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今日は美和ちゃんと……?

部屋の中は少し甘ったるいブドウの香りが匂う。

目の前がゆらゆらと揺らいでいて、夢の中にいるみたいで気持ちがいい。


「先輩、どうして私と結婚してくれないんですか!?」

「ごめん、なさ…うぷっ…。」


肩を掴まれて前後に揺らされる。

視界が安定していないのに、これ以上体をら揺らされると体内のものが…。

この場には意識がおぼつかない私と、情緒がおかしくなった美和ちゃんしかいない。

もう、誰の手にも負えないカオス状況になっている。



8時間前……。


今日は美和ちゃんにお呼ばれして、勉強会をすることになった。

昨日も美和ちゃんから電話が掛かって、とても楽しみにしていると聞かされている。


立て続けに友達の家に出かけるとなると、百一々姉が少し心配な顔をする。

それと相反して、嬉しそうな顔もする。

分からないでもないけど、そろそろ私を子供として見て欲しくないなと思ってもしまう。


美和ちゃんのお家はまだ訪れた事のないけど、満さん曰く、満さんのお家より豪華だとか。

お金持ちの家という話だから、粗相をしないかちょっと心配だ。


「こ、ここ…なんだよね?」


教えてもらった住所とスマホの地図アプリが示す現在地を照らし合わせると間違ってはいないみたい。

目の前の家は一見は普通の家に見え……ない!?

何というか、ザ、和風と言った木造建築の一軒家。

内装はどうなってるかは分からないけど、外装はそのようなっているように見える。


ヤ◯ザ漫画とかに出てくるような、または汚い政治家が取引をするために訪れる旅館ような見た目の建物に驚きは隠せない。

唖然としてその場に立ち尽くして、数秒の時が流れる。


「……っ、ダメダメ。ここで立ち止まってたら、ただの不審者だよ。」


住所が間違っているわけじゃ無いし、インターホンを押して確認だけでもしないとね。


「あ、ここだね。」


インターホンを押して返答が来るのを待つ。

夏の暑さと緊張感で、汗が頬を伝うのが鮮明に感じ取れる。


「……どちら様ですか?」


沈黙が続いてから、初めて言葉を放ったのは低く冷たい声。

インターホンの向こうにいるのは男性のようだ。


「霜雪紅桜です。今日は黒咲美和さんにお呼ばれしたんですが、いますか?」

「美和に?……すみませんが、今は家を空けているのでお引き取りお願いします。」

「え?」


冷淡に言われて、声をこぼしてしまう。

声でしか判断できないので、話し相手が一体どんな顔で言っているのか分からない。


「あの、それは、美和さんは今はいないって事ですか?」

「はい。ですので、お引き取りをお願いします。」


どうしよう?

美和ちゃんから楽しみにしてるって言ってるのに、連絡もなしにどこか出かけるなんて考えられない。

これ以上何かを言ってもインターホン越しの相手には通じなさそうだし、離れることにしよう。


「今のところは帰らしてもらいます。美和さんが帰ってきたら、私が来ていたことを伝えておいてください。」

「分かりました。」


インターホンが切れる音がして、向こうの音はしなくなった。

そのことを確認すると、スマホを取り出して美和ちゃんの電話番号にかけてみる。


1回、2回、3回と呼出音が鳴る。

このまま出る事がなかったら、私に連絡できないほどの急用ができてしまったという事。

そうだったら仕方ない事だし、素直に帰ろう。


「……っ!」

「…もしもし、先輩ですか!?先輩から電話をかけてくれるなんて嬉しいです!!」


6コール目が終わる直前に美和ちゃんと繋がる。

向こうの声はとても明るくて、休養があるようには思えない。


「急に電話してごめんね。」

「そんな事ないですよ!!先輩から電話をかけてもらって嬉しいです!!…でも、どうしたんですか?もしかして、私のお家がわかりませんか?そろそろ来る頃だと思って、準備はしているので、場所さえ教えてもらえれば、迎えに行きますよ!」


????

美和ちゃんは元気そうに、今日の準備を終えて今か今かと待っていると言っている。

そうなると本当にどういう事だろう?


「実はね、美和ちゃんのお家の前までは来たんだよ?でも、インターホンを鳴らしたら男の人が出てきて、美和ちゃんは家にいないから帰るようにって言われたの。」

「なんですか、それ?!先輩はまだ家の前にいるんですか!?」

「まだいるよ。」

「ならちょっと待ってくださいね!」


電話の向こうからドタバタとうるさい足音が鳴ったかなと思うと通話が切れる。


「千秋の馬鹿!!!!!!」


目の前に家から怒鳴る声が鳴り響く。

その高い声は聞きなれないものではあったけど、記憶に似たものがある。


その声が風に流れていくと、次は何かが走ってくる音がする。

ガコンッと大きな音が鳴ると、さらに走ってくる音が大きくなり、私の前に現れる。


「す、び、ま、ぜ、ん、ぜ、ん、ば、い!?!?」

「美和ちゃん!?」


泣きながら飛びつかれて、バランスを崩しそうになる。

力もないから本当にギリギリのところで持ち堪えて、なんとか美和ちゃんを支える。


「危うく先輩を返らせるところでした!!すみません!!」

「うん、うん、大丈夫だからね?だから落ち着こうね?」


落ち着きを無くした美和ちゃんを宥める。

最初の出会った頃のような状態にデジャブを感じながら苦笑いを浮かべる。


「落ち着いた?」

「は、はい。先輩には恥ずかしい所をお見せしました。」


落ち着いたようなので、手を離す。

それを名残惜しそうに美和ちゃんが見るので変な気分だ。


「炎天下の中立ち尽くしてるのもあれだから、お家に招待してもらえるかな?」

「も、もちろんです!ど、どうぞ、着いてきてください!」


お家の中に通してもらう。

玄関に入るとスリッパを出されて、それに履き替えて部屋に通してもらう。

途中、お腹を抑えてうずくまる男性を見かけたけど、美和ちゃんは無視をしていたので私は触れられなかった。

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