ヒーローが現れました!?
「ちょっとお兄さん達、女の子嫌がってるじゃん。やめなよ。」
声が掛かる。
私にとってそれは救いだった。
「た、助けてください!」
「ちょ、お前っ!いやだから、俺たちは人助けをしようとしてるんだよ。」
「そうなんだよ。今来たあんたもさ、困ってる人を見つけたら声を掛けるだろ?」
「どう見ても女の子に手を出してるようにしか見えないよ。人助けをしたいなら嫌がる事をするのやめなよ。……て、紅桜ちゃんじゃん。」
「えっ?……広瀬、さん?」
男の人の大きな体でさっきまでよく見えなかったけど、今は分かる。
助けに入ってくれたのは広瀬さんのようだ。
「その子ボクの連れなんで、もう大丈夫ですよ。ですから、手を離してもらえますか?」
「彼は知人なので、もう貴方達の必要はありません!ですから……」
「ごちゃごちゃうるさいな。」
「いたっ!」
男の人の握る力が強くなる。
それに、さっきよりも声色が変わって態度が急変してる。
「なあ、こいつどう見ても、女だよな。」
「お、そうだな。こいつも連れて行こうぜ。」
「は?お前ら何を……」
もう1人の男が広瀬さんに襲いかかる。
それを回避して、広瀬さんは重心を落とした。
「人助けをするためじゃなかったのかな?それとボクは男だから。」
「ごちゃごちゃうるさいな。人助けなわけねぇだろ。バカだな。」
そう言いながらさらに襲い掛かろうとしてる。
それをどうにかしようと広瀬さんも避けてるけど、明らかに運動量で負けてる。
私は抵抗も虚しいし、後もう1人助けがあれば……。
樹さんが来てくれれば……
「お前ら、何してるんだ?」
「あ?」
男の人が現れる。
「樹さん!」
心で願った通り、樹さんが現れた。
でも、どうして……待つように言ってたのに。
「なかなか戻ってこないから、心配して来てみればだな。……お前ら、紅桜と永遠に手を出してタダで済むと思うなよ。」
静かに怒ってた。
言葉から分かる棘が、普段と違う樹さんを演出してた。
「はぁ、また正義気取りのお仲間さんか?面倒だな。」
「さっさとずらかろうと思ったが面倒だな。さっさと片付けるか。」
広瀬さんから樹さんに標準を変える。
そして、体を大きく広げて威圧するように襲い掛かる。
樹さんはそれをいともも簡単に交わして、冷静に対処する。
そして、何度か交わした後、カウンターを決めに行く。
「ボクもいるからね!」
さらに広瀬さんも加わり、さらに男を追い詰める。
「くそっ。面倒いな。」
「なら、さっさとどっか行けよ!」
「がっ……」
樹さんの右ストレートが男の顔面にクリーンヒットする。
そして、よろめいた隙に広瀬さんが足を蹴って転ばす。
「これで後1人……」
「くそっ、役に立たねえな。」
「降参してくれるなら見逃すよ?」
「勘違いするなよ。有利なのはこっちなんだよ。後、それ以上近付くなら嬢ちゃんは無事じゃなくなるぜ。」
「いや、痛い…。」
男は腕をさらに握りつけ、私を盾にするようにする。
こんな男に私が捕まってるせいで2人は安易に動けない。
「動くなよ。ま、嬢ちゃんかどうなっても良いなら来いよ。」
「くそっ。お前ら……っ!?」
樹さんが倒れる。
その後ろにはさっき倒したはずの男がいる。
樹さんは後ろから殴られたようだ。
「樹さん!?」「樹くん!!」
「さっきのお返しだ。おや~効いたよ。気絶するところだったぜ。」
「よくやった。そのままもう1人もやっちまえ。」
「よくも……お前らなんかに………」
もう絶対絶命だった。
樹さんは殴られた場所が悪いのかうまく立てないでいる。
広瀬さんも頑張ってくれてるけど、時間の問題。
私が…私が捕まってなかったら、こんなことには……
「おに~さん達、子供相手にやり過ぎじゃないかな?」
「女の子を人質にとって恥ずかしくないのかな?」
女の人達が現れた。
私のどこかでこの人達に、期待をしてしまう。
でも、男相手に女の人が数で対面しても……
「おい豚野郎。誰が紅桜に触って良いって言ったんだ?あ?」
「いだ、いだだぁ!?」
「っ!?」
気がつけば私たちの後ろにも女の人が……え?何で顔にマフラーをかぶってるの!?
…一体誰!?
浴衣姿にマフラーを頭に被った人が知らぬ間にいて、男の人の腕を握りつけていた。
その人の握力が強いのか、痛みで私の腕握る力が弱まった。
「放しせっ!」
大声を発しながら男の手から力強く振り解く。
何とか男の人から逃れて距離を取る。
「豚野郎は息が出来ることだけでも感謝しろよっ!おらっ!」
「!!!……」
私が離れると女の人は男の腹部に思いっきり膝を叩きつけていた。
その衝撃で男の人は声を発さなくなった。
「あらら、人質に解放されちゃったね。形勢逆転かな?」
「ちっ……女のくせに生意気な!」
「こりゃダメだね。ちっひー、よろしく。」
「そのあだ名で今は呼ぶなっ!」
もう1人の男にも蹴り喰らわして、体制を崩した所に殴りを飛ばす。
圧倒的な力で男を退治した。
「紅桜ちゃん大丈夫だったー!?」
助けてくれた女の人達の中から私の声を呼ぶ人がいた。
「もしかして、百々姉!?」
暗くてよく見えていなかったけど近付いたら分かった。
と言うことは助けに来てくれたのは百々姉の同級生の人達だ。
「マフラーを被った人が助けてくれたから私は怪我してないよ。」
「そっか……ならよかった。」
「でも、樹さんが……」
「俺は大丈夫だよ。」
平然を装って立ち上がってた。
後頭部を殴られたみたいだから、すごく心配だ。
「まだ座ってないと……」
「そうだよ。樹くんは頭を殴られたんだよ。病院に行かないと!」
「平気平気。俺よりもその男2人をまずはどうにかする方が先だ。」
倒れてる男を指差す。
気絶しているのでびくりともしない。
「少年、そこは私たちが片付けておくよ。ほらみんな運ぶよ。」
百々姉の友達が男2人を運んでいく。
死体運び屋みたいな作業の速さにびっくりする。
「私はみんなに付いて行くから、紅桜をお願いね。」
「うん。任せて!」
「……バイバイ。」
マフラーを被った人も一緒に行ってしまった。
直接助けてもらったからお礼を言いたかった。
でも、最後に発した『バイバイ』は百々姉ではなく私に向かってだと思ったのは自信過剰かな?
「いや、3人とも酷い目に遭ったね。でも、もう安心して!私たちがいるから次同じことされても助けるから!」
「百々姉ありがとう。そして、樹さんごめんなさい。私が捕まってたから……」
「気にしなくて良いよ。元々男達があんな事をするのが悪いんだから。」
「でも、樹さんが殴られたのは私がいたからで、私がいなかったら……」
「紅桜ちゃん、そう言う事を言うんじゃないよ。」
百々姉が間に入る。
「男は女を守る事に誇りを持ってるんだから。彼にとって紅桜ちゃんが傷つかない事がとても大事だったんだよ。それが出来て喜ばしいのに、当の本人からそんなこと言われたらやるせないよ。」
「……うん。」
百々姉に諭される。
多分言ってることは間違いじゃないんだと思う。
でも、それでも私が1人で行動してなかったらこんな事に巻き込まれるはずもなかったんだから、どうしても罪悪感を持ってしまう。
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