撮影会です!?
3人で学校に向かうと、そこには意外な姿があった。
てっきり、生徒会の人たちと黒瀬さん、広瀬さんぐらいかと思ってた。
でも、何故か一クラス分の人数がグラウンドに集合していた。
「日にち間違えちゃったかな?」
「そんな事無いはずだけど…。」
「先輩、怖いです~。」
美和ちゃんは私の服の裾を掴んで後ろに隠れる。
私も想定外の人数に萎縮しそうになる。
「あ、3人が来たよ~!!」
環の中心から腕を振る人が現れた。
周りの人をかき分けてこちらに向かって来て、その姿を表すと納得した。
「黒瀬さん、久しぶり。」
「久しぶりだね紅桜ちゃん。」
勉強会以来の再会。
「これはどう言う状況なの?今日は写真を撮るって言う話だったはずだけど。」
「それが、何処からその話が漏れちゃって、どうせなら私たちのクラスみんなで撮ろうって言う事になっちゃった。」
申し訳なさそうに頭を下げる。
私たちが大勢の人数の人と一緒にいられないのを分かっているから本当に心から謝ってる。
だから、満さんも怒るに怒れない感じだ。
「あの馬鹿は何処にいるの?」
「馬鹿って、会長のこと?」
「そうよ。だって、どれだけ話が漏れようとあいつが許可しないといけないじゃない。つまり、今回の原因はあいつに変わりないから、首を絞める。」
眉間に皺を寄せて、右手には握り拳を作ってる。
かなり本気で締めるつもりらしい。
「その、会長なんだけど………」
満さんの回答に、広瀬さんは困ったような顔をする。
言いにくいことがあるのか、うまく口に出せないでいる。
「何?もしかして、あいつの肩を持つつもり?」
「そう言うわけじゃないんだよ?………実は、会長は来てないんだよね?」
「は?」
満さんから、赤く燃え上がる炎のオーラが立ち上っているように見えた。
「あいつ、私たちに怒られると思って逃げたの?」
満さんが地面に向かって足を落とすと小さなクレーターのようなものができた。
それほど満さんの怒りは頂点に達している。
「ちょ、ちょっと待って!?早とちりはだめだよ!?来てないのは、風邪を拗らせたからなの!!生徒会の仕事に遅れがあって、それを夜遅くまでやってたからなんだよ。」
「………そう」
満さんから出ていたオーラが小さくなった。
理由が理由だけに怒りがおさまったみたい。
「でも、若葉先輩が許可したことは変わりないんですよね?」
「あっ。」
美和ちゃんが言ってはいけない事を口にする。
それを合図にまた再燃する。
「それも誤解だよ!!」
すぐさま訂正が入る。
でも、満さんのオーラ消えない。
「許可を出したのは私たち生徒会なの。本当は撮影や加工編集を会長がやるって事で少人数でやる予定だったの。あの人は普通にスペックが高いから。でも、会長が風邪で倒れて話が変わって来ちゃったの。あの人がいないと私たち撮影も加工編集が出来ないから誰かに頼る必要があって、しょうがなしに私のクラスの許可を出したんだよ。」
必死の訴えをする。
その説明を聞いて、満さんのオーラが多少は少なくなった。
「あそこにいる人全員と触れ合う事はないから!ね、お願い!!」
「……はぁ、しょうがないわね。」
誠意のある謝罪を受け、なんとか落ち着いてくれた。
と言うか、夜宵先輩がグラウンドに集まった生徒全員と同等の戦力だった事に驚きを隠せない。
それに加え、私たちが大勢の人間の前に出れないから1人で全てをしようとしてたと思うとちょっと尊敬する。…流石にそこまで考えてないかな?
「紅桜ちゃんに黒咲ちゃんもごめんね。人が多くてやりずらいと思うけど、我慢してもらえないかな?」
「私は……仕方ない事だから、文句を言ったりしないよ。」
「私も満先輩のように怒ったりしません。」
「美和?」
「ひぃー!?……とは言え、怖いので、ずっと先輩の側に居させてください。それが条件です。」
「うん、今日の撮影は、紅桜ちゃんと一緒の分しか撮らないね。」
「…ふひっ!はいっ!!」
何故か感動シーンのような場面が、最低な下品極まりない戦略によって売られた現場に見えた。
実際、美和ちゃんの目は、獲物を捕獲した動物のように光ってた。
「本当に3人には感謝だよ!……と言う事で、彼らに挨拶は私からしとくから!会長から撮影場所と服装、シチュエーションの事を事細かく聞いてるから3人はポーズをとるだけの簡単な事をしてればいいからね!!」
目を煌びやかに輝かせて私たちの背中を押す。
一見、張り切っているだけに見えるけど、こちらもまた下賎な思考があるようにも思えた。
また私たちは口車に乗ってしまったのかもしれない。
「まずは紅桜ちゃんと満さんにモデルになってもらうから、校門の前に行こうね!黒咲ちゃんはそんな先輩の姿を見学しておこうね!」
校門の前まで背中を押される。
そこまで行き待っていると他の生徒がやってくる。
片手にカメラや三脚、ライトなど持って本格的に写真を撮るらしい。
そして、何も持たずにやって来た生徒もいた。
「紅桜ちゃん、久しぶり。」
「っ!ひ、久しぶりです、樹さん。」
学校でも何度か会っていたので、制服姿は見慣れているはずだった。
でも、いつもよりカッコよく見える。
周りに星が輝いているように見えて、ちょっと眩暈がしそう。
「紅桜ちゃん……おはよう。」
「広瀬さん……おはよう。」
さらに広瀬さんもやってくる。
勉強会もあったのに、未だに距離感が縮まらない。
ぎこちなさが残ってる。
「はーい、始めるよ!パンフレットに大々と載る写真を今から撮るからね!これ重要だから、少しでも気に入らなかったら何度も取るから!みんな気合い入れてね!」
副生徒会長を名乗る人に支持されて、周りのみんなが切磋琢磨と取り掛かる。
私と満さんの元に2人の生徒がやって来て、ヘアメイクさんのような事をしてくれる。
髪の毛とかあまり気にしてなかったけど、色々やってくれた。
ついでに写真撮影に関係ない髪用の香水を付けてくれて、その過程で化粧水の話で盛り上がって楽しめた。
逆に満さんは気まずそうだった。
話を振ってもらってるようだったけど、すぐに話を切るから会話が続かずお通やモード。
むしろ相手の女の子が可哀想なレベル。
「それじゃあ始めるよ!モデルの人は門の前に立って!」
呼ばれたので満さんと門の前に。
そして、もともと話にあった広瀬さんが出て来て、さらに樹さんも!
樹さんが写真撮影に出る事は聞いてなかったので口から心臓が出そうになった。
「立ち位置は一度男女交互にしてみようか。」
指示が出る。
脈拍が上がってるけど、ここではちゃんとしないとモデルを引き受けた意味がないのでちゃんと動く。
でも、隣に樹さんがいるとから本当に死にそう。
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