姉同士の戦いは怖い!?
目を覚ました紅桜ちゃんはどこかおかしかった。
いつもはツンデレで棘がある喋り方とデレた時の可愛さが私を満たしていた。
でも、今の紅桜ちゃんはデレてばかりで戸惑ってしまう。
氷柱ちゃんの事を忘れて、まるで私を本当の姉だと思っているような口ぶり。
積極的なスキンシップをされて嬉しい反面、戸惑いがある。
いつもなら絶対しないことの繰り返しで、素直に喜べない。
もし本当に氷柱ちゃんのことを忘れているのだとしたら悲しい。
自分の拳から血が流れるまで殴るような妹思いな氷柱ちゃんがかわいそう。
目が覚めるまでずっと心配し続けていた彼女のことを忘れていないで欲しい。
「あれは、氷柱ちゃん?」
アパートに戻ると廊下の奥から氷柱ちゃんらしき人影が歩いてきた。
でも、いつもの氷柱ちゃんとは違い、髪はボサボサで雰囲気が暗くて多少残っている面影で判断できたくらいだ。
「氷柱ちゃん、いきなり出て行ったからびっくりしたよ!もう、心配したんだからね?」
暗い雰囲気だったので少し明るめに話しかけた。
こっちの方が私らしいからだ。
「そう。迷惑をかけたわね。さよなら。」
それだけ言うと私の横を通り抜けていく。
ゴミ袋?を持っていたようで、通り過ぎるときに当てられた。
「ちょっと、何よ!」
さっきの返事といい今の行動といい、いつもと違いすぎて怒り気味に言った。
こっちは気を使って話しかけたのに無視する感覚で言葉返されて腹が立った。
「……。」
「なんで無視するの!」
でも、氷柱ちゃんは全く聞く耳を持たず歩いていく。
とっさに手を伸ばして腕を掴むと嫌そうな目をされた。
「なんで無視するのよ。」
「うるさい。手を離しなさいよ。」
氷柱ちゃんが何にイラついているのかわからないけど、今は普通じゃないってことだけは分かる。
このアパートは私が管理している訳だから、変に暴れられても困るのでゴミ袋を持ったまま私の部屋に連れ込んだ。
「何するのよ。」
「あのね、その理由が分からないなら相当だよ?氷柱ちゃん自身が今どんな風なのかわかってるの?後、そのゴミの中見せて!」
とは言ったものの渡してくれなかったので無理矢理奪った。
袋を破って中を見てみると、切り裂いたのか破ったのか分からない衣類や、叩きつけて割った小物などがあった。
「これ、何…?」
「……。」
私が聞くと氷柱ちゃんは何も言ってくれない。
目で訴えようとしても目を合わしてくれない。
「あのさ、紅桜ちゃんに嫌われたからってやりすぎだよ?」
「関係ないわ。」
「そんなわけないじゃん!どう見たってそうにしか見えないよ。」
「うるさいわね。あんたに何が分かるって言うのよ?それとも何?私から紅桜を奪えて嬉しくなっちゃった?」
「はぃ?」
氷柱ちゃんがベラベラと訳がわからないことを言う。
紅桜ちゃんがべったりひっついてくれるようになって氷柱ちゃんに自慢したいだけとか、自分のものになって舞い上がってるだとか。
頭が単純だからお気楽なことしか考えられないんでしょとか、とにかく友達としてありえないことばかり言われた。
そんなこと言われたら私だって頭にくるわけで、むしゃくしゃした気持ちを吐き出すように手を出した。
「っ!!」
頬を叩いたら、氷柱ちゃんは鋭い目で私を睨み今にも襲いかかってきそうだった。
「これは宣戦布告ととっていいのかしら?」
「他にどう見えるの?さっきから言いたい放題。そんなところを紅桜ちゃんに見られたらどんな顔されるかな?また化け物って言われるんじゃないの?ぷぷぷ。」
「へぇ、そこまで言うならボコボコに半殺ししてもいいわよねぇ?」
「半殺しって厨ニ病すぎ。今の氷柱ちゃん相手なら余裕で勝てるから。」
その言葉を最後に女同士の争いが始まった。
始まりが始まりなだけにどちらかがボコられるまで続くドロドロに殴り合い。
初めは氷柱ちゃんから動いた。
初めからグーパンがきたので、私の頭の中ではヒラリと交わして後ろから押さえるシミュレーションが既に出来上がっていた。
「ぐへっ!」
結果的に言ったら、シミュレーションが出来ていたけど体がその通りに動かずに交わす事も出にずにぶん殴られた。
しかもかなり強めだったので普通に痛い。
女相手になんてことしてるんだ、この女わ!!
「あんなにイキがってたのに無様ね!」
「にゃろ〜、親に散々打たれたけど、痛いのは痛いんだからな!よくもやったな!」
次はこっちから仕掛ける。
もちろんグーパンでだよ!
やられたらやり返せが私の信念なんだ!
「ふん、何そのパンチ。なんなの当たるわけないでしょ?」
「何言ってるのさ、本名はこっちだよ!」
パンチは掠りもせず簡単に避けられてしまったけど、体のパランスをわざとずらして避けた氷柱ちゃんの方向へ倒す。
体を使ったダイナミックな攻撃。
私もこの後十分に動けない諸刃の剣と呼べる攻撃だけど、油断した氷柱ちゃんなら絶対避けられない。
私が体ごと倒れたことで狙い通り氷柱ちゃんは避けれずに私の下敷きになった。
立ち上がろうとする氷柱ちゃんを押さえ込んで立たせないようにする。
「くそっ、放せ!」
「やだ、ねっ!このまま押さえ込んじゃうんだから!」
「このっ、このっ!」
無理にでも立ち上がろうとする氷柱ちゃんをどうにか抑え込む。
両者ともに時間と共に体力のみが削られていく。
このままだと持久戦で私に勝ち目はない。
それで、氷柱ちゃんに勝たないと気が済まない。
「弱虫、ザコ、馬鹿、間抜け、アホ!」
持久戦においては体力のみなら勝てないけど、そこに精神勝負を混ぜればまだ勝機はある。
さっき色々と悪口を言われたのでその恨みを込めて誹謗中傷をしていく。
出てくる言葉を口にしていき、どうにか精神攻撃を仕掛ける。
「雌ガキ、痴女、ブラコン、シスコン、ロリコン、ザコ雌!弟馬鹿、妹馬鹿、意気地なし、スケコマシ、レズ!」
つらつらと言葉を並べていくと段々と抵抗が弱くなっていく。
精神攻撃が効いてきているようだ。
計画通り計画通り、このまま行けば――
「……すぅ、はぁ~。」
氷柱ちゃんが一呼吸すると背筋が凍るように冷たくなる。
さっきから黙っていたのは計画通りなはずなのにそれ以外の理由があるような気がしてならない。
「さっきから生意気な事言いまくってたみたいだけど、もう終わり?それなら反撃させてもらうわよ。」
その声をここ終わる前に体が浮いた。
私は氷柱ちゃんを抑えていたはずなのにいつの間にかその体制のまま浮かんでいて、体に激痛が走る。
私は頭の中が真っ白になり何をされたのか分からないまま、さらに違うところから激痛が走った。
「さっきからごちゃごちゃ言ってたみたいだけど、今どんな気分かしら?馬鹿にしてた相手に蹴りを入れられて、さぞ悔しいでしょ?」
「……暴力女。そんなんだから、紅桜ちゃんに嫌われるんでしょ?」
朦朧とする意識の中、なんとか言葉を吐き捨てる。
意識が途切れかけてるせいで視界がぼやけてる。
蹴られた激痛でなんとか意識は保ててるけど、そろそろやばい。
「紅桜ちゃんはお淑やかな私みたいな子にしか興味ないから可哀想だね。ガサツでぶっきら棒で常にものに当たる女が苦手なのって、もしかして、氷柱ちゃんを見て育ったからかな?てことは、元から嫌われてたんじゃない?」
「私は嫌われてなんかない!」
「じゃあなんで避けられてるのかな?」
「その口話せないようにしてやる!!」
氷柱ちゃんに口を押さえつけられる。
私は抵抗できるはずもなく、あっさり捕まってしまったけど、それでも語りかけた。
「そんなことしていいのかな?私が無事じゃなかったら、余計に嫌われるよ。」
「……っ!!」
すんでのところで氷柱ちゃんの力が緩んだ。
私の言葉が届いた証拠だ。
「別にやりたければ殴るなりなんなりすれば?氷柱ちゃんが勝手に嫌われるだけだからね。」
「百々、脅しのつもりかしら?」
「違うよ。勝手に独り言言ってるだけ。そこに意味なんてないよ。」
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