表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/108

気分転換をします!?

「紅桜……大丈夫?」

「…………(フルフル)」


 布団の中から首を振る。

 お父さんと喧嘩してこっちのマンションに戻ってから体調が悪い。

 お腹がぐるぐるして苦しいだけじゃなくて、涙が止まらない。


 きっとお父さんと喧嘩したからだと思うけど、私はお父さんの喧嘩について悪いとは思ってない。

 あんなに言っても許してくれないお父さんの方が悪いと思ってるのに、心のどこかで公開してる。


「あいつの事は、もう気にしなくてもいいからね?紅桜は何も悪くないんだから。」

「……分かってるけど、うぅ……」


 布団の上から優しく撫でてくれる。

 氷柱姉の優しさが染みる半面、申し訳なさが積み上がる。

 くよくよしている自分に嫌気がさしてしまう。


「……そう言えば、友達が市民プールのチケットをくれたんだけど、気分転換に行かない?ちょっとは気持ちが晴れるかもしれないわ。」

「…………」


 悪くわないかも。

 こうやって、部屋にいても永遠に悩んでしまう。

 それなら、外に出た方がまだ気持ちに整理がつくかも。


「分かった……行く。」

「なら、準備をしないとね。私は百々の所に行っているから、用意が出来たらきてね。」

「了解。」


 氷柱姉が出て行ったことを確認すると、ベットから起き上がる。

 涙で濡れている服を脱いで、洗面所に向かい頭から水を被る。

 ふと鏡を見ると、目元が赤くなった酷い顔をしていた。


「弱い人間だな……。」


 ため息をつきながら、顔を洗う。

 ヘッドバンドをつけて、ちょっとだけ化粧をする。

 今のままじゃ心配されちゃう。


「これなら、違和感ないよね?」


 少し角度を変えて何度も鏡を見直す。

 普段と変わらないでいるか注意を凝らして、やっとヘッドバンドを外す。

 最後に長い髪をドライヤーに当て、ぼさぼさの髪を整えていく。


「準備はオッケーだね。水着は……そう言えば持ってない……。氷柱姉に相談したら、変なの持って着そうだし、施設の方で貸し出ししてるか?」


 大体の所は貸し出しをしてるって、聞いた事があるから大丈夫だよね?

 それに、最悪途中で買っていけばいいかな。


 準備を終えると百々姉の部屋に向かう。

 思ったより体は軽くて、気持ちの切り替えが少しだけでも出来ているみたい。


「……何してるの??」

「紅桜ちゃんだ~!!助けて~!!」

「喋るなロリコン!」

「ぐへッ!!」


 私が部屋の中に入ると、百々姉が簀巻きにされていた。

 一体何がどうなってそうなったのか分からない状況に、足が止まってしまう。


「プ、プレイ…?」

「違うよ!?」

「いつもの事よ。こいつ、私達とついて行こうとしてたからこうやって捕まえて置いてるの。」

「付いて来るぐらいなら別に……。」

「あんたにこれを着させようとしてたのよ。」


 氷柱姉から何かを投げ渡される。

 それを受け取って広げてみると、ほとんど紐だけの下着が何着かだった。


「な、なな、この下着を私に!?」

「ち、違うんだよ!!私はっ…ぐへッ!?」

「そうよ。後、それ下着じゃなくて水着ね?」

「み、水着!?!?」


 どう見ても、水着には見えない。

 露出壁の変質者が着るようなものにしか見えない。

 そんなものを私に着せようとしてたなんて!?


「百々姉、さすがにこれは無いよ!?氷柱姉と合わせて変な水着を着せられるとは思ってたけど、」

「なんで私も!?」

「こんなの着たらただの変質者だよ!?絶対着ないからね!?」

「そんな~!?」

 

 なんで驚いてるの!?

 当たり前だからね!?


「紅桜に百々と同類だと思われてたなんて……。こうなったら、あんたは居残りよ!」

「なんで!?」

「ムカついたから。」

「紅桜ちゃん、氷柱ちゃんの説得してよ!」

「ちょっと……身の危険が……。」

「味方0人!?」


 氷柱姉の認識が地に落ちたかもしれない。

 今まではギリギリ低空飛行で彷徨っていたけど、もう完全に終わりだよ。


「氷柱姉は着せるにしてももっとまともだよね?」

「もちろん。露出した紅桜の肌を見て変な虫が来たらだめでしょ?だからこれね。」


 氷柱姉から一枚受け取る。

 小学生が着るようないわゆるワンピース水着だった。


「肌の露出は無いけど、これはちょっと……」

「問題は無いはずよ?」

「そうだけど、なんか罪悪感が……。これって、小学生とかの子供が着るやつでしょ?私みたいなのが着るのはちょっと……それに、羞恥心もあるし。」

「なんで!?体格的に問題ないし、可愛いじゃない!?それともマイクロビキニが良かったの!?」

「それもそれで……」


 前に夜宵先輩と美和ちゃんで服を買いに行った時に水着は来たけど、男物と違って変に羞恥心があるんだよね。

 男物の方がズボンだけでそれはそれで恥ずかしいけど、あんまり気にはならなかったからな。

 なんで女物の方が恥ずかしいんだろう?

 やっぱり視線が集まるからかな?


「やっぱり今日行くのはやめようかな……。」

「待って、それはダメ!!」

「嫌でも……。」

「なら、こうしましょう!紅桜の友達を呼んで、その子たちと似たようなものを着れば問題ないでしょ?」

「それは、でも、恥ずかしいし……。」

「なら、私か百々のどっちかの水着を着るの!?」

「行かないっていう選択肢は!?」

「それは無し!!ほら、早く選んで!!」


 半ば強引に選択肢を選ばされ、ため息をつきながらもちょっとだけ笑いが込み出てしまった。

 こんな感じで冗談を言い合えるような今の環境が、とても特別に感じた。

 朝はあんなにくよくよしていたのに、今はとても元気がある。


 

「で、なんで男がいるのよ?霜雪と私達だけじゃなかったの?」 

「それは、黒瀬が読んじゃって。」

「紅桜ちゃんの水着を選ぶっていうから、それなら男性陣に意見を聞きたいじゃん!」


 市民プールに向かう途中デパートに向かった。

 そこでみんなと待ち合わせをして、水着を選ぼうという話になったからだ。

 誘って来てくれる事になったのは、黒瀬、満さん、美和ちゃん。

 夜宵先輩も誘ったけど、受験勉強で忙しいみたい。案外まともだった。


 そして、実際にデパートについてみると、樹、永久、神事も一緒にいた。


「みんなで買い物にって聞いてたんだけど、違ったのか?てか、紅桜の姉さんたちまで居るんだ。」

「僕は、樹君と神事君も来るからどうかって聞かれたよ?」

「俺は、『暇でしょ?ちょっと来て』って、結構軽かったぞ?」


 男性陣は市民プールに行く事を全然聞かされていないようだった。

 もしかしてこれ、本当に水着チェックをさせるために連れてこさせられた感じ?

 さすがにそれはかわいそうだし、私が恥ずかしい。

 黒瀬を誘うんじゃなかった。


「あの男が来てるなんて、絶対先輩を奪われないようにしないと!」

「ねえねえ、あの子が例のだよね?大丈夫なの?」

「変な目で見たら殺す。他も同様ね。」


 殺意が樹に向けられている。

 樹は気づいて無いみたいだけど、うちの姉達と美和ちゃんは樹に対してなぜかあたりが強いんだよね。

 今回は永久と神事も巻き込まれそうだけど。

 とにかく、ぱっぱと選んでプールに入りたいな。

続きを読みたいと思ったら、ブックマーク、評価、感想をお願いします。

カクヨムでも投稿しているのでそちらもお願いします。

Twitterで更新報告しているのでフォローお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ