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花火を見ます!!

「先輩!?!?大丈夫ですか!?!?」


とてつもなく大きな声で突進してくる人がいた。


「待ちなさいよ!」


その後ろから追いかけてくる人がいる。

浴衣姿で見慣れないけど、美和ちゃんと満さんの2人だ。

でも、人が分かってもそれどころじゃない。

私は受け身の姿勢を取って、突進して来た美和ちゃんをなんとか受け止める。


「美和ちゃん!?どうしてここに!?」

「先輩を追って花火大会に来たんですよ!満先輩とドッキリ仕掛けようとしてたのに、先輩が男性に詰め寄られてるを見てしまって居ても立っても居られなかったんです!」


大泣きをしそうなぐらいの勢い。

美和ちゃんの方が襲われてたんじゃないかってぐらいの勢いで逆に冷静になりそう。


「待ちなさいって言ったじゃない。」

「満さん……。」

「無事のようね。ま、私たちが来る前に助かりそうだったのは見えてたけどね。」


息を整えながら普段の態度を装ってる。

日常に戻ってきたように感じられる。


「本当はもう少し早くくる予定だったんです!!でも、満先輩がモタモタしてたから遅くなりました!」

「なっ!?元はと言えばあんたが出かけるのに時間をかけたからでしょ!」

「でも、走ったら電車に間に合ってました!」

「あんなギリギリで間に合うも何もないわよ!」


私を挟んで言い合いが始まる。

こんな大勢に見られそうな場所で堂々とできるのはすごいと思うけど、今はやめてほしい。


「2人とも落ち着いて!人も多いから!」

「す、すみません先輩。」

「ま、今は静かにしておいてあげる。」


私が大声を出すと2人は言い合いをやめてくれた。

けど、お陰で通りかかっている人たちにチラチラと見られる事になった。

恥ずかしい。


「そろそろ花火が始るから、移動しようよ。」

「そうですね。ここからだと綺麗に見えませんよね。」

「ぁ、樹さん肩貸しますよ。」

「普通に動けるから心配しなくていいよ。」


百々姉が流れを変えてくれた。

移動という事で、樹さんに少しでも力になれたらと思ったけど断られてしまった。


「先輩、あっちに箸巻きあります!一緒に食べましょう!」

「えっ、ぇっ!?」


人混みの中に混じって進んでいると美和ちゃんに腕を引っ張られて連れていかれる。

買いたいものがあったらしいけど突発的にそんな事をされると逸れちゃうよ!


「2つください。」

「はいよ。600円です。」


人混みを抜けて屋台の前に出る。

美和ちゃんは目的の屋台の前に行って買っている。


「見つけた。」

「樹さん!追いかけてくれたんですか?」

「2人にしておくわけにはいかないからね。」


人混みから樹さんが出て来て安堵する。

完全に逸れたと思っていたから、追いかけてくれたのはとてもありがたかった。


「せ、先輩を狙ってる危ない人!!なんで来たんですか!?」


美和ちゃんは樹さんを見るなり、失礼な言葉を放った。


「美和ちゃん何言ってるの!?」

「だって、だってー!先輩と2人きりだったのに!」

「元気な後輩だね。」

「美和ちゃんがすみません。」


美和ちゃんが謝るどころかぐずり始めた。

樹さんは全く気にしてないようだけど、人に失礼な事は悪い事だ。

美和ちゃんが謝らないので私が謝る事にした。


「謝らなくていいのに。それに、美和ちゃんの言う事もあながち間違って無いかもしれないし。」

「間違ってないって?」

「紅桜ちゃんとなら付き合ってもいいかなって思ってるんだ。」

「え?それって……!?あ、いや、私は……。」


樹さんの言葉に顔が赤くなる。

生涯の中で一番ドキドキしている気がする。

こんなのずるいよ!!


「むき~!!先輩は私となんです!勝手に口説こうとしないでください!」

「そうなの?」

「いや、美和ちゃんとはそんな関係じゃ無いです。」

「先輩!?」

「何で驚くの!?」

「だって、だって……!!今は私たちの仲の良さをこの男に見せつけるところじゃないですか!?」

「そんな事無いよ!?」


美和ちゃんにかき乱される。

樹さんの事をあまり良く思ってないのは知ってたけど、本人を目の前にしてよく言えるよ。

普段人前で話せないのに樹さんの時だけ気持ちが前に出るのかな?


「本当に面白い後輩だね。紅桜ちゃんにぴったりだよ。」

「私と先輩の中を認めるんですね!」

「うん認めるよ。」

「樹さん!?」


美和ちゃんの事を面白い後輩だと言って話に付き合ってる。

話に合わせてると言うよりかは弄んでると言う方がいいかもしれないけど。

仲の良さを認めると言われて少し驚いてる自分がいる。


「でもさ、一つ謝らないといけないな。」

「何ですか?」

「君って紅桜ちゃんの事を名前で呼ばないでしょ?実はさっき、うっかり呼び捨てで名前を読んじゃったんだよね。」

「そ、そう言えば……!!!」


言われた!!!

切迫詰まってたから、気にしてなかったけど、思い返してみれば呼び捨てだった!!

今思い返せば、とってもかっこいい感じだったし、胸がポカポカする。

もう一度呼び捨てにしてほしいかも。


「わ、私だって先輩の事、な、名前で……名前で……。」


私の方を見て顔を赤らめる。

名前で呼ばれるのは別に構わないし、先輩呼びだと他の人も当てはまるから区別がつくし、いい頃合いかも。


「先輩の事を名前で呼ぶなんて、光栄すぎてやっぱり私には無理です!?……キィー!!やっぱり貴方は嫌いです!!」

「あらら、嫌われちゃった。」


無理やり樹さんの所為にした。

樹さんが気にしてないどころか面白がってる感じなので私は口に挟まなかった。

それどころか、仲良く戯れているように見えて、少しモヤモヤする。


「??紅桜ちゃんどうかした??」

「い、いえ。何でも無いです。」

「先輩??」


よく無いよね。

樹さんは美和ちゃんと仲良くしようとしてくれてるだけだし、美和ちゃんは戯れようとしてるわけじゃ無い。

それどころか、後輩相手にこんな気持ちを抱くなんて良くない。


「3人の下に戻らないといけないけど、買い忘れたものはある?」

「私は大丈夫ですけど……美和ちゃんは大丈夫?」

「先輩とだけ買い歩きしたいです!」

「それだと、花火が打ち上がっちゃうんじゃないかな?」

「でも、先輩ともう少し2人でいたいです!」

「少しならいいけど、遅れたら満さんに怒られるんじゃないのか?俺は気にしないけど、君はどうなの?」

「ぐ、ぐ……仕方ないですね、先輩戻りましょう。」


満さんの名前を使った結果美和ちゃんは戻る事にしてくれた。

美和ちゃんは満さんに怒られるのを酷く嫌ってるようだし、本当にどうしようもない時は名前を使わせてもらおうかな。


美和ちゃんが買ってくれた箸巻きをいただきながら、人混みに戻る。

逸れていた間の時間はそこまで経っていなかったので、3人とはすぐに合流できた。

ただ、結果的に満さんに私まで怒られてしまった。

私は無理やり引っ張られただけなのに……。


『あ、花火が上がった!!』


何処からか声が響く。

その声に反応するかのように、花火が煌びやかに散る。

一つ打ち上がれば次々と花火が上がっていき、多彩な花火が色々な形を模して浮かび上がる。


「綺麗……。」


純粋な感想が口から溢れる。

花火を見たのは子供の頃以来だったので、美化された記憶がそのまま思い浮かんでいるみたい。

紅、蒼、翠、山吹、橙、菫。

透き通るような色が私たちを照らし、眼の中へ吸い込まれて行く。


花火が打ち上がる爆破音が周りの音をかき消して、私だけの世界を作ってくれる。

いつしか、今見ている花火が現在のものなのか過去の夢のものなのか曖昧になってくる。


「××姉、花火がが綺麗だよ!」

「そうね。貴方みたいに綺麗だわ。」


幻聴がする。

私がお姉ちゃんと初めて花火を見に行った時の会話だ。

あの時、お姉ちゃんとりんご飴を食べながら花火を眺めてて、空が綺麗に輝いていたのが印象的だった。

観たくないものから目を背けて、綺麗なものだけを観続けれたあの時は本当に幸せだった。

あの時は家族と仲が悪くて、唯一味方だったお姉ちゃんが連れて行ってくれたから今でも大切な思い出だ。


「お姉ちゃん、また来ようね。」

「次も2人っきりでね。」


花火を見た後、私はお姉ちゃんと約束して……結局今日まで花火を見に行く事が無かったな。

あの日、2人で抜け出した事が両親にバレてて、酷く怒られたんだよね。

だから、行こうにもいけない状況で……。


「あ、れ?」


何で家族と仲が悪かったんだっけ?

私がダメな子だから?私が悪い子だから?


「あ、れ?あれ?」


そう言えば、あの時何から目を背けてたの?

お姉ちゃんは何を肯定してくれたの?

私は、何を認めて欲しかったの?


「も、百々姉?」

「どうしたの?」

「お姉ちゃん…だよね?」

「紅桜ちゃん、どうしたの?」

「お姉ちゃん、何だよね?」

「そ、そうだよ?」


違う。

百々姉じゃない。

記憶の中の人は百々姉じゃない!

昔の記憶だからって、お姉ちゃんの顔がぼやけてても私には分かる。


「だれ?誰なの?」

「紅桜ちゃん、どうしたの?体調が悪いの?」

「ち、違う。私は……。」

「紅桜ちゃん?」

「先輩?」

「霜雪、良いところなんだから騒がないで…」


私のお姉ちゃんは、本当のお姉ちゃんは……。


『紅桜……約束よ。』

『約束だよ、氷柱姉(・・・)。』


そうだ。

思い出した。

何で私は忘れてたの?

どうして忘れてしまっていたの?

あんなに大切な人だったのに。

世界で立った1人の味方だったのに。


「紅桜ちゃん、顔色が悪そうだよ?調子が悪いのかな?」

「ねえ、氷柱姉は何処?何処にいるの?」

「紅桜ちゃん、どうしてその名前を!?」

「何処にいるの?答えて……。」

「それは…」

「何で………あ、……。」


私のせいだ。

私が氷柱姉を拒んだんだ。

たった1人の味方だったのに、拒絶したんだ。


「紅桜ちゃん、しっかりして!」

「私は……」


私は最低な人間だ。

唯一味方を私自身の手で傷つけて、被害者ヅラして。

こんな私………消えてなくなりたい。


「紅桜ちゃん!?」

「先輩!?」

「霜、雪!?」

「紅桜ちゃん!?」


気分が悪い。

意識が遠のいて行く感じがする。

でも、どうでもいいや。

こんな私、生きる価値なんて………


「紅桜!!!」


最後に見たのは、心配する樹さんだった

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