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姉同志の話し合いです!!

氷柱(ひち)えもん助けて~!!」

「誰が氷柱(ひち)えもんよ。気安く話しかけないでくれる?」

「そんなこと言わないでよ。私たち親友でしょ?」

「赤の他人ですけど?」


大学から帰ってみたら家の中に絶賛絶交中の百々の姿があった。

不法侵入で連絡しようと思ったが、その隙を与えずに縋り寄ってきた。


「本当に助けてよ。このままだと紅桜ちゃんに示しがつかないよ。」

「あら、そう。そのまま嫌われたら?」

「そんなこと言わないでさ、助けてよ。」


振り払おうとしても必死にしがみついてくる。

そこら辺のゴキブリなんかよりもしぶとい。

玄関でこんなことされていい迷惑なので仕方なく話を聞く事にした。


お互い椅子に腰掛けて机を挟んで向かい合う事になった。

百々に事情を聞くとどうやら昨日の夕ご飯を失敗して、なおかつそれを無理して食べさせたとか。

完全に有罪(ギルティ)、死刑。


「そんなもの自殺して償え。」

「まだ生きたいよ〜!!昨日は偶々なんだよ!!普段は自炊してて料理はできるんだよ?でも、つい気合が入りすぎちゃって失敗したんだよ。だから、今日は紅桜ちゃんの好きな物をお詫びとして作ってあげたいんだよ。」

「自炊ね。どうせカップ麺とかでしょ。」


と思ってみたけど、どうやら違うみたい。

人差し指を左右に揺らしてチッチッチと苛立つ仕草をする。


「これでも紅桜ちゃんのお嫁に行けるように料理は頑張ったんだよ。結婚後も氷柱ちゃんがいるから紅桜ちゃんはそっちで満足するかもだけど、私の手料理で喜んで欲しいんだよね。」

「誰がどこのお嫁に行くって?それに結婚?」

「あ、冗談です。嘘です。間に受けないで。」


ちょっと暗い声を出すと手のひらを返すように身を縮めた。

これだからお調子者は。


「だけどね、料理は一般人並には出来るんだよ。そこは信じてね。だから、お願いします。」

「そう言われても困るんだけど。」

「どうかそこをお願いします。」

「あの子は食にこだわりないから私も知らないのよ。」


恥ずかしい事だけど紅桜の好きな食べ物は知らない。

作った料理はどれも美味しい美味しと言って食べてて料理によっての感想の変化はない。


「ならどうすれば…」

「あのね、そもそも紅桜に何かを償いをとか思ってる時点で論外。あの子はそんなことされて喜ぶ子じゃないの。」

「で、でもさ…」

「あの子は根っからの良い子だからむしろ余計気を遣われるだけよ。」


あの子は昔っから周りの事ばかり気を遣って自分を出さない。

もしかしたら出せないだけかもしれない。

だから、あの子に何かしたいのであれば、それは気を使うことではなく、


「味方でいてあげなさい。あの子が安心できるように。」


私は聞き取れないほど小さな声で呟いた。

紅桜はいつだって一人だからせめて少しの間だけでも味方の存在を気づかせてあげて欲しい。


「そう言えば例のアレは?」

「ちゃんと持ってきてます。どうぞ、お納めください。」


私は百々から一枚のSDカードを受け取った。

その中には大事な動画が詰められている。


「ちゃんと取れてるんでしょうね?」

「確認したから大丈夫だよ。でもさ、今後もずっと続けるの?」

「当たり前でしょ?誰のせいだと思ってるの?」

「それは…でもさ、私悪くないよね?」

「は?何、紅桜が悪いって言うの?」

「いや、そんな事ないよ。」


百々ときたらまだ文句を言う。

一昨日これ以上暴力で争わないように話し合いで解決したのにまだ納得いかないのかしら?

これだから話し合いは嫌なのよ。


「なら私が悪いって?」

「それも、違う、の、かなぁ?」

「当たり前でしょ。そして当然私の居場所を奪った貴方が悪い。」

「でもさ、私が無理矢理じゃないでしょ?こうやって私の部屋も貸してるんだし、それに紅桜ちゃんのプライベートの問題がね?」

「お姉ちゃんを叩く妹のプライベートがあるわけないでしょ。思い出した時に償いとして処理させるわ。」

「なんて言う暴論、そしてまだ根に持ってたんだ。」


当たり前でしょ?

化け物と言われて手を叩かれて私の心は粉々になった。

ダイヤモンドのように儚く砕けて涙が止まらない日なんて無かった(・・・・)


「それでもさ、妹の寝顔を撮影させるのはやばくない?」

「口答えが多いわね。貴方は私の償いをする気持ちがあるの?」

「あるよ。でもさ、紅桜ちゃんに本当の意味で引かれそうだよ?」

「バレなきゃいいのよ。後、これ以上グダグダ言わないで。紅桜が私を思い出すまで撮り続けるのよ。」

「う~~、任されました…。」


渋々と言った表情をさせながらも承諾した。

これぐらいじゃないと釣り合わないのに、百々は文句が多すぎる。


「そう言えば、学校にはちゃんといけてるの?」


紅桜と同じマンションにいるとは言っても、登校する姿を見れるわけじゃない。

紅桜に気づかれないように早めに大学に行くから私は知らない。

そこら辺は百々に聞いた方がいい。


「行ってるよ?みんな事故にでも遭ったの?て聞かれたりはして困ったよ。まさか氷柱ちゃんにやられたって言えないし。」

「あんたじゃないわよ。紅桜の方よ。」

「紅桜ちゃんの事ね。……うん、ちゃんと行けてるよ。」

「今の間は何なのよ。」

「いや~、友達と待ち合わせてから登校してるみたいで……」


友達と待ち合わせて登校???

あの紅桜が???

あの子はそんなことするような子じゃないはずなのになんで??

男友達ともそんなことしてないのに、これもあの出来事による障害?


「あ、あのね、そんな顔されると怖いと言うか……」

「普通にしてても怖いんでしょ?」

「偶にそうおm……なんでもないです。」

「とにかく続きを聞かせて。紅桜は、本当に友達といっしょに登校しているのね?」

「そ、そうなの。私の見立てではね、一人で登校する事ができないからじゃないのかなって。友達の子学校の方から来てくれてるから、多分トラウマが尾を引いてると思う。」


こんな時に何もできない自分に腹が立つ。

ただ話を聞くだけなんて生殺し状態を続けないといけないなんて。

今にもあの子に寄り添ってあげたいのに、今の私ではトラウマを思い出させる事になってしまう。

あれだけ愛していたのに、今になってこの愛情が鎖になるなんて。


「そ、それで、今日はもう引き上げても、いいかな?」

「ええ。私も一人になりたい気分だから出ていっていいわ。」


百々に八つ当たりするわけにもいかないし、一人になった後で発散しましょう。

私にできる事は紅桜がこれ以上辛い思いをしないしよう神様にでも祈るだけ。

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