泳ぎの練習をします!?
美和ちゃんを後ろに乗せてイルカの浮き輪でリラックスする。
プール自体が流れているため、ゆったりとして進んでくれるので気持ちがいい。
それに、変なことをしなければ転覆することもないので安心だ。
「先輩、気持ちいですね~。」
「そうだね~。天気もすごくいいし、リラックスできるよ。」
「私もです。先輩を全身で感じられて浄化されちゃいそうです。」
「ははは…。」
美和ちゃんが変なこと言ってるけど、今はどうでもよく感じる。
久々にリラックスできて、変に気が緩んでる。
水に流されながら浮いている事がここまで気持ちいいと感じるなんて、初めての気づきだ。
どこまで流されているのか分からないけど、流されるがまま進んでいく。
何か大事なことを忘れているような気もするけど、今は気にしてられない。
この幸福がいつまでも続いてほしい。
「やっと見つけた。」
「うへ?」
イルカの浮き輪が止まる。
誰かに捕まれたのかと、後ろを振り向くと、美和ちゃんの顔があって後ろにいる人は分からなかった。
すると、イルカの浮き輪を捕まえている人は、水の流れに抵抗しながら私の見える位置まで移動してくれた。
「満さん?」
「満さんよ。……勝手な行動はやめてくれる?」
「ご、ごめんさない。」
怒られてしまったので脊髄反射で誤ってしまった。
しかし、何か忘れていると思ったのは、満さんたちの事だった。
一緒に来ていたのに、あまりの気持ち良さにすっかり忘れていた。
「みんなあんた達を見失って心配してたんだからね?みんなと合流するから一度降りて付いてきなさいよ。」
「付いて行きたいのは山々なんだけど、足がつかないから溺れちゃうんだよね。」
「は?」
「私も泳げません!なので、満先輩が連れて行ってください!」
「泳げないくせに、2人で何してんのよ。」
半ば呆れた状態でいる。
てか、美和ちゃんも泳げなかったんだ。
もし転覆してたら、本当に危なかったかも。
「プールサイドまで持っていくから、落ちないようにしなさいよ。」
「うん。」
流れを断つように、イルカのしっぽを掴んで横切っていく。
進む方向が逆なので、浮き輪の抵抗で荒ぶってる。
周りからは、二人の妹を回収していく姉の図に見えているのか、微笑ましそうに見られたりする。
プールサイドまで来ると、満さんがイルカの浮き輪が勝手に流れていかないようにつかんでくれていたので、そのうちに上がらせてもらった。
プールから上がると、太陽の暑さと風によって体温を奪われていくバランスが取れていて丁度良かった。
「よいしょっ!」
私たちが上がりきると、満さんも自分の力で上がる。
その刹那、髪を捲し上げる満さんの姿がなんだかカッコよく見えた。
今まであまり意識してこなかったけど、満さんは普通にスレンダーな体形でモデル並みに綺麗だよね。
何かしてたのかな?
「何ジロジロ見てんのよ。」
「満さんって、軽やかな動きをするなと思ってさ、」
「そう?まあ、プールとかよく入ってたから動きが慣れてるんじゃない?」
「もしかして、水泳競技者?」
「違うわよ。前の家にプールがついてたのよ。」
「か、金持ちだ…」
海外セレブの家みたいに庭にプールがあったってことだよね。
お金持ちなのは知ってたけど、そこまですごいんだ……。
「その話はいいから、さっさと合流するわよ。」
恥ずかしそうに足を進める。
私たちもその後について行って、他のみんなと合流した。
「ゆったり流されてたらみんなと逸れちゃった。」
「逸れちゃったじゃないわよ。高校生にもなって迷子になるなんて…」
「いや~、迷子になってはないんだよ?ゆっくりプールの上でリラックスしてただけなんだよ。」
「言い訳はしない。」
「ごめんなさい。」
みんなと合流すると、真っ先に氷柱姉から怒られた。
こんな場所でとも思ったけど、氷柱姉が気にしてない以上どんな場所でも怒るときは怒るんだろうな。
あまり反省はしないけど、次が無いように気をつけておこう。
「注意するのはそこらへんにして、みんなでプールに入りましょうよ?」
「まあ、そうね。」
樹が口を挿んでくれたことで、不服そうにも氷柱姉は口を止めた。
「樹さん、ありがとう。」
「??俺は何もしてないよ。」
平然と、何も顔へ出さないようにしていた。
あくまでも、私と姉という家族内になるように仕向けてくれるようだ。
「紅桜ちゃんは泳げないって聞いたんだけど、どうなの?」
「泳げないというよりかは、足がつかなくて、流れるのが危ないって感じだよ。」
「そっか。なら、流されても大丈夫なように練習しようか。」
「??」
「ちょうど浮き輪があるから、これに捕まって、ちょっと流されてみよっか。」
「え?いや、私は……」
「心配なら、俺が付きそうよ。」
遠慮しておいたけど、樹の圧に負けてそのまま一緒にプールで練習することになった。
黒瀬は何やら満足気にしていて、神事はお構いなしにプールへと入って行っていた。
「俺たちはゆっくりするから、みんなは先に行ってていいぞ。」
「了解しました!皆さん、他にしみましょう!」
不服そうにしていた残りのみんなを黒瀬が引っ張っていき、水の流れもあって直ぐにいなくなってしまった。
あっという間に2人きりになってしまったけど、今はそこまで緊張することはない。
多分、体のほとんどが水に隠れていて気にならないからだと思う。
「それじゃあまずは手を放すから、水の流れに合わせてバランスをとれるようにしようか。」
「う、うん。」
さっきまで私が流されないように持っていてくれた手が離れる。
すると、浮き輪がプールの流れに沿って動き始める。
イルカの浮き輪に比べて、バランスを保つのは簡単だけど、思ったように動かない。
イルカの浮き輪の上ではリラックスをしていただけなので、どこへ行こうと気にしなかった分、今回は樹と離れないようにしたかったので大変だ。
足がつかないからその場で一度立ち止まることはできないし、水に逆らうよう足をばたつかせても微動だに動かない。
結局、樹の方から私を捕まえに来てくれて逸れる事は無かった。
「もう少し大丈夫だと思ってたけど、全然みたい。」
「溺れたりしてないし、バランスはとれてるから大丈夫だと思う。今は、体を使って移動できることに集中した方がいいかな?」
「けど、思うように動けないんだよね。流れのほうが強くてさ…。」
「流れに対抗しようと無理してるからじゃないかな?」
「移動するなら、流れに対して逆行しないといけないでしょ?」
「逆向きに進むならそうだけど、前に進みながら左右に行くのなら少しの抵抗だけで行けるんじゃないかな?」
少し考えれば分かりそうな事に今更気づいてアホ面をさらしてしまう。
今の私は多分、口が開きっぱなしで、きっと変な顔をしている。
「ぷっ…。そんな顔するんだね。」
「あ、あ////」
「久々にそんな顔を見た気がする。」
「も、もう!そんなに変な顔じゃないもん!」
「そうだね。……さ、練習の続きをしようか。」
樹に笑われて恥ずかしい思いをしながらも練習に励んだ。
プールの流れと、人の流れに混乱しながらも練習のおかげで徐々に上手なっていった気がする。
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