2人が心配です!!
広瀬さんのスマホを借りて写真を注視する。
可愛い仕草を猫ちゃん達を見ていると、勉強の疲れが自然と取れていく。
「可愛いな。猫ちゃん達がイキイキしてて癒されたよ。」
「褒めてもらえてボクも嬉しいよ。」
十二分に堪能した後、広瀬さんに感謝をしてスマホを返した。
こんなに癒された後だと、勉強のやる気が戻って来る。
「それにしても、樹と委員長遅いな。」
「そうだね。飲み物を汲みに行っただけだよね?」
確かに、猫ちゃん達を見ていた時間は一瞬に感じたけど、飲み物を注ぐだけなら既に戻ってきてもおかしくない。
何か問題でもあったのかな?
「2人でコソコソしてたりな。」
「コソコソって?」
「それは、エロいことだろ?」
「え、エロい!?」
「は、破廉恥だよ!?」
耐性がない私は、顔を隠してしまう。
想像しただけで、顔が赤くなって火が出そうだ。
それと、嫌なモヤモヤが溢れてきて、感情の揺れ幅が大きくなる。
「冗談だって。2人揃って面白い反応するな。」
「耐性ないんだから、しょうがないじゃん!」
「ごめんごめん。冗談は置いといて、確認だけでも行った方がいいかもな。さっき、小さな物音がしてたし、怪我をしてるかもしれないな。」
小さな物音には気が付かなかったけど、あまり良くない予感はする。
壱課さんが立ち上がったので私も立ちあがろうとすると、扉が開いた。
「みんなお待たせ。あれ?立ち上がってどうしたの?もしかしてお手洗い?それなら下の…」
「いや、2人が遅いから何かあったのかなって。」
「っ、そんな事ないよ。さぁさぁ、飲み物とついでにお菓子も持ってきたから、もう少し勉強を頑張ろう!」
黒瀬さんは元気よく声を発する。
でも、声を出す瞬間、驚きと隠し事をしたそうな表情が出ていた。
無理やり元気を出している感じもするし、とても気になる。
それに、樹さんが若干機嫌そうな顔をしている。
あからさまではないけど、そんなオーラが見えてとれる。
さっきの時間に2人の間で何が起きたんだろう?
2人の事で中々勉強に集中できない。
チラチラと交互を見てしまうけど、2人とも気を紛らわせようと勉強に打ち込むばかり。
気になってしょうがないよ!!
何か喧嘩になりそうな火種を考えてみたけど、2人が怒るような事柄が思い浮かばない。
どうにかしてあげたいけど、今の私には無理だ。
考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。
「紅桜ちやん、大丈夫?」
「あ、いえ、大丈夫です。」
「でも、なんか難しい顔してたよ?」
広瀬さんが声をかけてくれて、心臓の鼓動が一瞬早まる。
2人について悩んでいるのがバレたのかと思ったけど、そのことはバレていないようだ。
「解き方が分からなくて、悩んでただけですよ。でも、ちょうど今分かったので大丈夫です。」
「そうなんだ。もし、分からなかったら頼ってくれていいからね。」
「その時はお願いします。」
2人を心配してた私が心配されるなんて、ダメだな。
それに、今日は勉強をするためにお呼ばれしたんだし、ちゃんと集中して勉強しないとね。
その後にちゃんと仲直りしてもらおう。
意識を目の前の問題に向ける。
かなり進んだので、前期末あたりの範囲までやってきた。
解きにくい内容だけど、コツさえを抑えばどうにかなるはず。
「ん~、ん~~。」
出来るはずと思ってやってみれば、思い通りに解けなくて唸ってしまう。
手を動かして、いくつかのパターンでアプローチをしてみたけど特に進展しない。
「紅桜ちゃん、大丈夫?」
私が唸っていると、広瀬さんがまた声をかけてくれた。
さっき頼っていいよって言ってくれたし、ここは素直に聞こうかな?
「すみまさん、ちょっと分からないところがあって、教えてもらえますか?」
「いいよ。見せて見せて。」
問題集を渡して目を通してもらう。
真剣な眼差しで問題と向き合って、少し見惚れてしまいそうだ。
「どうですかね?分かりますか?」
「あ、うん、これ、ね。……ごめん、分かりません。」
問題を理解した所、落ち込んでしまった。
これはどうにかフォローしたほうがいいよね!?
「やっぱり、難しい問題ですよね!仕方ないですよ!」
「偉そうに、言っておいて本当にごめん。」
「謝らなくても大丈夫ですよ。」
フォローしようとしたけどうまくいかない。
むしろ、悪化させているようでよろしくない。
「2人ともどうしたの?」
「黒瀬さん、ちょっと分からない問題があって…っ!?」
「ボクが助け舟を出したかったんだけど、情けない話、ボクも分からなくてね。」
「ちょっと見して。」
こちらに覗き込んできた黒瀬さんに問題を見せる。
自然と話に入ってきたので喋り始めは意識してなかったけど、黒瀬さんだと分かったら言葉が止まってしまった。
黒瀬さんは直ぐに問題集に目を向けたので、驚いているのは見られていないとは思うけど心配だ。
とにかく、今だけは変なそぶりを見せないように冷静さを保とう。
「これね。私がわかるから2人に教えるよ。これはまずね、ここから…」
黒瀬さんが分かると言うことだったので、2人して教えてもらった。
分からない問題でもあったので、集中して聞く。
話を聞いていると説明上手で問題が解けるというよりも、理解できるっていう感じ。
「こんな感じだけど、2人とも分かった?」
「解説がわかりやすくて助かったよ。」
「どういてしまして。また困ったら言ってね。」
黒瀬さんは自分の勉強に戻る。
そしてまた、私達も自分の問題集に目を落とす。
黒瀬さんに言われたことを意識しながら問題に立ち向かう。
「これなら解けるね。」
今回は悩む事なく、問題が解けた。
黒瀬さんに感謝だ。
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