タイプの好みが知りたいです!
夏の暑さがさらに増していく。
うちの学校は水泳の授業が無いので、暑さを凌ぐ方法がエアコンの効いた部屋にいる事以外にない。
「先輩、勉強教えてください!」
「どこが分からないの?」
美和ちゃんに質問されて問題を見てみる。
去年やった事のある問題で、解き方もなんとか覚えてる。
これなら私なら答えれそうだ。
「これはね、ここを……」
記憶の通りに解いていく。
難しい問題ではあるけれど、コツを掴めば解けるのでそのポイントもついでに教えてあげた。
「先輩、ありがとうございます!!」
「覚えてただけだよ。」
「いえ、説明もわかりやすくて、満先輩に比べてとても理解しやすかったです。」
「そう言う言い方はダメだよ?教えてもらってるんだから、言葉は選ぼうね?」
「は~い。」
私を頼ってくれてるから、嬉しい。
だけど、近くでこっちを見ている満さんに睨まれてるからこう言い方をしないといけない。
そうしないと、怒りの矛先がこっちに向いてしまう。
「みんな試験勉強を頑張って、お姉さんもやる気が出てきたよ。」
「あんたはやる気がなさすぎるのよ。」
「あはは…」
やっと本腰が入った夜宵先輩。
さっきまで落書きばかりして一向に勉強をしなかった。
生徒会長である事実を知ってから、もう少し真面目な生徒な場面を見してほしいと思ってしまう。
「唐突な質問なんですが、先輩の好みって何ですか?」
「料理の事?それなら特に好き嫌いが無いから何でも美味しく食べるよ。」
本当に唐突な話だね。
一体どうしたんだろう?
「そうなんですね。……って、違いますよ!その、彼女彼氏にしたいタイプです!」
「彼女、彼氏?ど、どうなんだろう?」
料理の事だと思っていたので、その返答に困る。
唐突と言うか、何で試験勉強中にって感じだ。
「先輩は男子のお知り合いが居るみたいですし、その中に好きな人とか居るのかなって。」
「男子の知り合いがいないわけでは無いけど……」
男子と言われて一番最初に思い浮かぶのは樹さん。
次はこの間あった広瀬さん、最後に壱課さん。
この中で彼氏にしたい人がいるかと言われれば悩んでしまう。
「タイプの人って言われるとどうなんどろう?意識した事ないから。」
「そうなんですか?なら、女の子はどうですか?わ、私みたいなのはダメですか?」
「美和ちゃんは好きだよ。子犬みたいに懐いてくれるから。」
「こ、子犬ですか…」
「わ、悪い意味じゃないからね?」
明らかに落ち込んでしまった。
子犬で例えるのは良くなかったかな。
「それなら満先輩のことはどうですか?」
「!」
「満さんも好きだよ。なんだかんだで周りのことを考えてくれてるから。」
「……。」
「それなら若葉先輩はどうですか?」
「私の事呼んだかな?」
夜宵先輩が反応した。
「夜宵先輩を呼んだわけではないので、勉強に戻ってください。」
「えー、お喋りしようよ。」
「勉強をやり始めたばかりなので、もう少し頑張ってください。」
ここまで言うと素直に言うことを聞いてくれた。
悪い先輩ではないんだけど、変態性が表に出過ぎててあまりいい気はしないな。
「無いね。」
「ですよね。若葉先輩ですもんね。」
「女性らしさをとは言わないけど、上品さが無さすぎるよね。」
2人顔を合わして同じような言葉が出る。
やっぱり、日常的に夜宵先輩の変態性を見続けた結果、他の生徒と同じように見れない。
「そろそろ勉強に戻ろっか。」
「分かりました。」
目の前の問題集に目を向ける。
目標のページが今のところで後少しで終わる。
だからおしゃべりをしてしまったんだけど、ちゃっちゃと終わらせよう!
意気込んではみたものの特に難しい所もなく、すぐに終わってしまう。
もう少し進めようかなと思ったけど、お手洗い行きたくなったので部屋を出る事にした。
「お手洗いに行ってきます。」
「私も行くわ。」
「了解だよ。先生が来たら言っておくよ。」
夜宵先輩に伝言して、満さんと一緒にお手洗いへ。
私の中では満さんは誰かとお手洗いに行くのは好きじゃ無いのかと思っていて驚いている。
「あんた、美和と話をしてたじゃない…」
「ふ、ふぇ?!」
廊下を歩いていると、満さんが声をかけてくる。
内容が美和ちゃんとの事なので、何を話すのか何となく想像できてしまい変に驚いてしまった。
「な、何でそんなに驚くのよ。」
「あ、いや、満さんはそう言う話しないと思ってたから。」
「私だって恋バナの一つや二つするわよ。」
そんな雰囲気はなかったのでやっぱり驚いてしまう。
『一人で生きていけるし、男子なんて汚らわしい』とか言ってコイバナに参加しない人だと思っていた。
「それでその、本当に好きな人はいないの?」
「そ、そうだね。意識した事ないから、多分そう言う事だと思うよ?」
「でも、男子の友達で家にいれる人もいるんでしょ?」
「??そんな事ないよ?男子の友達はいるけど家になんて入れないよ?私女の子で一人暮らしだったから、男子を家に入れて襲われるかも知らないし。」
「???」
満さんが混乱してる。
誰から話を聞いたのか知らないけど、私は女だし、百々姉がいるから男子を呼べない。
「本当に呼んだ事ないのね?」
「そうだよ?」
必要以上に真偽を確かめてくる。
そんなに気にしてどうするんだろう。
「あれ、満ちゃんと紅桜ちゃんだ!」
階段の近くを通ると、上の方から声がかかった。
見てみると、黒瀬さんと樹さんがダンボール箱を持って降りてきていた。
「黒瀬じゃない。それと…」
「そっか、樹くんとは初対面だったね。」
満さんは樹さんとは面識がないから睨むように見ている。
悪い人ではないのでガンを飛ばすようなことはしないでほしいな。
「黒瀬さん、お久しぶり。樹さんもお久しぶりです。」
「2人はそいつのこと知ってるみたいね。」
「私は屋上で偶々会う機会があって……」
私は出会ったきっかけを話した。
優しい人だから、満さんも気に入ってくれると思う。
「ほら、前に話した例のクラスメイトだよ。」
「あぁ。満散琉よ。黒瀬から多少話は聞いてるわ。」
「こんにちは、遠山樹です。」
敵視するような事はなく、普通に話を交わしていた。
黒瀬さんから話を聞いていたようなので、そこまで警戒していないのかも。
「2人は重そうな物持ってどうしたの?」
「これ先生に頼まれちゃったの。」
「あ~…」
黒瀬さんは委員長だって聞いてるし、先生に指名されちゃったのかな。
樹さんも優しい人だから一緒にって感じかな?
何故か胸がざわつくな。
「黒瀬、ちょっとこっちに来てくれる?確認したいことがあるの。」
「何々?」
2人して端に寄って内緒話を始める。
聞かれたくない内容かも知らないので聞き耳を立てたりはしなかった。
「紅桜ちゃんも混ざらないの?」
「呼ばれてないから、混ざらない方がいいと思います。」
「2人で内緒話だから、そうだよね。それならこっちも話しない?」
こっちも2人で秘密の話する事に。
でも、樹さんと顔を近づて話すとなると、胸の鼓動が早くなる。
何故か顔まで熱くなっている気がした。
「紅桜ちゃんが怪我したって聞いたんだけど大丈夫だった?」
黒瀬さん経由からか耳にしていたらしい。
入院してた事は知らなかったみたいなので、そこまで酷くなくて後遺症もないと説明した。
「よかった。俺が心配するまで無かったみたいだね。」
「そんな事ないですよ。心配してもらえる事自体ありがたい事なんですから。」
樹さんが心配してくれてて心が浮つく。
いつもより機嫌が高調しそう。
「そう言えば、例の件どうなったかな?紅桜からの連絡は合ったりする?」
「っ!」
紅桜と呼び捨てにされて心臓が跳ねた。
慣れない呼ばれ方、声のトーン、彼から名前を呼ばれただけで照れ臭くなる。
「やっぱり、あれから連絡ないんだね。」
「は、はい。」
何のことか分からないけど、いきなり呼び捨てをされてそっちに気がとられていたせいで適当な返事をしてしまった。
樹さんは勝手に自己解決したみたいでよかったけど、話を聞かずに返事をしたのは良くないよね。
「2人で話してごめんね。」
「霜雪、2人の邪魔をしたらいけないから行きましょう。」
2人は内緒話を終えると早々に立ち去ろうとする。
まだ樹さんと話していたかったけど、荷物を持たせたままなのも良くないので満さんの言う通りここでお別れした。
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