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満さんのお家にお邪魔します!!

クレープを食べた後は、帰り道が同じ満さんと美和ちゃんと一緒に帰る事になった。

樹さんも途中までは一緒だったらしいけど、気を効かしてくれて違う道を通って帰ってしまった。

残念だけど、今の私には樹さんと帰る事はハードルが高いみたい。


「はぁ…。」


帰路に辿る途中、ついため息が出てしまう。

後悔しても意味がないのは分かっているけど、ついつい悩んでしまう。


「先輩、ため息が多いですが、何かお困りですか?」

「ごめんね。美和ちゃんが気にするほどの事でもないから。」


心配させてしまったことに罪悪感が出る。

でも、自己解決できなくて、どうしようもないほどに落ち込んでしまう。

そんな事をしてるから、周りから心配されてしまうのに、理解してるのに直せない。


「もぉ、ため息ばっかり出して、やめなさいよ。こっちまで気分が悪くなるじゃない。」

「ご、ごめんなさい。」


私の様子を見かねて満さんが声を上げる。

美和ちゃんに心配されない様にと思っていた矢先にやらかしてしまったので心が痛む。


「霜雪、帰りが遅くなる事、親に言っておきなさい。」

「え?」

「美和、あんたもよ。私の家で勉強するからとか適当な理由をつけてね。」

「??満先輩突然どうしたんですか??」

「口答えせず、ひとまず連絡!!そのあと私の家に来るのよ!!」


私と美和ちゃんは満さんの気迫に押されて、それぞれの家に連絡する。

百々姉に連絡すると、すごく心配されてしまった。

帰りが遅くなるなのが、心配でたまらないらしい。


誘拐されてしまった身としてその心配は心苦しいほどだ。

でも、満さんが帰りは車で送ると電話越しに聞こえる様に言ったので何とか許してもらえた。


美和ちゃんの方は、両親同士の仲がいいおかげか直ぐに許してもらえていた。

先輩に勉強を教えてもらえると言う点も実は大きかったりするのかもしれない。


満さんが若干怒り気味なのもあり、口数が少ないまま彼女の家に着いた。

2回目なので、多少は緊張が解けているけど、友達の家なので特別な感情が胸を動かす。


「あら、また来てくれたのね!どうぞ、上がってね。」

「お邪魔します。」


満さんのお母さんは、また来てくれた事にとても喜んでくれて、好きなものがあったら何でも出してきそうな勢いでおもてなしをしてくれようとする。

親のそんな姿を見て、鬱陶しそうに満さんがはらい、軽い挨拶だけになってしまった。


満さんの案内で自室に通してもらう。

前回はリビングだけだったので、満さんがどれほど心を開いているのか分かった。


「二人とは大事な話があるから、ママは入ってこないでね!」

「えー!ママもお話を聞いていたいわ。」

「子供同士の話し合いに親が聞いていたら、話しづらくなるでしょ!3人だけで話すから、絶対入ってこないでね!」


親との会話を聞かれるのが恥ずかしいのか頬が赤くなっている。

指摘してしまうと怒らせるので言わないけれど、微笑ましく思えた。

家族との関係が仲良さそうで、とても羨ましい。


「さぁ、ママにはキツく言ったから、聞かれないわよ。だから、腹を割って話しましょう。」

「話すって言っても、何をかな?」

「決まってるでしょ。あんたについてよ。とぼけるのは大概にしなさい。最近のあんたを見てるとイラつくのよ。美和もそう思うでしょ?」

「私はそんなこと……」


私の方を見て、その後に続く言葉を止める。

気を使って、あえて言うか迷っている。


「そんなわけないでしょ。それに今はこいつのために厳しい事を言うべきよ。あんたがこいつのこと好きなら、言ってあげるべきよ。優しさと甘さは違うのよ。」

「それでも私は、先輩を見ててイラつくことはありまん。でも、心配になります。考え事ばかりしていて、ため息をついていつも心ここに在らずの状態です。満先輩の様に、私も先輩の役に立ちたいです。」

「満ちゃん…。」


後輩にここまで言わしてしまい胸が張り裂けそうだ。

不甲斐ないばかりかこんな事までさせてしまい、頭が上がらない。


「霜雪、話してくれるわよね?」

「うん。ここまでしてもらって、シラを切るわけにはいかないよ。」

「よかったわ。なら最初に聞くけど、あんた遠山に何されたの。」

「何もされてないよ。」

「は?話してくれるって言ったわよね?それなのに嘘をつくの?」

「違うの。本当に何もされてないの。ただ話をしただけで、樹さんにドキドキ、してしまうんだよ。私も訳がわからないけど、顔を近づけられるだけで鼓動が早くなって、顔が熱くなるの。何も考えられなくなって、逃げ出したくなるの。それなのに、樹さんと一緒にいたいって思うの。」


樹さんに向けてしまう気持ちを打ち明ける。

恥ずかしいのに、気持ちを吐きだる事が楽に感じる。

私は今、とても嬉しくてしょうがない。


「つまり、樹に何をされたわけでもなく恋をしてしまったのね?」

「分からない。最初に会った時はそんな気持ちもなくて、2回目に会うまでそんな気持ちを持つことはなかったんだよ。自分でもありえないと思ってる。でも、2回目の時に、意識してしまった。美和ちゃんから好きな人のタイプを聞かれて、一番に樹さんが思い浮かんで、その直後だったから余計に考えてしまった。私にとって樹さんはどんな人なのだろうかって。考えれば考えるほど、樹さんの知らないはずの笑顔が浮かんで、優しさや楽しさが、知らないはずの樹さんが思い浮かんだ。」


長々と語ってしまう。

最初は話そうとは思っていなかった所まで、自分を全て曝け出してしまう。

2人だから(・・・・・)、迷わずにしゃべる事ができた。


「私は、一目惚れしてしまっていたのかもしれないと思ったよ。でも、それはありえないって、あってはいけないいんだって気持ちがあって、ぐっちゃぐちゃになって訳がわからなくなって……」


2人は静かに聞いてくれる。

その姿勢がとてもありがたかった。

話しやすくて、落ち着いて考えやすかった。


「自分では、どう接すれば良いのかわからなくなって、最近はそればっかり考えてしまってたの。二人にはごめんと思ってる。心配ばかりかけて良くないとは思ってる。でも、止められないの。この気持ちは早くどうにかしないといけないって、思ってしまう。」


話し終えると2人の顔は表現しづらいものになっていた。

真剣に考えてくれるからこそ、後の言葉を慎重に選んでいるようにみえる。


「あんたがいろんな思いを抱えていたのは分かった。私は遠山に脅されたりしてると思ってたから、ひとまず安心したわ。」

「え!?」


満さんから想像していなかった言葉が出てくる。

驚きを隠せず、目が飛び出る。


「だって、遠山に会うたび体が反応してたし、言葉が片言になるからそうなのかと思ってたわ。」


客観的に見て恋する乙女だなと思っていた自分が恥ずかしくなる。

全然客観的に見れてなくて、自信無くなるよ。


「先輩、ひとつ聞いて良いですか?」

「いいよ。」


真剣な眼差しで、美和ちゃんが聞いてくる。

彼女の目は鋭く、冗談をきいてきそうにない。


「先輩は、結局のところ、遠山先輩のことが好きなんですか?」

「意識はしてるよ。でも、これが恋なのか分かってないの。」


私の返答を聞き、美和ちゃんは体を震わせる。

何か怒らせてしまったかもしれないと、縮こまってしまう。


「せ、先輩を、たぶらかす男が、が、が、、、、」


怒られると身構えていたのに、美和ちゃんの口から出たのは違う話。

むしろ、樹さんの事を悪く思っている様な?


「先輩に、馴れ馴れしく話していて、おかしいとは思ったんです。先輩のことが余計に心配です!……遠山先輩を燃やしましょう。」

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