撮影は終わったけど??
私たちの撮影は続いていき、最後は屋上で撮ることになった。
そこまで広い場所ではないけれど、樹と初めて会った思い出の場所。
思い返すだけで心臓の鼓動が速くなる。
「最後だからね、みんなの集合写真にしたいと思いまーす!」
副生徒会長に言われて、私達は座れそうな場所に腰を落とす。
樹さんと広瀬さんは座らず立つように出ていた。
「はい、行きまーす!5、4、1はい!」
変なカウントがかかりカメラのシャッターが下ろされる。
何度もフラッシュが湧いて、その度に目がカラカラになりそうになる。
「うん、うん、良さそうだね!」
問題なく撮影が終わる。
みんな撮られることに慣れて、スムーズに進行したお陰かも。
「今日はこれで終わりだね!撮影に協力してくれた人、ありがとう!」
解散の合図が出て、無事に撮影が終わったんだと心が落ち着く。
この後、残ってらないといけない事がある人はいるだろうけど、私たちはこれで役目が終わりだ。
「はぁ~、大変だったわ。」
「先輩お疲れ様です。疲れましたね。」
「2人ともお疲れ様。」
それぞれが労いの言葉を発する。
「3人ともお疲れ様!これは生徒会からのお礼だって!」
「はにゃ?」
黒瀬さんが何かを持って私たちの前に来る。
手にはビニール袋を持っていて、中には湿った物が入っていた。
「飲み物だよ。好き嫌いがあるかもだけど、受け取って欲しいな。」
ビニール袋の中からベットボトルを取り出して1人一つずつ渡される。
みんな同じと言う訳ではなく、中身はみんな違ってた。
「お礼なんてもらえる事をしたつもりは無いんだけど、ありがたく貰うよ。」
「私としては、報酬がしょぼい気がするけどね。」
「ぐびっ、ぐびっ、ぷは~。」
反応はそれぞれ。
満さんは何故かケチをつけてて、美和ちゃんはすぐさま蓋を開けて喉に流し込んでた。
「みんな反応が違うね。」
「そうだね。私達らしいかも。」
「貰ったものをすぐ飲むなんて、品がないわね。」
「お礼をもらって文句を言う方向方が品がないと思います!」
私たちはすみで2人を観察する。
変な言い合いに発展してて、ちょっとだけ面白かった。
ずっと見るだけには行かないので仲裁に入ったけど、これも気が抜けたからだと思う。
「紅桜ちゃん、お疲れ様。最後は一番速く終わったね。」
「い、樹さん!そ、そうですね。かなりスムーズでしたね。みんな慣れたんだと思います。」
樹さんが私の隣に立って声をかけてくれた。
その事はとても嬉しかったけど、心臓の鼓動が速くなって上手く喋れてるか心配になる。
「軽はずみにOKを出したけど、案外撮影は難しいんだね。」
「確かに、初めてそう思うかも。でも、慣れたらかなり簡単になりますよ!」
「そうなんだ。……そう言えば、紅桜ちゃんは経験者なんだよね。て事は、今のは経験談?」
「え?」
あれ?私がそう言うのやってたの樹さんに喋ったかな!?
そんな事絶対ないよね!?
だって、樹さんにそんな事言えないじゃん!!
何処から情報が漏れたの!?
「あ、あの、その情報は何処から?」
「委員長…黒瀬からだよ。」
黒瀬さーん!!??
どう言うことかな!?!?
「あの、その話って、もしかして広がったりしてますか?」
「いや、そんな事はないと思うけど。こっそりと教えてもらっただけだから。」
「そ、そうですか……。」
よかった~!!
広まってたら引き篭り案件だよ!!
「あ、あの、その事にはなるべく広めないでもらえますか?」
「そのつもりだよ。他人の個人情報だからね。」
「あ、ありがとうござます。」
「当然の事だよ。委員長にもきつく言っとくよ。」
「そうして貰えると助かります。」
樹さんは本当に優しいな。
それに比べて、黒瀬さんは残念な人だよ!
良いところもあるけど、口が軽い気がする!!
「そう言えば、今日の花火大会は誰かと行く事になったの?」
「花火大会?………あ、あぁ!」
樹さんに言われて、勉強の帰りに電車で話していた事を思い出す。
ただ、すっかり忘れていたので、誰か誘ったりしてない。
そもそも話題にすら上がってこなかった。
「実は、忘れてて誰ともその話をしてませんでした。」
「そうなんだ。」
「あの、もしよかったら、私も3人の中に入れて貰えると……。」
「全然良いよ。むしろこっちから誘った事だし。男だけでもむさ苦しいだけだからね。」
「それは言い過ぎですよ。」
「いや、実際男が3人集まった所でそんなものだよ。」
クスッと笑ってしまう。
何でか樹さんと話すと本当に笑顔になる。
「集合場所とかどうします?」
「駅前の予定だよ。時間は6時くらいの予定。」
「分かりました!」
予定を聞いて、スマホにメモを取る。
スマホを打つ手が踊っていて、自分が浮かれているのがよく分かった。
「俺はこれからクラスの奴らとやる事があるから、それじゃあ。」
「はい。夕方また会いましょう。」
撤収していく人たちを見て、樹さんもその中に入ってく。
もう少し話をしていたかったけど、さすがに呼び止める事はできない。
仕方ないけど、夕方までお預け。
「先輩?さっき、何の話をしてたんですか?」
「花火大会がどうのこうのって言ってたように見えるけど。」
2人に後ろから肩を掴まれる。
力が入っていて少し痛いかも。
「あ、あの?2人ともどうしたの?」
「いえ、先輩が仲良く男と話していたのでどうしたのかなって。」
「そ、それは…////」
「しかも、なんかデートみたいな約束をしているように見えてね?見間違いなら良いんだけれど。」
「い、痛いよ!?」
満さんの肩を掴む手が強くなる。
そこまで行くと本当に怖い。
「ちょっと2人とも!?さっきから何なの!?私何もしてないよ!?」
「本当ですか?デートの約束じゃないですよね?」
「ち、違うよ!?4人で花火大会に行こうっていう話をしてただけだよ!」
「4人って霜雪と樹とあと2人は?」
「広瀬さんと壱課さんだよ!」
「ふ~ん。」
肩への力が弱まる。
その事にホッとする。
「それで、どうして私たちを誘わなかったの?」
「それが、さっき言われるまで忘れてて。今日の事だから、当日に誘うのは良くないでしょ?」
「そんな事ないですよ!私なら当日でも全然大丈夫です!」
「今日は生憎空いてるわ。あのね、話してくれないと当日だろうと行ける行けないは話せないでしょ。」
2人の手が肩から離れる。
それを安心する気持ち2人への申し訳なさで胸が痛くなる。
「でま、もう3人と行くって言っちゃった。」
「それがどうしたの。気にしなくても良いわよ。それに、良い考えがあるし。」
「そ、そうなの?」
「ええ、だからあなたは3人と一緒にいなさい。むしろ、変な所で1人とかなっちゃダメよ。」
何やら満さんには作戦があるらしく、私は全貌を知らないその計画に乗っかる事にした。
「人がいなくなったし、私たちも帰りましょうか。」
辺りを見渡すと、片付けをしていた生徒がいなくなってる。
話してる間にみんな撤収したみたい。
「先輩、夜楽しみにしてますね!」
「あ、うん。」
「な、何でそんな微妙そう反応……。」
「美和ちゃんの『楽しみにしてますね』は、ちょっと、ね?」
「ね、じゃないですよ!……うう。こうなったら、先輩を悩殺して見せます!!」
何やら不穏な言葉を言い始める。
「先輩が私に欲情するような服を着て来ますから!」
「えっと、それはどう返答すれば良いの?」
「そんなものを着て来るなって返答すべきでしょ!」
「あっ痛っ!」
満さんが美和ちゃんの頭を叩いた。
本気ではないと思うけど、かなり痛そうにしてる。
「帰るって言ってるのに話を長引かせてどうするつもりなのよ。変なこと言わずに帰るわよ。」
「先輩、さよならです。」
美和ちゃんは満さんに連れて行かれる。
「そう言えば言い忘れてたけど、ちゃんと浴衣を着て来なさいよ?」
満さんが振り向き、そんな言葉を残して先に帰ってしまった。
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