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お兄さんと会いました?

通された部屋は6畳の畳からなる部屋。

可愛らしい人形が何個も置いてあり、和室にしては似つかない内装になっている。


「先輩先程はすみませんでした。」

「気にしないで。美和ちゃんが何かしたわけでも無いから。それよりも、今日は勉強をしにきたわけだし、早速やろう。」

「分かりました。ただ、少々言いにくいんですが、課題で分からない所が多くて…、。よければ、教えて貰えれば……。」

「私が教えれる範囲なら良いよ。せっかく2人でやるんだからね。」

「…なら、早々に悪いんですけど、教えてもらっても、良いですか?」


問題集を開いて見せてもらう。

一年前解いたことある問題でまだ記憶に残ってる。

これぐらいなら私でも教えてあげられる。


「これなら大丈夫。ゆっくりやっていこうか。」

「先輩、お願いします。」


私は前の週の勉強会であらかた終わらしてしまったので、美和ちゃんに勉強を教える方向で進めた。

美和ちゃんの場合は、地頭が良くない分、ちゃんと理解できていれば応用は簡単に解いてしまう。

だから、理解できるようにちゃんと説明してあげるのが私の役目なのだけれど、私自身、そこまで頭が良くないのでちゃんと教えてあげれるかが心配だ。


「ここはこうやればいいんでしたっけ?」

「合ってるよ。」


美和ちゃんの勉強を見ていると、もっと自信を持って取り組んでも良さそうだなと思うことがある。

聞いてくる時の大半は間違ったことをしていないので、理解はちゃんと出来ているみたい。

だから、私に聞かなくてもいいのにとは思うけど、私がいるからすぐに聞きたくなるのかな?


「美和ちゃん、今から質問を少なめで解いていこうか。」

「は、はい。でも、どうしてですか?」

「見ている感じ、聞いてくるところはちゃんと合ってるから、多分聞かなくても大丈夫なんだよ。むしろ、もっと自信を持ってやってみた方がいいよ。」

「分かりました!自信を持ってやってみます。」


美和ちゃんが自分だけで解いているのを横目で見る。

所々手が止まる事はあるけれど、直ぐに解決策を見つけて再度手を動かしていた。

この感じなら、応用の問題もいけちゃいそう。

私の出番も終わりかな。


安心した私は自分の問題集を開く。

終わっていないない所を開いて、問題を解いていく。

美和ちゃんが気になって、集中には欠けていたけど、問題が解けなくなるほどじゃなかったので問題はない。


1時間ぐらい経つと、美和ちゃんは手を止めた。

問題集をやり終えたようだった。


「先輩、終わりました!」

「よくがんばったね。採点してあげるよ。」


問題集と回答を受け取って赤ペンを走らせる。

教えながらしていた所となると、間違いはほとんど無かった。

1人でやっていた所も、基本的には正解ばかりだった。


「よく理解して解けてるよ。」

「本当ですか!えへへへ。」


顔を赤らめて、笑みをこぼしている。

そっと頭に手を置いて撫でてあげると、嬉しそうにしていた。


「お昼にはちょうどいい時間だね。休憩にしよっか。」

「はい!……。」

「?」


休憩に入ると、美和ちゃんが少しモゾモゾし始める。

何か言いたそうだけれど、お昼ご飯を食べないといけないので、立ち上がった。


「お昼ご飯を食べに行ってくるよ。」

「あ、えと、その、…」


美和ちゃんに呼び止められる。

どうしたんだろう?


「あの、先輩が良ければ、ここで食べていきませんか?」

「そんなことしてもらうのは悪いよ。」

「そうですか…。先輩のために頑張って料理の練習して来たのに……しくしく。」


嘘泣きっぽい仕草をしている。

ご馳走になるのは迷惑になりそうだから辞めておきたかったけど、美和ちゃんが嘘泣きをするほどなので、少し悩んでから了承した。


「先輩、ありがとうございます!!いつも以上に頑張ります!!!」

「任せるね。」


料理を練習してきたと言っていたので、美和ちゃんが作ってくれるみたい。

少しだけ親心的な心配と、変なものを入れないかと言う不安がちょっとばかしある。


「おいお前、ついてこいや。」


美和ちゃんを待っていると、扉の前に男の人が立っていた。

グラサンをかけていて、威嚇するように力強く仁王立ちをしている。

身長は高めでそれなりに声は低く、ドスをきかせていたのでヤクザのようにも見えた。

正直怖くて動けないと言うよりも、思考が停止して頭の中が真っ白になって何も考えられなくなった感じた。


「おいお前、話を聞いてるのか?ふざけてると痛い目見るぞ?」


二言目を言われて我に帰る。

停止していた脳みそが動き出した。


「す、すみません。なにか用事でしょうか?」


私の質問を聞くと眉間に皺がよる。

怒りのボルテージがちょこっとあがってしまった気がした。

そこでインターホンでのことを思い出す。

男の声の人から美和ちゃんがいないと言われた。

さらに、玄関で男の人が倒れていたのを思い出す。

この人、あの人たちと同一人物!?

って事は……


「あっ、もしかして、美和ちゃんのお兄さんですか?挨拶が遅れてしまいすみませんでした。お邪魔してます、美和さんと同じクラスの霜雪紅桜と言います。」

「名前ぐらい知ってる。それに、数時間前に聞いたしな。」

「やっぱり、同じ人。」


同じような声、同じ様な服装で直感的に言い当てていたみたい。

それにしても、美和ちゃんのお兄さんが私にどうしたんだろう?


「とにかく、ちょっと面貸せや。俺の声が聞こえねえのか、この尼が!」


男が一歩足を進める。

ポケットに入れていた手を出す。


「え、―――ぁっ。」


心臓の音がバクバク聞こえる。

サングラスからうっすらと見れる瞳は笑っていない。

このまま動かないでいると手を出されると直感した。


「いやっ…」

「あ?」


何か言葉を出そうとしていたけど、もう忘れてしまった。

目の前の物を恐怖の対象として見てしまうと、私の心はすぐに逃げ腰になった。

屈んで頭を抱えるように丸くなる。


「た、助け、て。」


怖い。怖い。怖い。

あの目が、私を見下ろしている。

あの日のように私を見下ろしている。

私を捕まえようと、目で捕らえてる。


誰かに助けを促すように、命乞いをする。

助かったと安堵していた自分に後悔した。


「もう、やめて。追いかけて、こないで。」


私は今、歳不相応な反応をしているかもしれない。

こんな歳でうずくまって涙を流すのはおかしいって言われるかも。

でも、怖くて助かりたくて、こう言うことしかできない。

私はお姉ちゃんに助けてもらわないと何もできない弱虫なんだ。


「助けて、氷柱姉。」

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