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告白をします!

「もうやめてっ!」

「……っ」


 永久から声が発せられる。

 その声を聞くと、暴走していた感情が収まった。

 いや、収まらざる負えなかった。


 だって、永久は今にも泣き出しそうだった。

 多分、私達の言い合いを見ていられなかったんだと思う。


「紅桜ちゃん、もう良いから……。」

「ぁ……私、は……」


 聲にならない声が、乾いた喉を通過する。

 感情に流された行動で、永久を傷付けてしまったことが心苦しい。


「ちっ……。まじで気分が最悪だわ!私、帰るから。」

「逃げるのね。ブスにピッタリね。」

「は?……ブスと会話したくないから私が譲歩してあげてんでしょ?」


 それだけいうと、本当に帰ってしまった。

 これ以上ここに居られたら本当にどうなってたのか分からなかったから良かった。


「みんな、ごめんね。」

「いや、永久が謝る事じゃ……」

「そうだよ!あれはあの子が悪いんだよ!」

「…………」


 擁護に回ったけど、謝られるばかりだ。

 こんな事臨んてないのに。


「ごめんね。それじゃ僕は……」

「待って!」


 その場から逃げ出そうとする永久の手を取る。

 今この手を放してしまったら、一生後悔する気がした。

 何よりも、この手を掴むことが私の第一歩な気がした。


「わた、私も……」


 いざ声を出そうとすると口が震える。

 力が入らなくなって、倒れてしまいそうだ。

 けど、永久はそんな状況でも立っていたんだ。

 私も、同じ事ぐらい……


「………………男なら、強くいろ。女の前で弱音を吐くな。」

「満ちゃん?」


 私に言っているように聞こえた。

 もしかしたら、永久に言ったのかもしれない。

 その言葉はとても難しくて、胸に刺さるものだった。

 

「私の知り合いの言葉なんだけど、今のあんた達にぴったりかもしれないわね。さ、道端だと危ないし、部屋に戻りましょ。」

「そうだね。」

「ちょ、押さないで!」


 背中を押されて、永久の家に戻される。

 そして、永久の部屋まで戻されて、永久と向かい合う形で正座をさせられた。


「言いたいことがあるんでしょ?ここなら、誰かに聞かれるとかないでしょ?」

「そうだね。私達は味方だから、ほら、話しちゃいなよ。」


 2人が場を整えてくれる。

 こういう所ちゃんとしてくれる2人には感謝しかない。


「私は……」

「紅桜ちゃんさ、私の呼び方変わってたね。」

「え?あ、うん……勢いでつい。」


 私から話そうと思ったら、先を越された。

 しかも、わざと苗字で呼んでいたのにうっかり名前の方で読んでしまって、気付かれてしまった。

 これはどうにか隠さないと……いや、話すべきだ。

 だって、今から真実を話すんだもん。


「あのね、3人には本当に感謝してるんだ。特に、紅桜ちゃんはあんなに怒ってくれてさ。」

「それは、だって……」

「彼女の話を聞いてどう思った?…やっぱり、気持ち悪いって思ったでしょ?」

「そんな事無い!」

「いいんだよ。本当の事だから。僕はさ、元々女で好きな子のため男になった気持ち悪い人間なんだ。」

「それは違うよ!ここには永久の事を気持ち悪いって言わないよ!そうでしょ?」


 2人に問いかける。

 黒瀬は『当たり前だよ』と言わんばかりにうなずいていた。

 けど、満さんは違った。


「私は、あんたの事は気持ち悪いと思うわよ。」

「満さん!?」

「自分の性別がどうしたの?好きな相手が同性だったことの何がいけないの?別に悪い事ではないでしょ?別価値観なんて人それぞれかもしれないけど、否定する人間は気持ち悪いと思うわ。」

「満さん……」

「まずは、自分を否定することをやめたら?霜雪は、自分が女になった事に対して……違うわね。これは私が言う事じゃないわ。後は頼んだわよ。」

 

 満さんは口を閉ざす。

 言いかけた言葉をあえて止めてくれた。

 私が自分の口で言えるように。


「紅桜ちゃんが女になった事に対して……?どう言う事?」

「それは、……私は、いや、俺は……男だったんだ。」

「紅桜ちゃんが、男?」

「TS病にかかったんだ。だから今は女。永久も一緒だよね?……ねえ、こんな私は気持ち悪いかな?」

「そんな事無い!紅桜ちゃんは他人の事で起こってくれる優しい子だよ。気持ち悪いって思うはずない。」


 自然と言葉が出た。

 胸につっかえていたものは無くなっていた。


「私は、この体になったのは2か月前からで永久よりも全然日が浅いよ。それでも、暮らしていくのにすごく大変で、永久が卑屈になってしまう気持ちも分かるよ。でもさ、自分を卑下するのはやめてあげようよ。」

「そ、れは……」

「それにさ、女の子が好きな女の子ってかなり身近にいるよ。永久が思ってるよりも、珍しい存在じゃないんだよ。」


 こんなに清々しく話せたのは久しぶりな気がする。

 氷柱姉の事で悶々としてて、あの時は本当につらかった。

 今なら、面と向かって氷柱姉と話せる気がする。


「…………やっぱり、僕には無理かも。」

「……」

「けど、紅桜ちゃんの言いたい事は分かったよ。満さんが僕に対して思う気持ちは、僕が思っているものとは違う事は分かった。」

「そう。ならいいわ。」

「自分を変える事はなかなか難しいけど、ちょっとだけ楽になれた気がする。」

「そっか。……それなら大丈夫そうだね。」


 自分を変えるのは確かに難しい。

 気持ちを変えたからって一朝一夕では無理だと思う。

 けど、少しでも気持ちの変化があればそれは良い事だと思う。


「3人とも本当にありがとう。特に、満さんと紅桜ちゃんはクラスメイトでもない僕のために…。」

「ぁ~それについてなんだけどね、」

「?どうかしたの?」

「私は黒瀬と永久とはクラスメイトなんだよ。」

「そうだよ。私と紅桜ちゃんと広瀬君は1年からの付き合いだよ。」

「え?どう言う事??僕は紅桜ちゃんとそんなに付き合いが無いよ??」

「自分から言うのはあれだから、ヒントを出すね。私は元男のTS患者。永久のクラスには1人だけ病気で休んでる子が居るよね?」


 ヒントを出すと、永久の顔が青くなる。

 口を覆い隠し、驚きを隠せないでいる。


「えっ?えっ!?紅桜ちゃんって、紅桜ちゃんって、もしかして……紅桜君!?」

「そうだよ。」

「えぇぇ!?!?」


 かなり驚かれた。

 想像以上の驚かれ方でちょっぴり恥ずかしい。


「う、嘘だよね?」

「これが本当なんだよ。」

「だ、だって、全然キャラが違うよ!?クールで無口って感じだったよね!?」

「そ、そうかな?私は普通に生活してるつもりだったんだけど。」

「私は過去の霜雪の事は知らないから分からないわ。黒瀬から見た感じはどうなの?」

「確かに、口数は増えたし、笑ってることが増えたと思う。」


 クラスメイトだった2人からこんな風に思われていたとは……。

 もしかして、このままクラスに戻ったら別人だと思われる?

 樹にも分かってもらえないかも?


「けど、私はそこまで変わったとは思わないかな?」

「そう?僕には別人に見えるよ。」

「容姿も変わったからかもね。多分、永久はベータ型なんだよね?私はアルファ型だからさ、目が慣れてないんだと思う。」

「そうかも……て、なんで僕がベータ型って分かったの!?」

「なんとなくね。」


 本当は夢で永久を見たからだけどね。

 正確には永久が見た景色だと思う。

 何らかの因果で同じTS患者として共鳴したのかも。


「まあ、これで言いたい事は皆言ったわよね。これで一件落着ね。」

「うん。」

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