一難去ってまた一難!?
次の日、朝早くから百々姉が私のところに来てくれた。
その事がとても嬉しかった分、百々姉の姿を見て恐ろしくなった。
「百々姉どうしたの!?誰かに襲われたの!?」
「あはは、ちょっと友達と喧嘩しちゃった。」
顔には複数アザがあり青黒く濁っている。
口部分に絆創膏が貼られていて痛そうだ。
腕はアザはなかったけど赤く腫れたところがあり、何か起きた事は分かった。
でも、それが友達との喧嘩と言われて納得できるわけない。
「隠さなくていいんだよ!?怖い人に何かされたんでしょ!?」
「本当に喧嘩しただけだよ。まあ、見た目は怖い方だから間違ってはないけど。」
「お医者さんに見てもらったの?」
「うん。安静にしてれば数日で治るって。」
腫れた腕を振り回して大丈夫だと分かるように見せる。
でも、痩せ我慢しているように見えて心が痛む。
「怪我してるんだから、動かすのは良くないよ。」
「本当に大丈夫なんだから。それより、昨日の夜は怖くなかった?」
「百々姉と約束したから大丈夫だった。」
「怖くて眠れてないかもって思ったけど、その心配無かったね。」
百々姉口を大きく広げてにっこりと笑っていた。
釣られて私も笑みがこぼれてしまう。
「そう言えば忘れてたんだけど、学校どうする?医師の人からは行くのは大丈夫って言われたけど、まだベットで寝てる?」
「学校行ったら百々姉と一緒に居られないよ。」
「私も学校があるからどの道無理なんだよね。でも、学校なら友達が待ってるよ?」
「そう、だけど…」
「ごめんね。私が一緒にいられたらよかったんだけどね。」
「百々姉は悪くないよ。でも、学校はまだ行きたくないかな。足が震えちゃって。」
「そっか、なら今日はベットで横になってようね。早めに戻ってくるから少しの間我慢しててね。」
少し話をした後、言葉通り行ってしまった。
人がいなくなった部屋はとにかく静かで心がくるしくなる。
昔は1人でいたって何も感じなかったのに、今では手から零しながら歩いているみたいで不安になる。
「寝てれば楽になるかな?」
百々姉からも寝てるように言われたし、密かに目を瞑ることにした。
冴えた頭ではなかなか寝付けないけど、暗闇に包まれた視界はむしろ安心できて時間の問題だった。
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「…ちゃん?…ちゃん?」
何処からともなく声が聞こえる。
でも、この暖かい温もりの中から出たくない。
もっと暖かさを感じていたい。
「……き。」
「…先輩?」
見知った声が聞こえる。
ツンケンしてるけどデレやすい子と甘々で子犬みたいな子の声。
「…ちゃん…なら……しちゃうよ?」
悪戯ずきの妖精のような声が聞こえて顔を顰めてしまう。
嫌な予感がするから目を覚まさないといけないのに、体が拒んでいる。
「……しちゃうからね。……おこ…でね。」
ヌルヌルしたものが体にまとわりつく。
触手プレイを想像している人もいるかもだけど、ただ汚ならしい動きをしている何かがまとわりついてるだけなのでエロい感じにならない。
純粋に気持ち悪くて今にも吐きそう。
「………っ!!」
体が耐えられなくなり勢いよく体を起こす。
目の前では私の体にへばりついている若葉先輩と止めようとしてる黒咲ちゃん二人に呆れている満さんの姿があった。
そしてよく見てみると私の体は服が脱がされて胸が露出している。
若葉先輩は私が目を覚ましたと知ってもくねくねと指を動かして撫で回そうとする。
一回叩いたら正常に治るかなと思いながら一言放った。
「何してるんですか。こっちは病人ですよ?若葉先輩は変態先輩にでもなったんですか?」
「あはっ!その汚物を見る目、お姉さん感じちゃう!!」
この人にとってはご褒美だったらしく逆効果だった。
ちょっと出番なかったからってキャラがめちゃくちゃぶれててもう誰かわかんない。
こんな先輩がいるとかもう嫌だ。
「こ、ごめんない、先輩。止めようとしたんですけど、ダメでした。」
「黒咲ちゃんは悪くないよ。満さん回し蹴りでいいので目の前の人どうにかしてください。」
「はぁ…了解。」
「え?まってまって、了解じゃだめだよ!?今までのは冗談なんだか……ほへっ!?」
若葉先輩の腹部に強烈な一撃が入る。
部屋に響くほどの音が出てたのでかなり痛そうだけど、これぐらい当たり前だよね?
「服脱がすとかなんで平気でやるかな?」
「あわわわわ。先輩の裸が……(ちらっ、ちらっ。)」
若葉先輩が倒れると先輩で隠れていた部分が露出した。
それを見た黒咲ちゃんが男子小学生みたいな反応でちょっと驚いた。
こっちまで恥ずかしくなってしまう。
着替え終わると若葉先輩も回復していたので気を取り直して向かい合った。
若葉先輩はヘラヘラしていて反省の余地はなさそうだけど、今回はただ付いて来ただけなようなので放っておくことに。
「今日はどうしたの?学校は?」
「学校ならとっくに終わったわよ。寝ぼけてるの?」
空の色に変化がなかったので気づかなかった。
時計を見ると時刻は16時を回っていた。
「寝てて気づかなかったよ。」
「呑気というか、間抜けというかしっかりしなさいよ。そんなんだから入院する羽目になるのよ。」
「先輩、そんな言い方は…――」
「抜けてたのは本当だからね、良いんだよ。」
苦笑いをしてしまう。
実際、誘拐された時に男達に気づけなかったのは抜けていたからだ。
「それで、今日は本当にどうしたの?ただ見に来ただけじゃないんだよね?」
「本当はそれだけのつもりだったのよ。」
「つもりだった?」
「ちょっと耳にした事の真相を聞こうと思ってね。」
なぜか背筋が冷えて嫌な気がする。
聞かれたくないことを聞かれそうになる。
「あんた、本当は頭を打って入院したってのは嘘なんでしょ?」
「……」
なんでそんなことを知ってるの?
誰から聞いた?黒瀬さんから?
「その顔は本当なのね。ねぇ、本当のことを教えてよ。私たち…と、友達なんでしょ?隠し事は止めなよ。」
「それ、は……」
言いたくない。
言えるはずがない。
「ねぇ!」
満さんは寂しそうな目で見てくる。
黒咲ちゃんはどちらにつくべきか迷ってる。
若葉先輩は知っているのかどこか冷静で私に判断を委ねている。
「言えないことなんだろうとは分かってる。でもさ、辛い思いを1人で背負う必要はないでしょ?」
最後の頼みのように満さんは問いかける。
ここで断れば諦めてくれると思う。
でも、それが正しいとは思えなかった。
「若葉先輩と黒咲ちゃんは部屋から出てて。2人の前では言いたくない。聞かれたくない。」
そう言うと満さんは二人を外に出してくれた。
黒咲ちゃんだけは聞いてほしくなかった。
彼女は臆病なのに責任感が強いから、自分を責めてしまいそうだから面と向かって聞いてほしくない。
ドアに耳を当ててる影が見えるけど、部屋の中にいるよりかは気持ちが楽だった。
「あのね、3人が帰った後ね…わた、私は、…――」
言葉が出なくなる。
胸が苦しくて息ができそうにない。
それぐらいあの時のことを言いたくない。
「ゆっくりで良いわ。」
そっと言ってくれる。
その心遣いが私の心を楽にしてくれる。
「1人でいるところを狙われて、誘拐されたんだ。」
その時の満さんの顔はよく覚えていない。
自分の話を思い出すだけで精一杯だった。
言葉にすればするほど目の前が暗くなって、怖くて仕方がなかった。
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