日常に戻ります?
目が覚めたら自分の部屋にいた。
病室ではなくマンションの方。
寝ている間に百々姉が病院から運んで連れて帰ってくれてたらしい。
百々姉も怪我をしているにもかかわらず、私を運んで帰ってくれたと言う事実が心を締め付ける。
私はいつも迷惑をかけてばかりだと病みそうになる。
「紅桜ちゃん、元気になった?」
「もう大丈夫だよ。ずっと寝てたから。」
「良かった。紅桜ちゃんを病院に置いておくか迷ったけど、これから心配なさそう。」
「病院は百々姉と一緒に居られないからもう嫌だ。」
もうこれ以上寂しいのは嫌だ。
あそこは一人を強いられるから、常に孤独を体言させられる。
苦しくて心細くて長時間いたら自殺しそうだよ。
「体調は良さそうだけど、晩御飯食べれる?」
「百々姉の料理ならなんでも食べれるよ。」
「嬉しいこと言ってくれるね!でも、無理だけはダメだよ?そんな事されてもお姉ちゃんは嬉しくないんだからね。」
ちょっとばかりの説教をされながらも百々姉の手料理を食べることになった。
お手伝いをしたかったんだけど、危ないからと断られてしまった。
いつも手伝ってたから危なくはないんだけど迷惑はかけたくないので黙って待っていた。
「紅桜ちゃんごべんね~」
私の前に出された料理はペチャペチャになったご飯と焼き焦がしたお魚さん。
見ただけで失敗していると分かる料理を持って、百一々姉が泣きながら謝ってきた。
「気にしなくていいよ。たまに失敗することだってあるよ。」
「そうは言ってもね、お姉ちゃんとしてね、威厳を見せたいんだよ!!」
例えどれだけ器用だとしても、完璧人間ではない。
そんな人いればとっくに人間社会を支配してそうだ。
つまりは、今回に限って百々姉は偶々ミスが起きただけで悪いことは何もないってこと。
「美味しくなかったら残しちゃってね。私が責任を持って全部食べるよ。」
「ネガティブにならなくていいのに。いただきます。」
実際口にしてみると……うん。
見た身通りの味で美味しいとは言えなかった。
でも、食べれないわけでもないし、味が無いよりかマシだ。
「紅桜ちゃん本当にごめんね!明日は失敗しないから。」
「百々姉にはいつも美味しいご飯作ってもらってたんだから一回の失敗で怒ったりしないよ。むしろ怪我をしてて私連れて帰ってくれたりといつも以上に疲れてたんだからしょうがないよ。」
むしろ助けられてばかりで私が謝りたいぐらい。
ここまでしてもらって謝られて私って何様なんだろうなと卑下してしまう。
「紅桜ちゃんは先に風呂入ってくる?」
「百々姉がいいならそうするけど、疲れてる百々姉が先の方が良いんじゃないかな?」
ご飯を食べ終えた後、お風呂に入るように促された。
百々姉の方が疲れてるだろうし、先にリラックスしてくれでもいいんだけどまた気を遣われてるのかな?
「今日の私は寝てばかりだから気にしなくていいよ。百々姉、気を使わなくていいんだよ。」
「気を遣ってるわけじゃないんだけどな。紅桜ちゃんが入ってからでも全然休まるからね。」
百々姉は優しいからそう言う。
ちょっぴり悲しいんだけど、それならこう言う提案ならどうかな?
「そ、それなら、一緒に、入らない?」
この歳になってとも思われるだろうし、何たって言うだけで恥ずかしい。
こんな事を言ったのはいつ以来だろうか?
「…………ほへぇ!?」
心底驚いたかのように目を白黒させている。
そこまで私が言ったことが変だったのかな?
いや、そうだよね。
高校生にもなって一緒にお風呂とか馬鹿な話だよね。
「や、やっぱり、今の話は無しにして。高校生にもなってバカバカしいよね。」
「そ、そんな事ないよ。むしろ私が入っていいの?気持ち悪くない?」
「むしろ私が嫌がられると思ってた。……で、どうするの?」
「もちろん一緒に入るよ!こ、これがお姉ちゃんパワー!?氷柱ちゃんありがとう!!」
「氷、柱、ちゃん?」
そこまで喜ぶとは思ってなかったのでクスッと笑ってしまった。
それにしても、氷柱はどこかで聞いた名前だな?
どこでだっけ?
「紅桜ちゃん?強張った顔で何か考え事?」
「なんでもない。」
多分勘違いか、昔会った百々姉のお友達の名前だよね。
その解釈がしっくりくるし、納得できる。
お風呂を終えると百々姉が悟りを開いていた。
なんやかんや説明できない事があって、今の状態に。
悟りを開いた百々姉はとても清らかで、何もかも肯定すらようになってちょっと気持ち悪くなっちゃった。
それを伝えるとすぐに元の百々姉に戻ってくれたけどね。
次の日目を覚ますと気合を入れて準備をした。
百々姉も学校があるのでゆっくりとはできなかったけど、時間は十分だった。
最終確認を終えると扉を開けて外に出た。
朝の日差しを受けながら近くの電信柱に寄りかかった。
いつ来るのかと辺りを静かに見渡す。
予定より早く出てきたのでみんなはまだ来てないようだ。
「変な期待を持ちすぎたかな。」
昨日からワクワクする気持ちで一杯だ。
こんなに友達との登校が楽しみなのはいつ頃以来だろう?
もしかしたら初めてかもしれない。
どうして学校に行くことが苦だったのか覚えてないけど、今はそれすら気にならない。
「先輩!!おはようございます!!」
「もう来てたのね。」
地面を眺めていると二人に声をかけられた。
こうして学校の外で待ち合わせして登校するのは初めてだから新鮮だな。
「夜宵先輩はどうしたの?」
あの人なら見つかった瞬間に飛びつかれそうだから、いない事にすぐ気がついた。
約束より優先しないといけない事でもできたのかな?
「あいつは朝一からやらないといけないことがあるんですって。」
「やっぱりそうなんだ。」
「若葉先輩は私たちと違ってちゃんとクラスに馴染んでるので……」
それを言われると私達自身が悲しくなる。
ロクに馴染めてないわけじゃないけど気まずいんだよね。
黒瀬さんやあの3人と話せるからクラスで苦しくなることはないと思うけどな。
「先輩、大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんごめん。ぼーっとしてたよ。」
「学校行きたくなくなったとか言わないでしょうね?ここまで来てあげたんだからやめてよね。」
「二人に来てもらったんだからちゃんと行くよ。」
その日から当分の間は四人で集まってから登校する事になった。
申し訳ないとは思いつつも、嬉しいと楽しいが交わった暖かい気持ちで溢れていた。
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