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お泊りです!?

冷静さを取り戻す。

さっきから私は落ち着きがない。


「整理すると、紅桜ちゃんは寝ていたはずだけど、なぜかこんな所に無意識に来ていたと……。」

「そう、なりますね。」

「………。」


樹は考え込むように顎に手を伸ばす。

私が分からない以上、樹にも分からないと思う。

けど、樹と話していると何だか落ち着く。


「一先ず、親に連絡をしないとなると、どこかに泊まらないといけないね。誰か泊めてくれそうな人は?」

「………」


心当たりは、ない事は無い。

美和ちゃんなら、快く受け入れてくれそう。

満さんなら、悪態をつきながら許してくれそう。

夜宵先輩は………いいや。

それから、氷柱姉なら、味方だって言ってくれたから………。

でも、私は………


「もしよければ、ここに泊まっていく?」

「えっ!?」

「泊めてもらえる人がいないんでしょ?」

「そ、れは……」

「別にやましい気持ちはないし、嫌なら嫌で良いんだけどね。」

「そんな事は……」


樹がいい奴だって事は知ってるし、本当に心配して提案してくれたんだと思う。

その事について何も疑ってない。

だから、今回の件で巻き込みたくない。


「樹さんに悪いので、帰ります。」

「………っ。」


樹は苦虫を噛み潰すような顔をしている。

そんな顔をさせてしまう自分は、いったいどんな顔をしているんだろう。


「ずっとベッドの上にいる訳にはいかないので、私はこれで…。」

「……まって!」

「え?」


部屋から出ようとすると腕を掴まれる。

その咄嗟の行動が本人にとって予想外のようで、驚きを隠せていない。

だから私も抵抗をせずに、止まってしまった。


「……あ、いや、これは…。」


何とか振り絞る声は、戸惑いのあまり口が動いていない。

カタコトの言葉で、それでも何かを伝えようとしていた。

でま、一度呼吸を整えて、改めて口を開いた。


「…お、俺は、紅桜がそんな顔をしている姿を見たくない。今まで、そんな事のために我慢してたわけじゃない。」

「っ……。」


樹の言っていることを理解できたわけじゃない。

けど、何故か涙が出てきた。

理解できないけど、私は樹に酷いことをしてしまっていると思った。


「あっ、ごめん。俺…」

「ち、違うの。わた、私は……」


私が泣いていると知って、樹手を離した。

けど、その手をもっと握っていて欲しかった。


「紅桜が帰らなくていいように、ちょっと聞いてみる。」

「えっ、それって??」


携帯を取り出して、誰かに連絡をし始めた。

しかも、1人じゃなくて3人も。

急展開に私はついて行けず、その場で立ち尽くしてしまう。


「あぁ、あの頼む。病気については話せば理解してくれるし、話さなくても気にしないと思うぞ。急にすまん。任せた。」


離し終えると、携帯をしまう。

そして、再度私ので握った。

さっきみたいに力強くではなく、優しくだった。


「頼れる奴らに頼んだから、頼ってやってくれ。」

「で、でも……私なんかが。」

「そう言う事を口にしないでくれ。俺たちはお前のことをそんなふうに思ってないんだ。そうやって卑下する人間に対して頼って欲しいと思ってるこっちが馬鹿みたいじゃないか!!」

「…っ!」


推し黙る。

こんなこと言われて、言い返すことなんて出来ない。

自分がどれだけ酷い事をしてたか理解してしまった。


「頼ってくれるか?」

「うん。」


私は、頼る事にした。

差し伸べられた手を今度はしっかりと握り、私は外へ出る事を選んだ。


樹に頼ってから数分後、黒瀬さんがやってきた。

樹の連絡した内の一人のようだった。


「樹くんからお願いされるとは思わなかったよ。」

「急に悪かったな。あとは頼む。」

「任されました!さ、行こう!」

「え、あ、うん。」


――――――――――


紅桜を見届けると部屋に戻る。

今さっきまで別途で寝ていた紅桜を思い出すと、力になれない自分に嫌気がさす。


「急に来たかと思ったら、人格を入れ替えやがって。あれじゃあ、俺が頼ってやれないじゃんか。」


紅桜は何故俺の家の前で倒れていたのか知らないと言っていた。

それもそのはずだ。

そもそも家の前で倒れてたって言うのは嘘だ。

あいつは俺を頼って、ここまで歩いてきたんだ。

知らなかったのは、まぁ、覚えていなかったのは、完全に紅桜に問題があるが。

けど、せっかくここまで来て頼ってくれたんだったら、最後まで頼られたかった。

あいつの苦しむを、少しでも理解してやりたかった。

親友として、力になりたかった。


――――――――――


黒瀬さんに連れられて、着いたのは見覚えのある家だった。

と言うか、一度来たことがある気さえする。


「2人はもう着いてたのね。ちっ、最後が私か。」

「み、満さん!?」

「何驚いてるのよ?あんたからの誘いでしょ?」

「へ??」


樹が連絡してたはずなんだけど、何て言われたんだろう?

その時点で、私が誘ってないのは十分理解してもらえるんだけどな。


「あ、みんな!もう来てたんだ。」


向かいのお家から永久が出てくる。

そこらか考えるに、目の前の家は永久のだ。

見覚えがあったのは、一度見たことがあったからだろう。


「準備ができてるから、入っていいよ。」


待たされる事なく、家に通される。

玄関には家族らしき靴があり、貸し切りお泊りでは無いことが分かった。

私達3人の事を親に話してるのなら、よく許可してもらえたなと思う。

もし、私の親ならあまりいい顔はしないはず。


「あら?……もしかして、永久ちゃんのお友達?」

「ど、どうも。」

「お邪魔します。」


自室に案内されてる途中、女性と遭遇した。

体格的には永久と同じぐらいで、推測するにお姉さんかな?


「まぁ、こんな可愛いお友達を連れてくるなんて!?急なお願いをされたけど、こんな子達ならしょうがないわね?」

「お、お母さんやめてよ!?」

「へ!?お、お母さん!?お姉さんじゃなくて!?」

「あら、そんな若く見えるかしら?照れちゃうわ。」


私が感じたツッコミを黒瀬さんがしてくれた。

一言一句同じ驚き方をしててちょっとびっくりもした。


「突然の来訪ですみません。今日はお邪魔になります。」

「あらあら、礼儀もあって永久ちゃんと同級生だなんて信じられないわ。」


ここで、満さんがお嬢様ムーブをかましてる。

夜宵先輩のようにいつもと違う態度に驚きはするけれど、元々いいところのお家に住んでいるのを知っているので顔には出ない。

元々そっちが当たり前だったと言わんばかりの行動にちょっとかっこよさを覚えた。


「お母さん、ご飯の準備があるんでしょ?こんなところで油を売ってていいの?」

「そうだったわ。みんなの事をもっと知りたいけど、ごめんなさいね?」

「はい、行った行った。」


照れ隠しのように永久はお母さんを追いやる。

気持ちはわかるので、同情してしまう。


「みんな、部屋はこっちだよ。」


階段を登って直ぐの部屋に通される。

中に入ると、人形が何個か置いてある女子の部屋が目に入った。

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