勉強会は二人じゃなかったの!?
ついに夏休みに入り、寝てばかりの生活が始まってしまった。
ここ最近、百々姉と一緒に寝ているから、知らず知らずの間に抱き枕代わりにされてしまって、起きるのが遅くなってしまっている。
一緒に寝るのをやめようかと思ったけど、1人で寝るのは心細い。
今月は特に不安が大きくて言い表せない胸の苦しみを感じてしまう。
それは…
―――――――――――――
「も、百々姉、ちょっといい?」
「どうしたの?もしかして、勉強で分からないとこがあるの?」
「そうじゃなくてね、その、一緒に寝てほしいなって。」
「へ!?ね、寝るって!?」
やっぱり変だよね。
こんな歳でお姉ちゃんと一緒に寝るのはおかしな事だよね。
百一々姉が呆れて声が出なくなっちゃってるね。
「ごめん、おかしいよね。今のは聞かなかった事にして。」
「わぁ!!待って待って!?」
「ん?」
「一緒に寝よう!!」
「いい、の?呆れてたんじゃないの?」
「そんな事ないよ!紅桜ちゃんからお願いされると思ってなくてびっくりしただけだよ!私はいつでもウェルカムだから、好きな時に呼んでね!!」
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思っても見ない反応をしていたので、嬉しかった。
百々姉があんなに喜んでくれるなんてよかった。
だからこそ、今更やめようとも言えない。
でも、そのツケが朝に回ってくるとは思いも寄らなかったのでそこだけが難点かな。
唯一救いは一緒に寝ているから変な夢を見ることがなくなったことだね。
約束の日、抱き枕にされながら百々姉を無理やり起こす。
鼻を摘めば窒息死しかけて、目が覚めるってテレビで見たので真似をしてみた。
「起きない百々姉が悪いんだからね?」
「……ふぉが?!?!?!」
ちゃんと飛び起きてくれたので時間に余裕ができた。
久々に朝早くから起きて、入念に身だしなみを整えていく。
普段はほぼすっぴん状態だけど、今日だけはちょっとした化粧を着けておめかしを終わらせる。
黒瀬さんのお家に招かれてるだけなんだけど、どうしてもおめかしをしてほしいと頼まれてしまった。
黒瀬さんと私だけで勉強会するんだけど、今日は黒瀬さんのお家には誰もいないって聞いてる。
だから、おめかしをしなくても良さそうなんだけど、友達に1人でも会う時は常にしていたほうがいいのかな?
別に化粧を付けたりするのが嫌ではないし、コスプレをする感覚に近いから楽しいと思える。
「百々姉、行ってくるね。」
「なっちーの家だよね。もし会ったら、今度遊ぼうって言ってたって伝えといてね。」
なっちーさんとは合わないとは思うから、黒瀬さんに伝えておけばいいよね。
勉強道具はちゃんと持ってるし、ちょっとしたお金も持ち合わしてる。
携帯もポケットにあるから、忘れ物はないね。
再確認を終えて黒瀬さんのお家へ。
事前に行き先は聞いていて、困ったらマップアプリを使ったり黒瀬さんに電話で案内して貰ったりすれば良いかな。
寄り道をする事もないから、ゆっくり確実に歩こう。
「緊張してきたな。」
満さんのお家に寄った時もだけど、他人の家を訪れるとなると異様に緊張してしまう。
手に汗握るとまではいかないけれど、喋り方が片言になったり、動きが硬くなったりしてしまう。
目的の場所に着くと2階建ての一軒家があった。
比較的綺麗な家で、庭の手入れがきちんとされている。
インターホンを鳴らすと、黒瀬さんらしき声が聞こえた。
「どちら様ですか?」
「紅桜だよ。」
「来てくれたんだね!玄関開けるよ!!」
インターホンが切れる音がすると、家の中から走ってくる足音がした。
その足音はだんだん大きくなり、勢いよく扉が開いた。
「待ってたよ!さあさあ、入って入って!!」
「う、うん。」
普段よりも高めなテンションに蹴落とされそうになる。
「お邪魔します。」
「どうぞ、どうぞ。」
黒瀬さんに促されてお家に入れてもらう。
靴を脱いでいる時ふと気がついたけど、男の人が履きそうなスニーカーが2つほどある。
お兄さんか弟さんのかな?
「飲み物はコーラとオレンジどっちがいい?」
「オレンジにしようかな。」
「了解。2階に上がって直ぐのところに私の名前のプレートがかかった部屋があるから、そこで待ってて。」
無防備にも1人にしてしまうあたり信頼してもらってるって事なのかな?
言われた通りに階段を登って2階へ上がる。
可愛く装飾されたプレートに子供が書いたような柔らかい字で「未菜千」と書かれている部屋があった。
一応他人の部屋なので誰もいないと分かっていながらもノックをかける。
すると、誰もいない部屋から声がした。
「戻ってきたみたいだね。」
「いきなり出ていったけど、宅配でも来たのか?」
「自分の部屋なんだからノックしなくてもいいのに。」
聞き覚えのある声で、体が固まる。
今日は誰もいないと聞いていたのに、男の人が来てて、しかも相手は知り合い。
それに加えてこの2人が来ているということはもしかして……!?
思考を巡らせていると、またインターホンの音がした。
聞き耳を立てるように息を殺して玄関の方の声に集中した。
玄関から黒瀬さんが楽しそうに話す声が聞こえる。
私の時と同様に高めのテンションで相手はちょっと引き気味だった。
でも、帰ったりする事なくお家に入ってきた。
そのまま階段の登る音がして、登って直ぐのとこで話を聞いていた私は見つかってしまった。
隠れたりできればまだよかったんだけど、時間が無かったのと隠れる場所がないので顔を見合わせてしまう。
「あれ?紅桜ちゃん?」
「ひ、久しぶり、です、樹さん。」
心臓の鼓動が早まっているのを感じながら、なんとか挨拶を口にする。
落ち着いて、落ち着いて、と自分に言い聞かせて次の行動を考える。
でも、考えようとすればするほど頭が真っ白に染まっていく。
「今日はどうしてここに?もしかして委員長に呼ばれたの?」
「は、はひ。黒瀬さんに、勉強会をしたいって、言われてて……。」
「俺たちもそうなんだよね。でも、今日は4人でって聞いてたんだけど。」
「そう、なんですか?私は、2人でって、聞いてました。」
「てことは委員長が仕組んだのか。」
なにやら黒瀬さんが私たちに内緒で、何かをしようと思ってるみたいだ。
樹さんと会えて嬉しい気持ちの反面、ドキドキが止まらなくなるから苦しい。
感情がぐちゃぐちゃにになっちゃう。
「あれ?紅桜ちゃんまだ部屋に入ってなかったの?それに樹くんも、立ってないで部屋に入っていいよ。」
「入らせてはもらうけど、話は聞かせてもらうよ。」
「それは、お手柔らかに。」
悪びれた様子もなく、ニコッと笑って部屋に入るように促された。
部屋の中には既に壱課さんと広瀬さんが座って待っていた。
「あれ?どうして紅桜ちゃんが?」
「黒瀬さんにお呼ばれしまして……。」
「そうなの?」
「うん!サプライズとして女の子1人呼んだんだ!喜んでくれ男子の諸君!!」
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