不思議な事が起こりました!?
「あのクソ親父、次あったら顔面潰す。殴って、殴って、外を歩けないようにしてやる。」
「氷柱ちゃん、もう飲むのやめなよ。明日に響くよ?」
「うるさいわよ!あんたもクソ親父の肩を持つの!?」
「単純に氷柱ちゃんを心配してだよ。私も紅桜ちゃんには会いたいからね。でも、氷柱ちゃんのお父さん怖そうだから、氷柱ちゃんに頑張って欲しいんだよ。でも、酔い潰れちゃったら、紅桜ちゃんに会える時間が伸びちゃうでしょ?」
百々の話を聞き流しながら、新しいロング缶に手を伸ばす。
ムシャクシャした気持ちを紛らわすのに、お酒は最適だ。
けど、今日の酒はあまり美味しく感じない。
これはきっと、あのクソ親父のせいだ。
「かなり飲んでるな。お父さんに何か言われたか?」
「おじさん…。」
おじさんが外から帰ってきたみたい。
最近は百々の代わりに住まわしてもらっていたので、見なれた光景だ。
「あのクソ親父が、勝手に紅桜を家に送還してたのよ。だから、連れ戻しに家に帰ったら、二度と家に帰ってくるなって追い出されちゃった。」
「そりゃまた、大変なことになったな。あいつの事なら、やりかねないとは思っていたが、そうか。」
渋るように話す。
おじさんから見てもそう思わせる節があったんだろう。
「あいつにぎゃふんと言わせる何かいい策がないかしら?………そうよ、おじさんからあのクソ親父に一言言ってよ!上司だったんでしょ?」
「おいおい、いつの話をしてるんだい。もうとっくに現役を退いてるから、俺から言っても聞かねえよ。」
「なら、力でどうにかできないの?警察官って、柔道の黒帯なんでしょ?」
「みんな黒帯ってわけじゃねえよ。俺だってそうだ。」
「そうなの?でも、あいつは黒帯なのよ?あいつが取れるなら、誰だって取れるでしょ。」
「氷柱ちゃんは、お父さんの事が嫌いなのは知ってるけど、相手を認める事は大事だ。あいつは天才的に強い。」
「認めたく無い。あんなクズが、強いなんて認めたく無い!」
ロング缶を一気に飲み干す。
あのクズ親父の事を考えると、胸がムカムカする。
「力でどうにかしようとしてるなら諦めな。流石に分が悪過ぎる。」
「氷柱ちゃんが力で勝てないんだよね?氷柱ちゃんのお父さんって、そんなに強いの?」
「強いな。俺が居た頃から、一線を画してた。」
「て事は、氷柱ちゃんはお父さんの遺伝子を強く引いてるんだ。」
「あんなゴミの遺伝子なんてマジでいらない。血を抜くように引き抜けたらどれほど良かったことか。」
「まあ、そう言う言い方をしてやんなよ。あいつなりに考えがあってのことだろう。」
クソ親父に考え?
あるわけない。
あってたまるか。
「誤解されやすい性格だからな、氷柱ちゃんが嫌いになるのも仕方ないとは思う。けど、もう少し考えを改めれないのかい?」
「おじさんはクソ親父の味方なの?」
「そうじゃない。聞いた限りだと、あいつにも悪いところがあるようだしな。けど、全部が全部悪かったとも思わねぇ。」
「………」
中立を貫く姿勢らしい。
「おじさんは、私の味方をしてくれると思った。」
「それはすまなかったな。けど、親の立場からすると子供を自分の手元に置いておきたいって気持ちは分かるんだ。」
「けど、無理やりってのは……」
「自分の息子が、事件に巻き込まれて心配しない親はいないと思うけどな。」
「けど……」
「ま、やり過ぎには違いねえ。けど、そっちもお父さんに隠れてやってた事があるんだろ?お互い様じゃねぇか?」
「それは……」
おじさんの言う事は正しい。
紅桜が事件に巻き込まれるたびに、クソ親父にバレないように隠蔽してきた。
でもそれは、紅桜が自由にいられるようにと思ってのこと。
「悪いが、協力はできないな。」
「……ケチ。」
「悪いな。変わりと言ったら何だが、紅桜くんの部屋はそのままにしとくし、今後も百々の部屋で過ごしな。」
「お父さん!?」
「なんだ、都合が悪いことでもあるのか?」
「あそこ一人用だよ?私どこで寝ればいいの?」
「それこそうちに戻って来い。母さんがお前の説教をしたがってる。」
「心配じゃなくて!?」
「最近、暴れ過ぎだって。」
「あばばば。」
ご愁傷様。
私は知らないから、頑張りなさい。
「嫌だ嫌だ嫌だ!!私は自由がいいの!?それなら、氷柱ちゃんと同棲する!同じ布団で寝るから!」
「嫌よ。狭いじゃない。」
酔ってないはずの百々が暴れそうになる。
この年になっても我儘なのは、どうなのかしら?
――――――――――
「……ん………うん?」
目を覚ます。
見慣れたはずの天井に違和感を覚える。
ぼやける視界のせいかもしれないけど、直感的に間違っていない気がする。
眠い目を擦り上げながら、体を動かす。
殺風景な部屋が見えるはずなのに、全く知らない風景が目に入る。
もう一度目を擦ってみても、顔を叩いてみても、視界に変化はない。
「目が覚めたようだね。」
「へっ!?い、樹……さん!?」
部屋の扉が開かれ、そこから樹が現れる。
突然の出来事に驚きを隠せれない。
「な、な、んで、こ、ここに!?」
「なんでって、ここが俺の家だからだよ。」
「えっ!?」
よく見渡す。
クリアになってしまった目でもう一度確かめると、確かに見覚えがあった。
「で、でも、どうして私はこんな所に!?わ、私、家に居たはずだけど…」
自分の状況に理解が追い付かない。
私が眠る前、確かに家に居たはず。
間違っても外に出るなんて事はしてない。
じゃあ、どうして樹の部屋にいるの?
「まずは落ち着きなよ。お茶を持ってきたから、飲んでごらん。」
「あ、ありがとう、ございます。」
渡されたコップに口をつける。
冷たいお茶が喉を通り、少しだけ落ち着いた気がする。
「僕自身もちょっと困惑してるから、整理しようか。」
「樹さんも困惑してるんですね。」
「うん。だって、出かけようと外に出たら家の前で紅桜ちゃんが倒れてたんだもん。」
「た、倒れてた?」
私が樹の家の前で倒れてた?
何でそんな事になってるの!?
私は自分の部屋で寝てたはずなのに!?
「そ、その、本当に倒れてたんですか?」
「そうだよ。だから、放っては置けないと思って部屋で寝かしてあげてたんだけど、もしかして、嫌だったかな?」
「そ、そんな事は無いです。」
「それならよかった。でも、どうしてこんなところまで来たのかな?何か用事があったの?」
「そ、それが、私にも分からなくて……。」
「分からない……?」
「実は記憶がないんです。」
「…………」
「私は、自分の家の部屋で寝ていたはずなんです。でも、気がついたらこんな所にいて……」
こんな事になった理由が分からない。
まるで、私が誰かに操られているみたい。
「……ひとまず、親御さんに連絡が必要だよね?電話番号を…」
「や、やめて!!!」
ベットから飛び降りて、樹の腕を握りしめる。
「ど、どうしたの??」
「あ、いや、こ、これは……」
咄嗟に動いた体に驚いて思考が止まる。
私は何を言えば……。
「さっきから落ち着きがないようだね。親御さんに連絡はしないから、ベットで休憩しなよ。」
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