保留にさせてください!!
樹さんと話してからというもの、心臓の鼓動が大きなままになっている。
会うのは2回目なのに、自分の変化に戸惑いを隠せない。
その変化を満さんが気付けないはずもなく質問されてしまう。
「霜雪どうしたの?」
「……」
口を開かず考え込んでしまう。
自分でもうまく言葉にできない。
むしろ教えて欲しいぐらい頭の中が混乱している。
「??一体どうしたのよ?……そういえば、遠山と話してたわよね?何か言われたの?」
「っ!」
満さんから彼の名前が出て心臓が跳ねる。
樹さんから名前を呼ばれた事を思い出してしまう。
呼び捨てにされた事が頭の中で何度も繰り返されて顔が熱くなる。
こんな事今までに経験が無いから余計に訳が分からなくなる。
「本当に何か言われたの?」
「ち、違うよ?!な、なにもなかったよ?!うん、本当に、何も無かったよ。」
自分に言い聞かせるように答える。
呼び捨てにされたからって、顔を赤くする事自体おかしな事なんだよ。
そんなの満さんにバレるわけにはいかないし、あり得てはいけない。
「顔も赤いしどうしたのよ?まるで、遠山に……!?」
満さんが立ち止まる。
口が開いたまま体が震えて、何かに気がついたように口に手を当てていた。
「み、満さん?」
声をかけると返事はない。
声が発せれ無いほどのショックを受けたように見えた。
そして、私を見る目が変化したようにも見えた。
心配になるほど突然の異変に私も動けなくなる。
満さんは今の私の状態を的確に言い表せるような気がして怖かった。
それを聞いたら私は後悔しそうでやめてと言いそうになる。
そんな私を置いて満さんが動き出した。
いきなり両腕を掴まれて顔の距離が近くなる。
「あんたは他人を恋愛感情で見た事ないって言ってたわよね?それって、逆に言えば自分が無意識にしていた場合も気づけていない事よね?となれば、あの遠山ってやつを無意識に恋愛感情で見ていてもおかしくないわよね?」
鬼の形相で問い詰めてくる。
いつもより威圧があって他の意味で怖いと思ってしまう。
それと同時に満さんの言葉を否定したいと思う気持ちがあり何とも言えない感情に苛まれる。
だって樹さんとは2回目でまだお互いを知ったばかりの状態。
それで恋愛感情を持ち合わせるなんて有り得ない、はず。
もしそんな事があるとすれば、一目惚れみたいなもので……
「////〜〜〜////」
声にならない悶えるような奇声が漏れる。
一目惚れという一言が浮かぶだけで、樹さんの知らない色々な表情が脳裏をよぎる。
特別な感情を抱いていないと思っていたのに、私は、私は……
「ごめんなさい!」
訳が分からなくなり、満さんを振り解いて走り出す。
トイレはすぐそこだったので、個室にかけんだ。
『違う、私はそんな事…』
恋愛感情を持っていないと信じたい。
私と彼は普通の友達。
そう言い込ませるように念じ続ける。
どうしてか分からないけど、彼にはそういう接し方をしてはいけないと思った。
それは彼に対して侮辱のような行為であるように思えて仕方がなかった。
樹さんは魅力的で優しさのあるとても良い人である事は代わりない。
付き合いも良さそうで、趣味とかが合いそうな親友にもなれそうな人。
それこそ告白をすれば、すぐに付き合ってくれてとても楽しい毎日を過ごせるような。
最後のは言い過ぎかも知らないけど、それぐらい彼を好意的に見ていた。
そんな意識をしていたつもりはなかったのに、今になってそういう考えが出てくる。
本当に無意識下で考えていたのかも知らない。
『それでも一目惚れって〜~///』
自分一人で恥ずかしくて転げたくなる。
自分で自分を恋する乙女なんて表現したくないけれどそう言われてもおかしくない。
今の私は本当に熱で犯されてバカになっているかもしれない。
結局、その後満さんに声をかけられても返答できず個室にこもってしまった。
授業終了のチャイムが鳴るまで悩み続けて、何とか考えを落とし込み外に出れた。
今回の事は一旦保留して何も考えない事にする。
それが唯一の回答だった。
「先輩大丈夫でしたか?」
トイレから戻ると美和ちゃんから声がかかった。
本当は一番会話をしたくなかったけど、相手からされればそういう訳にはいかない。
「わ、私は大丈夫だよ。」
「でも、満先輩は体調が悪くなって苦しんでるって言ってました。まだ辛かったら寝てて良いですよ?なんなら私付いてますよ?」
満さんから話を聞いたと言われた時は冷や汗をかいてしまった。
美和ちゃんとはタイプの人間について話していて、それこそ好きな人はいないと話していた。
それなのに本当はいるかもしれないと気づいてしまった。
嘘をついてしまいとても罪悪感があったけど、満さんはその事について何一つ話してはいなかった。
私のことをとても心配してくれて、横になるように促してくれて。
人間として出来すぎてて先輩はとても泣きそうになる。
「美和ちゃん、そう言うこと言ったらダメだよ。トイレで体調が悪くなるくなるって言ったら、生理しかないでしょ?そう言うのはあまり聞かない方がいいんだよ?」
「そ、そうなんですか。先輩すみません、気が利きませんでした。」
何故か美和ちゃんに謝られてしまう。
いい後輩を持ったと感動していただけに、ちょっぴり切ない。
むしろ、純粋な声かけに対して、整理がどうこう言う方が倫理観がなっていない。
夜宵先輩はどこまでもセクハラ先輩だった。
突然満さんも睨んでいた。
せっかく美和ちゃんが心配してくれたので横にならせてもらった。
頭を使いすぎて疲れていたのはあった。
一番は切り替えるために、脳のリセットをしたかったからだけど。
何故かやたらと美和ちゃんが隣で寝たいと言われたけど恥ずかしかったので却下した。
でも、無理矢理入ってきたので結局は二人で寝る事になった。
睡魔が早く襲ってくれたのでものの数秒で眠る事ができた。
人生で一番快適に眠れて喜ばしいことだった。
ただ一つの難点としてその夢の内容が樹さんと初夜を迎えそうになるものだった。
もちろん拒むこともなく、受け入れ態勢で本格的なメス堕ち状態。
夢の中で自分をコントロールできなかったので本当に危なかった。
後一歩早く起きなければ子作りが始まるところだった。
隣に寝ている美和ちゃんが噛み付いてこなければ本当に私は堕ちていたかもしれない。
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