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ずっと眠っていたいです。

「お姉ちゃん、似合ってる…かな?」


お姉ちゃんの服を借りて着飾る。

大きなリボンを頭に乗せて、フリフリのスカート。


「すごく似合ってるよ!」

「そうかな…えへへ。」


お姉ちゃんは心の底から嬉しそうに褒めてくる。

その言葉がとても嬉しくて、笑みが溢れてしまう。


「こっちも来てみてよ!お姉ちゃんには似合わないけど、紅桜なら似合うんじゃないかな?」

「似合う…かな?」


服を渡される。

お姉ちゃんに褒められて調子に乗り、直ぐに着替える。


「ちょっとら大きいかな?」

「大したことないよ。…でも、お姉ちゃんが思ったようにすごく似合ってる!やっぱり、紅桜は可愛い服が似合うんだよ!!」

「……うん。ありがとう。」


こんなに褒められると、ちょっぴり恥ずかしいな。

でも、こんなに褒めてもらえるのは嬉しい。

変な高揚感があって、癖になるな。


「今度、それを着て百々のところに行きましょう!きっと、喜んでくれるよ!」

「だ、だめだよ!僕は男だから、きっと百々お姉ちゃんに、気持ち悪いって言われるよ!」

「そんな事ないって!それに、もし百々がそんな事言ったら私がやっつけるから!」

「殴るのはだめだよ!」

「殴らないよ。いじめるだめだから。」

「もっとダメだよ!?」


お姉ちゃんは偶に発想がおかしくなる。

だから、早めのうちに止めさせないといけない。

でも、そういう考えをする時は大抵僕が絡んでる時。

きっと、僕が弱いからお姉ちゃんが頑張ろうとしてくれてる。

だから、余計に止めないといけない。


「お前たち、何をしてるんだ?」

「あっ、お、お父さんっ……。」

「こ、これはっ!」


部屋の扉の前にお父さんの姿があった。

その目には、驚きと軽蔑と汚物を見るような眼差しがあった。


「お前、何でそんなものを着てるんだ?」

「こ、これはっ……。」


今まで両親にバレないようにひっそりと遊んでいたのについにバレてしまった。

その事が頭の中で渦を巻いて、ちゃんと思考が回らない。

体は固まってしまい、口が回らない。


「そんなもの、早く脱げっ!!」

「ご、ごめんなさいっ!」


僕が固まっていると、お父さんが無理やり脱がそうとしてくる。

その恐怖に、言いなりになり謝る事しか出来なくなる。


「違うの!紅桜は悪くないの!だからやめてっ!」

「うるさい。お前は黙ってろ!」

「嫌っ、嫌っ!」

「邪魔をするなっ!」

「きゃっ!」


僕を助けようとしてくれたお姉ちゃんはお父さんにビンタされる。

そして、地面に叩きつけられる。

それを間近で見てしまった僕は、お父さんに歯向かう事も出来なかった。

歯向かう事が悪だと分かってしまった。


その後、無理やり脱がされて、元の服を着てリビングに来るように言われた。

お父さんにバレた恐怖と、これからお母さんにバレてしまう恐怖が心を蝕む。

そんな僕をビンタされて痛いはずのお姉ちゃんが優しく包んでくれる。


「ごめんね。ごめんね。」

「………違うよ。お姉ちゃんのせいじゃないよ。」

「良いの。私が悪いの。無理やり今日着せたから。いつもは、2人が居ない時なのに、今日やらせたから。」

「そんな事ないよ。僕が、気持ち悪いからだよ。僕が男なのに、こんなんだから……。」

「紅桜は、気持ち悪くなんてない!お父さんがおかしいんだよ!周りがおかしいだけ!」


お姉ちゃんは、何度もそう言って、元気付けてくれる。

でも、それはとても悲しかった。

だって、どう考えても僕が異常なんだもん。

そんな僕を助けようとするか、お姉ちゃんもおかしい人のように思われる。

立派なお姉ちゃんが異常者のように思われるのが嫌だ。


「ねえ、逃げよう。」

「ぇっ?」

「どうせ、お父さんに文句を言われるだけだよ?ならさ、逃げようよ。」

「で、でも……。」

「大丈夫。お姉ちゃんを信じて。」

「……うん。」


その時のお姉ちゃんはとても輝いてた。

太陽のように眩しくて、僕の希望だった。



===============



「眩しい夢だったな。」


夢から目覚める。

喉がカラカラで少しだけ気分が悪い。

窓の外を見ると夕陽が見える。


「もう夕方か。……?」


手元にスマホがあった。

こんな所に置いた覚えはないけど、このままにしておくと寝る邪魔になるので置き換える。

そして、手に取った瞬間、スマホが光った。


「!」


通知が来たみたいだ。

相手は氷柱姉だ。

でも、それだけじゃない。

通知は百々姉やみ満さん、広瀬さん、美和ちゃんから来てた。

ずっと放置してたから、たくさんの通知が溜まってる。

その中で氷柱姉からは異常に来ている。


「え……あ……うそっ。」


400件以上の通知が届いていて、胸が苦しくなる。

こんなにも氷柱姉は………、


「嫌だ。…嫌だ……嫌だ!……嫌われた。きっと怒ってるんだ。」


きっと悪口ばかりが書かれたものが届いてるんだ。

だって、私は氷柱姉を裏切った。

それだけでなく、一人逃げたんだ。

きっと、私を見つけ出そうとしてる。


「嫌だ。これ以上嫌われたくない。お姉ちゃんに嫌われたら私……生きていけない。…う…う……うぇっ。」


胃から逆流して口からものが出る。

口の中は酸っぱくなり、気持ち悪さが落ち着く。

ベットの上で思いっきし出してしまったので、このままだとまた寝れない。


「ティッシュで拭かないと。」


体を起こして、ティッシュで拭く。

シーツを敷いていたので、汚れたのはそれだけだ。

シーツを剥いで、これを洗いたいけど両親が帰ってるだろうし、明日洗おう。


「!!!」


ドアがノックされる。

さっきまで氷柱姉の事を考えてたから一気に不安が残る。


「お母さんよ。今いいかしら?」

「……ふぅ。」


氷柱姉かもしれないと思っていたので、心が落ち着く。


「起きてるよ。」

「よかったわ。それで、お姉ちゃんが来てるけど……」

「え?」


来る事自体おかしくない。

ここは氷柱姉にとっても家だから。

でも、何でお母さんは私をお姉ちゃんと合わせようとしてるの?

昔の私なら、きっと逃げるよ?

あの時は失敗したけど、今なら……。


違う。

これはお父さんの嫌がらせだ。

お姉ちゃんが逃げさせてくれるって言う希望を持たせて、お姉ちゃんから軽蔑される私を観たいんだ。

きっとそうだ。

だって、今のお姉ちゃんは僕を嫌ってる。

会いに来る理由なんて、私に怒鳴りつけるくらいだ。


「お姉ちゃんが会いたいって言ってるけど……。」

「ダメ!絶対にダメだから!」

「そう。」


私の怒鳴る声を聞いて、お母さんは部屋の前から消えた。

それと同時に、胃の中からまた込み上げてくるものがあった。

次は汚さないようにゴミ箱に向けて吐いた。


「気分が悪い。寝よう。」


吐くだけでも力を使うのに、久々に大声を出した。

体が休むように訴えかけてくる。

私は流れるようにベットに身を預け、現実から目を逸らすように眠りについた。

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