おじいさんと会いました!?
目が覚めたら、知らない部屋にいた。
和風の部屋で、少し可愛らしい人形が置かれているのが特徴。
目を覚ますと、なんだか目が痒くてちょっとだけ擦ってしまった。
目元を擦ると少し湿っていて、私は涙を流していたのが分かった。
どうして涙を流していたのか理由は謎。
でも、とても大事な気がした。
悲しい夢でも見たと言う簡単な理由ではない事は感じる。
泣かされのかもしれないけど、それともちょっと違うような?
「っ!先輩!?」
扉が開く音がしたと思えば、女の子が飛びついてきた。
どこかであった気がする少女は、私を放って喋り始めた。
「手が空いたので、先輩を見に行ったら倒れててびっくりしました。泣きながら倒れてて、近くに千秋がいて。すぐに先輩が何かされたんだって思って、急いで外に出して先輩を安全に休められるように布団を敷いとおいたんです。これぐらいでは先輩の傷を癒す事はできないと思ってはいます。千秋がやった分の責任は取らせます。」
訳の分からないことを感情的に喋る。
目の前の…私の知り合いの……いや、後輩の美和ちゃんを落ち着かせることにしよう。
マシンガンークは正直理解できなかったけど、現状の整理はついた。
私はいつの間にか眠ってしまったようだ。
覚えているのは、美和ちゃんがご飯を作りに行った直後まで。
それ以降の記憶がどうも怪しい。
なんだかモヤモヤがかかる。
多分、その時に何かあったんだ。
「美和ちゃん、落ち着いて。そんなにたくさん言われても分からないよ。」
「あっ、す、すみません。」
今度は平謝りをしてくる。
こんな事今までになかったから、相当焦ってるんだと思う。
「一つずつゆっくりで良いから話して。」
「まずは、すみませんでした!」
一番最初に出てきた言葉は謝罪だった。
何が起きたかの説明が来ると思って、そこは驚いた。
それに、美和ちゃんは料理をするために部屋を出て、それ以降の話だから美和ちゃんは関係ない気がする。
だから美和ちゃんが謝罪をする必要がないと思う。
「どう言う謝罪か聞いても良い?私の憶測だと、美和ちゃんに謝られる様なことをされてないと思うんだけど。」
「それは、間接的に関わってるからです!千秋…私のお兄ちゃんみたいな人のせいなので。」
「なら尚更だよ。間接的だろうと、美和ちゃんが何かしてないんだから。頭をあげてよ。」
「しぇんぱい…!!」
目に大粒の涙を溜める。
今にも泣き出しそうなのをすんでの所で留めている。
「女の子はね、泣いてる姿はブサイクなんだよ。だから、笑顔でいないとね。笑顔は誰でも美人に見えるから。」
「はひぃ!」
服の袖で涙を拭き取ってる。
それだと服が汚れてしまうから止めようとしたけど、勢いに負けて言えなかった。
「それで、千秋さんが私に何かしたのかな?」
「それが何をしたのかまでは分からないです。部屋に戻ったら、千秋が立ってて、先輩は気絶してて。でも、千秋がなにかしたから、先輩が倒れたとしか思えなくて。」
「それだけで千秋さんのせいにしたの?」
「は、はい。」
「それは良くないよ。私が倒れた後に千秋さんが来てくれたのかもしれないよ?」
「そ、れは………。でも、千秋は、先輩に嫌がらせをしてたし、絶対に何かしたんです!」
どうにか千秋さんを悪者にしたいらしい。
実際、私も記憶がないから何とも言えないし、気にしないのが一番かな。
「あっ、そう言えば、時間が…。」
「今は3時ぐらいです。」
「そんなに立ってたんだ。…せっかく美和ちゃんがご飯を作ってくれてたのに悪い事しちゃったね。」
「そんな事言わないでください!私の料理より、先輩の体の方が大事です!」
否定しようと思ったけど、もし私と美和ちゃんの立場が逆だったら同じことを言うと思う。
なら、これ以上否定するようなことを言うべきではないよね。
「作ったご飯はまだ残ってるかな?」
「残ってますよ。」
「なら、頂くよ。残って捨てることになったら、勿体無いからね。」
美和ちゃんは立ち上がって、嬉しそう走っていった。
機嫌が治ったようでよかった。
それにしても、記憶が戻らないのはどうにかならないんだろう?
物忘れって訳でもなさそうだし、それに今回の件以外の記憶でも忘れてる部分がある気がする。
それは最近の違和感でもあって、思い出した方が良さそうな気もするし、忘れていた方がいい気がする。
私のことなのに、まるで私でない誰かの事でもある気がするし、本当に頭がおかしくなってるみたい。
「おーい、美和。ちょっと、部屋に入るぞ。」
「ぇ?」
ノックもなしに扉が開く。
扉には70代後半程度の年齢に見えるおじいさんが立っていた。
油断していたせいか、多少着物が緩んでいる。
「お、こりゃすまねぇ。知らない別嬪さんが美和の部屋にいるとは思わなくてな。」
「あ、こちらこそ、人様の部屋で寝てしまっていてすみません。」
謝られたので、こちらも謝り返した。
「それで、お嬢ちゃんはどちら様?」
「あ、美和ちゃんと同じクラスで、霜雪紅桜って言います。」
「おぉ、お嬢ちゃんが美和の言っていた先輩さんか。いや、こんな所で会うとわ。して、どうしてお布団で寝ることに?」
「ちょっと気絶してしまってたみたいで、さっきまで美和ちゃんに看病してもらってたみたいなんです。」
「あの美和が他人の看病か。いやー、いい子に育ったのぉー。」
面白そうに笑う。
その笑い方は、どこか美和ちゃんに似ていて、尚且つ怖くも感じた。
「あれ?何でおじいちゃんがここに?」
「お、戻ってきたか。」
私の見えない所から美和ちゃんの声がする。
「ちと、美和に聞きたいことがあってな。じいちゃんの部屋にあったはずのワインを知らないか?」
「それって、おじいちゃんの部屋の入ってすぐの所にあったやつ?」
「そうそう。」
「あ、それ…料理に使っちゃった。もしかして、大事なものだった!?ご、ごめんなさい!」
「怒ってないぞ。いや、盗みに入られたのかと思ってな。」
怒った様子も無く、むしろ喜ばしそうに微笑んでいた。
本当に盗みに入られたかどうか聞きにきたようだ。
「あ、おじいちゃん、聞いてほしいことがあるんだけど!」
「言ってみ?」
「あのね、千秋が先輩を虐めるの。私が先輩を招待したのに追い返そうとしたり、私がいない間に先輩の事を襲って気絶させたりしんだよ!」
「ん。…そんなことがあったのか。うむ、その話…じいちゃんに任せな。」
「お願いね。」
「じぁ、じいちゃんは戻るよ。」
「うん!」
会話が終わるとおじいちゃんは戻っていたった。
戻って行きついでに、私の方へ向いて一言だけ言ってさって行った。
「お嬢ちゃん、美和を頼んだぞ。」
その言葉にはとても温かく、冷たいものを感じた。
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