ぐちゃぐちゃになっちゃった
目が覚めると、また目を閉じる。
ここ最近のルーティンだ。
起きていたら、お姉ちゃんに気づかられてしまう。
寝ているから会えないという事をお母さんからお姉ちゃんに伝えてもらって帰らせてる。
だから、目を開けてられない。
私を睨むお姉ちゃんが視界に入ってきそうで怖い。
死ぬ勇気もない私は、本当にクズだ。
ほんのちょっとでも動脈に刃物を掠めるだけで良い。
お姉ちゃんのためを思うのなら命ぐらい安いはずなのに、いざ刃物を首に当てると手が震えてしまう。
私は本当にどうしようもないゴミだ。
だから、耳を塞いで誰にも邪魔されない夢の中へ逃げ込む。
そうすれば、お姉ちゃんが笑って待ってくれている。
みんなが、笑顔で迎えてくれる。
その場所には私は、私は………
『何で逃げるの?私のために死になさいよ。』
「っ!!!!」
夢から覚める。
楽園のはずの場所に異物が入り込んでいた。
「お、お姉ちゃん、は、あんな事言わない!!」
お姉ちゃんは私にあんなこと言わないもん。
お姉ちゃんはいつだって優しくて、それで、それで……
「あれを、飲まないと……。」
お父さんの部屋から盗んできた2つの薬を喉に流し込む。
これを飲むと、悪い夢は見なくなる。
体がふわっとして、寝つきも良くなる。
「だんだん、少なくなってきな。また、取りに行かないと…」
ここ最近は1日に20錠近く飲んでるから数が減ってきた。
あの部屋へ入るのにかなり心の準備がいるから正直もうしたくない。
それに、お父さんにバレたら、心がもたないと思う。
だからと言って、お母さんにも頼めないし、部屋から出る事も出来ない。
「紅桜!紅桜!!」
「っ!!」
激しいノックの音と共に、氷柱姉の声が響く。
その後ろから止めるようにお母さんの声が薄っすらする。
また今日もやってきた。
2日前から、氷柱姉は私が寝ていると言われても乱暴に会おうとしてくる。
それだけ、私を引きづり出したいんだと思う。
私の恨みが相当で、氷柱姉の前に出てこない私への怒りが頂点なんだと思う。
「出てきなさい!出てきなさいよ!!」
「もうやめてっ!」
「何でよ!どうせ、父さんの……!」
「紅桜は疲れてるんだから、ね?起こすのはやめてあげましょう?」
「っ!!」
ノックの音がやむ。
床が軋む音がして、部屋の前が静かになる。
お母さんが氷柱姉を諦めさせてくれたらしい。
「…紅桜、会ってあげても良いんじゃないかしら?外にも出れるようになれたんだから。私が、言えたことじゃないかもしれないけど、お姉ちゃんは………ごめんなさい。」
「………」
お母さんも去っていった。
何を言われても私はここを離れない。
この部屋から出ていくとしたら、私は…
「…あ、いつもの………」
体が軽くなって、頭の中が真っ白になる。
何もかも考えられなくなって、意識が無くなる。
『紅桜は、このままでいいのか?』
『仕方ないよ。僕は何もできないんだ。』
『いや、お前が氷柱さんの前に出ていけばいいじゃないか。』
『その前に入れ替わっちゃうんだ。あの子が、無理にでも出てこようとするんだ。』
これは夢だ。
何となく理解する。
でも、何の夢か分からない。
目の前で喋っているのは、多分樹だ。
でも、話し相手は分からない。
話し相手の方を見ようとしても、首を動かせない。
『……俺は何も出来ないのか?』
『今のように、話し相手になってくれるだけで十分だよ。』
『………。』
『そんな顔しないでよ。僕は、本当に助かって…っ!』
『!!!』
『…だ、大丈夫。時間が来ただけだよ。』
『そ、そうか。』
『今日も話し相手になってくれてありがとう。帰るよ。』
『…あまり、氷柱さんに迷惑はかけるなよ?』
『僕にはどうにも出来ないんだけど……何とかしてみるよ。』
そこで会話が終わる。
樹さんは、氷柱姉について話していた。
となると、話し相手は氷柱姉を知ってる人。
でも、誰だか分からない。
『僕達の話を覗いてたでしょ。』
「!?」
話しかけられる。
でも、相手の顔は見えない。
『覗きは悪い事なんだよ?…これは、何か仕返ししないとな。…樹に言われたし、ちょっとだけ強引な手段を取ろうかな。……これなら君を部屋の外へ出せれるかも。』
「??」
『悪い子にはお仕置きだからね。目が覚めたら、絶対寝たらダメだよ。』
「!!!」
私の声は届かない。
一方的に誰かが話しかけるだけだった。
そこで私の体が浮き上がる。
これは夢の終わりの合図。
私は、目覚めをした。
頭がクラクラする。
視界もぼやけていて、体が暑い。
全力疾走をした後の酸欠状態みたい。
これじゃあ、薬を飲んだ所ですぐに寝れない。
「とにかく、目を瞑ろう。そして、呼吸だけでも整え……っ!?!?」
窓を叩く音が響く。
この部屋は2階にあるので、外から人間が窓を叩く事は不可能。
つまりこれは、
「ゆ、幽霊!?な、南無阿弥陀、南無阿弥陀!」
体を丸めて布団に潜る。
そっと目が見える分だけ布団を捲って、窓を見る。
窓には黒い影が映し出されていて、その影はすごい勢いで動いてる。
窓を叩く音が何度も響いて、めを目を瞑りたくなる。
「……んなもん、ぶっ壊してやるっ!!」
「!?!?」
窓のガラスが割れて派手な音が響く。
破片が飛び立ちり、太陽の光に反射してる。
「勝手に入るわよ。」
「………」
布団を深く被る。
窓の外に居た人物を見てしまい、何も考えられなくなる。
「紅桜、そこにいるのね。」
「………」
沈黙を貫く。
私は何も答えたくないから。
「百々から話を聞いたわ。思い、出したのよね?」
「………!」
「わ、私は…」
「や、やめて!!」
咄嗟に大声が出た。
それ以上の言葉を聞いてしまえば、私が私でなくなってしまいそうだったから。
「もうやめて。私が悪いのは知ってる。私が悪い子なのも分かってる。氷柱姉が私のことを嫌ってるのも知ってる。私に対して怒ってるのも知ってる。」
「……。」
「だけど、お姉ちゃんに嫌われたくない。お姉ちゃんの声で『嫌い』なんて言葉は聞きたくない。死んで償うから、それだけはやめて。」
「…あ、紅桜?」
布団からでて、机の引き出しに手を伸ばす。
引き出しに忍ばせていたカッターを手に取る。
そして、刃を伸ばして、首元に近づける。
「な、何をしてる!?」
「い、言ったでしょ?死んで償うって。わ、私は、お姉ちゃんに嫌われるぐらいなら、こんなの、こんなの……うぁぁぁ!!!!」
「バカっ!!!」
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