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体を見ちゃいました!?

「来ました!お風呂の時間です!!」


夕食をご馳走してもらった後に部屋でゆったりしていると、唐突に黒瀬が大声を上げた。

あまりにも待ち望んでいたような顔付きだったので不安が募る。


「いきなりどうしたのよ?」

「お風呂イベントだよ!」

「は?」

「だから、待ちに待ったお風呂イベントです!」


満さんが会話を試みたけど、噛み合ってない。

まともに会話をする気がないのかも。


「3人とも何でそんな目をするの?みんな楽しみに待ってたでしょ?」 

「別に。」

「何で!?私はめちゃくちゃ楽しみにしてたよ!?」

「楽しみって、あんたが言うと気持ち悪いわね。」

「唐突に誹謗中傷!?何で!?」


満さんが言わんとする事は何となく分かる。

あんなキラキラした目でお風呂がどうのと言われると、ちょっと氷柱姉みたいで身の危険を感じる。


「変な事考えてないでしょうね?」

「考えてないよ!?私は、切実に一緒にお風呂に入るのを楽しみにしてただけだよ!?」

「やましい事ないよ!?ほら、友達と温泉に行くのが楽しみっていう感じだよ!!」

「…………」


満さんが睨みつける。

その目に怯む事なく、黒瀬は真っ直ぐ見つめてる。


「何か企んでるわけじゃないようね。」

「分かってくれたんだね!」

「けど、みんないっしょには入らないわよ。」

「何で!?」

「何でも何も、広瀬は男だし。霜雪はほら、あれだから見られるのは恥ずかしいじゃない。」

「広瀬君に関して流石に考えてないよ。本人も一緒に入られたら気まずいだろうし。けど、紅桜ちゃんは良くない!?女の子同士だよ?」

「分かってるわよ!?…けど………」


満さんの気持ちはもっともだ。

もとより、黒瀬に誘われたりしても、一緒に入る気はないけどね。

私も恥ずかしいから。


「何だか2人で話し始めたね。」

「2人は仲がいいからね。」

「そうかな?喧嘩っぽいけど。」

「あれは戯れあってるだけだよ。」


2人が楽しそうにしているのを眺める。

こうやって2人を見るのも案外楽しい。


「そうかな?まあいいや。それより紅桜ちゃんは先に入りたい派?2人があんな感じで落ち着くのにもう少しかかりそうだから、僕たちは先に入ってようよ。」

「それなら先に入らせてもらっていいかな?後からだと、黒瀬さんに捕まりそうだから。」

「了解。着替えは……これこれ、僕のお古だけど、綺麗にはしてるから。」

「ありがとう。今日だけ借りさせてもらうよ。」


永久から着替えを受け取って脱衣所に向かう。

先に誰かが入っていたのか、脱衣所には電気が付いていた。

服を脱いで、整えてからお風呂に入らしてもらう。


「うおぉ!!!どうだ驚いたかお姉、ちゃ、ん?」

「ほぇ?……!?!?」


浴槽の蓋を外そうとした瞬間、勢いよく持ち上がり、中から少女が現れる。

私は誰かがいるとは知らず、目の前の少女は思っていた人と違い、言葉を出せずにいた。


そして、頭が回転しだすと、勢いよく目を閉じてしゃがんだ。

まさか、黒瀬と満さんと風呂に入ることが無いように、バレないように来たのに、永久の妹さんの裸を見てしまった。

これはやばい!!

2人に知られたらかなりやばい!!!


「お、お姉ちゃんの友達の……な、何してるの!?」

「ご、ごめん。誰もいないと思って!」

「それは、うん、ごめんなさい。私もお姉ちゃんが来たと思って間違えちゃった。あはは。」


何故か笑ってるだけ。

怒ろうともしない。

そう言えば、私は今女だから、周りから見たらおかしくないのか。

でも、流石に目を開けられない。


「ねえねえ、そんな所でうずくまってないで一緒に風呂入ろ!お姉ちゃんの友達と話してみたかったんだよ!!」

「そ、それは。」


それって大丈夫なの!?

私はダメだよね!?

でも、断る術もないし……


「まずは洗いっこ!!さあさあお姉さん座った座った!!」

「ふぇ!?え、あ、は、はい?!」


なされるままに椅子に座らされる。

私の方が年上なのに、何故か従う側になってしまった。

でも、流石に体を洗わさせる訳にはいかなかったので、頭だけにしてもらった。

洗いっこって事だったけど、頭だけならまあ犯罪でもないと思うから大丈夫、だよね?


「お姉さん洗うの上手だね。」

「…あはは、それは良かった。」


体を流した後、浴槽に浸かる。

けど、何故か向かい合う形になってしまったので、なるべく体を見ないように視線を外す。


「お姉さんは私のこと嫌いなの?」

「え!?何で!?」

「さっきから、そっぽ向いてる。」


流石に怪しまれてる。

でも、前は向けないから、誤魔化さないと。


「お姉ちゃんは、恥ずかしがり屋さんなんだよ。だから、体を見られるのも見るのも恥ずかしくてね。あはは…。」

「もしかして、私が一緒じゃなかった方が良かった?」

「そう言うわけじゃないんだよ。嫌ではないんだけど、恥ずかしいから目を逸らしちゃうんだよ。」

「そうなんだ。お姉ちゃんみたいだね。」

「お姉ちゃん?」

「うん、お姉ちゃんもそんな感じだよ。」


今日広瀬家の人と食事したけどお姉さんいなかったよね?

と言うか、さっきまでテンパってて気が付かなかったけど、ずっとお姉ちゃんって言ってた。

あれ?でも、おかしくない?


「今日お姉ちゃんは見てないけど、お姉ちゃんはどこか違う所に居るの?」

「それは……あ、違った違った!!お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃん!!言い間違えてた。そう、お兄ちゃんだよ!!」

「お姉ちゃんとお兄ちゃんを言い間違えてただけ?」

「そうそう。私うっかりだな。」


変に焦ってる?

どうしたんだろ?

それに、お兄ちゃんとお姉ちゃんは間違えようがないと思うけど。


「さっきまでのは、永遠お兄ちゃんの事だよ。昔一緒に入ってた時によく目を逸らしてたよ。」

「それは、恥ずかし家さんだね。」


一瞬にして、考えていた事をやめて、話の方に切り替える。

多分それは思春期特有のだから、普通なんだよ。お兄ちゃんが妹のって多分きついかも。

私も一定の年から氷柱姉と一緒に風呂に入りたいとは思わなくなったから。

でも、直接的には言えないね。

同じ男として知られたくないだろうし、妹ちゃんもそう言うことは知りたくないと思う。


「お兄ちゃんも恥ずかしがり屋さんだったんだ。」

「多分そうだよ。お兄ちゃんから嫌われたりはしてないでしょ?」

「うん。…なるほど、そう言うことだったのか。お姉さん、ありがとうね。」


その後は、一緒に数を数えることになり、数え終わるとお風呂から上がった。

着替えは大きさがちょうど良いもので安心した。

ただ、お風呂から上がると、黒瀬から先に入った事に対して怒られかけた。

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