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二人だけの秘密です!?

 樹に引っ張られて屋上に上がる。

 別に大したこともないのに、変に胸がざわついてしまう。


 屋上に着くと、定位置に座りグラウンドを見落とす。

 さっきまで握られていた手を名残惜しく感じながら樹がしゃべり始めるのを待った。


「……夏休みが終わっても、教室には来ないと思ってた。気持ちに変化でもあったか?」

「何もなかった。だから、樹との約束を守りたかった。」

「約束?」

「この姿になって、はじめて樹がアパートに来た時だよ。あの時は、文化祭までにはいくって言ったでしょ?」

「そうだっけ?」

「忘れてたの?」


 申し訳なさそうに、苦笑いを浮かべる。

 私はかなり考えて今日を迎えたのに、本当はそこまで気にしなくていい案件だった。

 そうと分かると、今までの苦労が悲しくなってくる。


「今日から、クラスに戻ってくるって事であってるか?」

「ちょっと違うかな。満さんと美和ちゃんがあそこに残ってるから、ちょくちょくあそこに戻るつもりだよ。」

「そっか。それはいいかもな。」

「何がいいの?」

「大事な友達が増えたって事が。」


 含みのある良い方をする。

 確かに、今までの私なら、そこまで入り込む友達を作ろうとしなかった。

 それが、自然とそういう友達を作るようになったのだから、良い事なのかもしれない。


「今後、教室に顔を出してくるだけでもありがたいよ。」

「私が居なくてもそんなに変わらないでしょ?」

「変わるよ。やっぱりさ、物足りなさがあるんだよ。俺はさ、お前の事結構気に入ってたし、親友だと思ってた。だから、そんなやつがいないと学校もつまらなくなるんだよ。」


 胸が苦しい。

 この感情を口にすれば何か変わってしまう気がする。


「親友だと思ったからこそ、本当は真っ先に教えてほしかったんだけどな。」

「……それは、ごめん。私も、言いたかったけど、言えなかった。親友だと思った相手に、なんて思われるか怖くて言えなかった。」

「ま、俺も言えずにいたんだし、しょうがないよな。」


 これはお互い様で、お互いに気を遣かったせいだ。

 もう少し、相手を信じてあげればどうにかなったのかもしれない事だけど、過ぎたことだ。

 

「ねえ、いつ気付いたの?それらしい素振りがあったのは分かったけど、ちゃんとしたタイミングは分からなかったんだよね。」

「紅桜だと思ったのは最初からだよ。確信に変わったのは、それこそ紅桜の家に行った時かな。」

「え!?最初から?」

「だって、分かりやすかったからな。」


 ウソッ!?そんな事ある!?

 夏期休暇中ならまだ分かるけど、最初から気づかれてたとかある!?

 私そんなへましてないよね!?


「ど、どこらへんで思ったの!?」

「一番は、見た目(・・・)かな?」


 自分の髪の毛に手を当てる。

 こんなに見た目が変わったのに、どうして樹は私だと思ったんだろう?

 氷柱姉でも分からなかったのに。


「信じてないな。」

「だって、樹以外皆私を見ても私だと気づかなかったから。」

「それは……紅桜ってさ、昔コスプレしてただろ?」

「な、なな、な……なんでそれを!?」

「実は紅桜がコスプレしてたの見たことがあって、それと重なったんだよな。」


 何それ!?コスプレバレしてたことも驚きだけど、それでバレるってどう言う事!?

 全然理解できないし、今更羞恥心が全身を駆け巡ってる。


「こ、コスプレの事、どうして……」

「本当に偶然なんだけど、当時の友達に行きたいところがあるって連れていかれたのがいわゆるそういう場所で、本当に偶然紅桜を見つけただけなんだよな。」

「……それ、樹の友達にもバレてたって事!?」

「いや、気づいたのは俺だけだよ。そいつらは他の人に眼中が行ってて、俺も視界に入った程度だから正直今の反応を見るまで半信半疑だった。」


 つまり、私は今墓穴を掘ったって事!?

 知らんぷりな態度を貫いてたらバレて無かったのに、ついつい反応してしまった。

 樹に知られたくなかった事実がどんどんとバレて胃がキリキリする。


「今まで色々悩んでたのに、全て無意味になっちゃったよ。」

「そんな事は無いだろ?悩んだ事にも意味はあるさ。悩む必要はあったけど、考え過ぎただけだよ。」

「そうかな?」


 髪の毛の先をクルクルと遊ばせながら相槌を打つ。

 正直いろんな情報が溢れすぎて整理出来ずに、なんとなく反応を返してしまっているだけかもしれない。

 それこそ、樹に丸め込まれたように感じる。


「一つ、紅桜に聞いておきたかったんだけど、どうして永久に話したんだ?委員長については偶然知ったって聞いたけど。」

「委員長は樹も知ってること分かってたんだ。」

「反応を見ればバレバレだったからな。で、永久に関しては?」

「それも偶然だよ。永久の家に泊まらしてもらった時に、永久の昔の友達が悪口を言いに来たんだよ。樹は、永久の事を聞いてるんでしょ?」

「先生に頼まれてな。黙ってて悪かったな。」

「樹の行動は正しいよ。そういうのは秘密にしておいてほしいものだけど。」


 結局は私達にバレちゃったけど、知るべきじゃなかったのかもしれない。

 心の苦しみは本人にしか分からないから、私たちが気持ちの代弁をするのはおこがましい。

 

「こうして二人きりで話すのは久しぶりだな。」

「いきなりどうしたの?なんかおじさん臭い言い方だね。」

「そこまで年劣った覚えはないよ。たださ、出会ってから思い出してみても、二人きりは数回しかないんだよな。」


 過去の記憶を思い出してみる。

 樹と話す記憶はたくさんあって、それこそ年がら年中な気がする。

 でも、そこには他の誰かが居て、2人きりではない。


「確かに二人きりはほとんどないね。」

「だろ?……そう思うとさ、なんだか新鮮に思えるんだよね。」

「顔は毎日のように合わせて来たから、そこまで新鮮味は感じないかな。」

「でも、最近は紅桜の新たな一面ばっかり見て来た。どうしても新鮮に感じるんだよ。」

「そりゃ、私は女になったからだよ。見た目が全然違うからそれで樹には新鮮に感じるんじゃないかな。」


 ただ、それはそれで少し悲しい。

 樹の中の私を今の私が塗り替えて過去を消そうとしているみたいだ。


「……そろそろ集会が終わる頃だな。」

「そうかもね。」


 長話をしていた記憶はないけど、時計が終わりを告げようとしていた。

 名残惜しいけど、戻らないといけない。


「話し足りないから、また二人だけで話そうよ。」

「紅桜から誘ってくるなんて珍しい。数少ない誘いは乗っておかないとな。」

「そんなに珍しい?」

「休校になる確率ぐらいには。」


 そこまで言われるほどではない気がするけど、確かにあまり誘ったりしないかな。

 これも良い方向に変化した事なのかな?


 樹と一緒に階段を下る。

 まだ生徒たちが戻ってないから校舎内は私たちだけの靴音が響く。

 教室のドアを開けると、誰もいない空室に見間違うよう。


「今日からまたここでか。」

「何か心配事か?」

「皆んなが受け入れてくれるかどうかをね。」

「一度顔を合わせてるんだし大丈夫。」

「だと嬉しいな。」


 誰もいない教室で、二人して席に座る。

 前後の位置だから、樹が振り向いてみんなが来るまで談笑した。

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