的に外では無理があった。
テント組の様子を眺めながら校舎に入っていく。
窓や壁に明るい装飾品が付けられていていかにも祭りといった様子。
自分たちの教室の前に行くと、中が見えないように取り付けられた集めのカーテンが出迎えてくれる。
カーテンをめくり、中に入ると綺麗に整えられたテーブルや椅子が並べられている。
今回のために借りるのは多少申し訳なさがあったけど、こうやって目にすると間違いじゃなかったと思う。
部屋の隅のカーテンで仕切った空間では調理チームが最後の準備をしていた。
私達よりも早く来て、料理手順の最終確認や調理器具の不具合の有無の確認をしてくれていた。
クラスメイトに朝の挨拶と労いの言葉を送り、私たちも自分たちの仕事のために着替える。
着替えると言っても、上からジャケットを羽織るだけなのでそう時間はかからない。
「夜宵先輩の頼みとはいえ、よく引き受けたな……」
独り言が零れる。
前の自分だったら、こんなことは頼まれてもしなかったと思う。
心の変化、前向きな心情になった、明るくなった。
いろんないい方はできるけど、私の中では後ろを向かなくなったという言葉が一番好きだ。
「みんな準備できたね!それじゃあ各々持ち場の付近で各クラスの模擬店を確認してね!」
「行こうか永久。」
「そうだね、紅桜。」
黒瀬の言葉と同時に自分の持ち場に向かう。
私はテント組の5か所を永久と担当している。
「冷えるから、これ。」
「ありがとう永久。」
持ってきてくれていたらしいカイロを受け取って手に当てる。
冷え切った手の先が温まっていく感じがする。
「今日は冷えるね。寒くて辛かったら言ってね?」
「どうせ寒いのは朝だけだから心配しなくて大丈夫だよ。それよりも永久の方も大丈夫なの?今日は彼女が来るんでしょ?」
「ちょっと、今はそんなこと言わないでよ!……せっかく意識してなかったんだからさ。」
「ごめんって。でもさ、過去の女との決着となると、今カノの自分としては、……やっぱり気になっちゃうんだよね。」
「そ、それは……」
永久は困惑した表情を浮かべる。
ちょっと意地悪な質問をしたとは思ってるけど、やっぱり私のほうが強く意識しちゃう。
自分の良くないところだとは思ってるけど、私がどうこうできるものじゃない。
「ま、どう転んでもさ、私を安心させてよ。」
「うん。それだけはちゃんと約束通り守るよ。」
自分が言った手前、カッコ良い返しをされて永久の顔をよく見れない。
きっと今の私が顔が真っ赤だから見られたくない。
恥ずかしい気持ちと高鳴った胸のときめきを抑えるのに少しだけ時間がかかった。
「あ、設置が終わったみたいだから僕行ってくるね。」
永久が行ってしまうと一人になった。
最近永久が隣にいないと寂しく感じることが多くなった。
これも永久と付き合い始めた事が原因だと思う。
彼の事をより強く感じるから離れた時にそれ相応の寂しさが襲ってくる。
「ほんと、いろんな事がったな。」
たったの2か月が過ぎただけなのに、1年が過ぎたみたいだった。
模擬店戦争、姉同士の進路、永久の女関係、私の恋愛、そして樹と満の恋愛。
どれも内容が濃くて、本当に2か月で収まったのか今でも疑問に感じる。
「今だけは、少し過去を振り返ってもいいよね?」
永久が戻ってくるまでの間、私は記憶を呼び戻す。
2か月前のあの日。
まず初めに合った模擬店戦争。
確かあれは私が言い出した提案をもとに起こったんだよね。
「あの時はクラスが一致団結してたな。」
他の組でも同じようにメイドカフェをするところがあって、内容が被らないようにそれぞれの組が一堂に集まって会議を初めて。
白熱する会議は感情論騒動になったり、終いにはヤジが飛ぶようになったり。
でも、そんな中で平穏派である私のような人がチラホラいて、会議をほっといてティータイムを楽しんでたな。
持ってきてくれるお菓子がおいしくて、話もすごく楽しくてすごく仲良くなれたな。
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