登校する約束をしました!!
話し終えると黒咲ちゃんと若葉先輩が静かに入ってきた。
暗い顔をしていたので、外から盗み聞いていたんだろう。
何か口にした方がいいかなと思ったけど語り掛ける言葉は出てこなかった。
そんな中、満さんが話しかけてきた。
「霜雪、明日は学校来れるの?」
「えっ?」
満さんからそんなことを言われるとは思わなかった。
心配の言葉とかくれるものだと思っていたので声が上ずった。
「もし一人が無理なら、私たちが迎えに行くわ。だから、行けるか行けないか今決めなさい。」
「そ、それは…」
勇気を振り絞れば震える体を抑えられると思う。
でも、そんな勇気私にはないし、満さんに迷惑をかけたくない。
「怖いなら私達が引っ張ってあげる。私がそうしてもらったから、今度は私があんたにしてあげる。迷惑にならないし、この二人はあんたの家に行けるなら死ぬほど喜んでくれるわよ。」
「私は先輩のお家に行けるならどこからでも向かいます!」
「紅桜ちゃんのお家は興味あるな。」
「…。」
3人の顔を見ても無理しているように見えない。
むしろ家の場所を知られて身の危険を感じる。
「家まで来なくて良いよ。でも、学校の近くで落ち合いたいな。人が多いところは無理かもだから。」
「あんたの家まで行っても全然困らないのに。」
「目の前の変態さんに知られると身の危険がありますから。」
「あ〜。」
納得したような声を上げる。
満さんとの2人の認識は同じようだ。
「若葉先輩言われてますよ。」
「え、美和ちゃんの事じゃないの?」
黒咲ちゃんと若葉先輩はお互いになすり合っていたけど、私としては両方なんだよね。
まだ黒咲ちゃんなら理性をきかしてくれると思うけど、安心出来ない。
興奮する時はとことん興奮するタイプだから心配ではある。
若葉先輩はうん、存在からアウトだね。
満さんだけならよかったんだけど、この2人が一緒だと本当に危なそう。
「そう言えば先輩、どうしてちゃん呼びにしたんですか?あ、迷惑とかじゃないですよ?むしろ嬉しくて泣きそうです‼」
ちゃん呼びに変えただけで泣かれるのはどうなんだろう??
けど、嬉しいなら良いかな。
「ほら、ここまで心配してくれる後輩をさん呼びのままだと一方的に好意があるように見えるから、ちゃん呼びの方がいいかなって。」
「こ、好意!?つまり、先輩も私の事を!?」
「あ、恋愛系じゃないよ?良き先輩後輩としてだからね?」
「うぅ、、、でも、呼んでくれるだけでも……そ、それなら、せめて下の名前で読んでください!!美和ちゃんって呼んでほしいです!!」
目を輝かせる後輩に断りを入れることはできず、今日から呼び方を一新させることにした。
別に何か都合が悪いわけでもないしね。
こんな私になついてくれるお礼と思えばお安いモノかな?
「それなら、私も……いや、良いわ。今のは聞かなかってことにして。」
「えー、なにそれ!?気になる!」
「若葉先輩、やめて下さい。私の前で喧嘩を起こさないでください。」
「じゃあ、私のことを夜宵先輩って呼び直してくれる?」
まるでそう呼ばないとここで満さんとバトルかの言い方。
交渉かな?それとも宣戦布告かな?
「分かりました。夜宵先輩。」
「きゃ〜!!紅桜ちゃんが私の事下の名前で呼んでくれた!!いやうつれし〜な!!下の名前で呼ばれて気持ちいいな!!」
満さんに見せつけるように喜ぶ。
喧嘩しないために呼んでるのに分かってるのかな?
「だから、私はいいの。私と霜雪の関係はそれぐらいがいいの。」
残念そうにしながらも、自分に言い聞かせるように言っていた。
私としてはどっちでもいいけど、満さんがそう落とし込めるなら呼び方は変えない。
「これ以上迷惑だから帰るわよ。」
「まだいいのに。」
「あんたの意見は聞いてないの。ほら、二人とも帰る。後、落ち合わせる場所を連絡しなさいよ。」
満さんは惜しむ二人を無理やり連れて行ってしまった。
私としてはもっと居てくれた方が寂しくないからよかったんだけど。
「落ち合う場所を勝手に決めていいのかな?」
そこだけが気がかりだった。
でも、変に悩んで気を効かすよりも、わがままな方が良かったり?
満さんの性格ならそっちだよね。
「それなら、いっその事マンションの前とかでもいいかな?」
いや、駄目だよね。
住所特定されたら若葉先輩が勝手に来そうだし、黒咲ちゃんなんて私の家に来ただけでどんなケダモノと化すか。
男子みたいな態度をする女子が漫画でケダモノにならない理はないし、見本が二人もいるし……?
「???」
二人?
二人って誰のことだろう?
一人は百々姉でしょ?
それは分かってるけど、後一人は誰のことだろう?
この前百々姉のサークルに参加さしてもらった時に知り合った人だろうか?
そんなはずはないよね。
だって私は彼女を知っていて、それこそ小さい頃から仲良くしていた。
となると、黒瀬さんのお姉さん?
でも、なっちーさんは久々に会って、それこそ本人かどうか分からないほどだった。
なら誰だろう。
もっと身近にいてそれこそ百々姉と一緒にいた……
「…ぁ、あ、頭が……」
考えれば考えるほど頭が痛くなっていく。
知ってはいけない事を探っているような緊張感の中に、知らなければいけないプレッシャー。
ぐちゃぐちゃに混ぜられながらもそれに抗おうとする苦しみ。
「お、起きてるー!遅くなってごめん!授業が長引いちゃって……って、大丈夫!?」
「…お姉……ちゃん?」
気持ち悪くて今にも吐き出しそうな中、なんとか扉の前に立つ人物を見ることが出来た。
大学帰りに百々姉が急いできてくれたみたい。
「どうしたの!?頭が痛いの!?私は何をしてあげればいい!?」
自分にできる事を聞いてくる。
答えたいけど、私ですらどうすれば落ち着くのか分からない。
どうすれば吐き気が治るのか教えてもしいぐらいだ。
「ともかく、深呼吸だよ。何も考えちゃダメ。私の呼吸だけを真似して。」
言われるがまま呼吸を真似した。
息を吐く時、胃の中のものが出そうだったけど、案外そんなことにはならなかった。
吐きたいけど吐けない状態の中、背中を撫でてくれた事はとても嬉しかった。
人の温もりを感じられて、何もされないよりまだマシだった。
「その調子だよ。そのまま目も閉じようね。」
「こ、怖い、よ。」
「大丈夫。手を繋いであげるから。」
背中を撫でる手とは反対の手を差し出してくれた。
その手を握りしめるとちょっぴり安心できて目を閉じることができた。
その後は時間が経つに連れ意識が消えていった。
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