お姉ちゃん(?)は安心します!
紅桜に拒絶された。
目の前で泣き叫ばれた。
私を見て紅桜は泣き叫んでいる。
どうしてか分からない。
私は紅桜を心配して訪れたのに泣かしてしまった。
弾かれた手をさする。
まだ手の痛みは引いていない。
血が出るまで人を殴り続けたことは初めてだった。
私たちが取り逃した男達に紅桜を誘拐されたことへの怒りが私の理性を上回って止める事ができなかった。
紅桜たちに突っかかってきたと言う男達を捕まえたと安心して逃してしまった事が今でも後悔してる。
あの時完全に捕獲していれば紅桜が誘拐されなかった。
「紅桜ちゃん、大丈夫だから!大丈夫だから、落ち着こうね?」
「怖いの!百々姉、怖いよ助けて!化け物に殺される!目の前の化け物に殺される!」
紅桜は何か幻覚を見ているようだった。
紅桜を助けた時も幻覚を見ているようで私の事を化け物と呼んでいた。
紅桜は誘拐された時に何か良くない薬でも打たれたんだろう。
だってそうじゃないと、そうでないとしたら、紅桜は本当に化け物だと思っているのかもしれない。
さっきから百々の事ばり名前を呼んでいて私の名前を呼ばないのはそう言う事なのかもしれない。
男を殴る私を見て怖いと思ったのかもしれない。
私の姿が化け物に見えたのかもしれない。
でも認めたくない。
私は紅桜のために行動して、紅桜を助けたんだ。
だから、お姉ちゃんでいる私を紅桜が化け物なんて思うはずがない。
「紅桜、私は―――」
「こ、来ないで!化け物が近づいてくる!助けて!」
「紅桜ちゃん、落ち着いて目の前にいるのは氷柱ちゃんだよ!?」
「いや!助けて!助けて!」
百々が落ち着かせようとしても泣き止まない。
私が手を伸ばそうとすれば余計に泣き叫ぶ。
紅桜は今の紅桜には私が化け物に見えている。
「……っ、帰るわ。」
「氷柱ちゃん!?」
「ごめんなさい。」
私は逃げ去るようにその場を離れた。
廊下を歩いている途中、看護師さんに声をかけられた。
「泣き叫ぶ声がしたんですが、何かあったんですか?」
「すみません。入院している妹がパニック障害に陥ってしまったみたいで…」
「そうなんですか!?部屋の番号を教えてもらえますか?直ぐにうかがいます。」
「2013号室です。すみません、妹をよろしくお願いします。」
頭を下げた。
後ろを去っていく足音が聞こえなくなると走った。
逃げ出した。
この場に居るだけで自分が惨めになっていきそうで耐えられなかった。
家に帰ってくれば私の物だけかき集めた。
私が使っていた物、私が関わっている物全て。
集め終わるとゴミ袋に投げ捨てた。
引き裂いて叩き壊して元の原形が無くなるまで粉々にぐちゃぐちゃに壊した。
気持ちが落ち着くまでひたすらそれだけに専念した。
私は無力な自分に嫌気がさす。
何も助けてあげられない自分に反吐が出る。
私は紅桜の見方で唯一の家族だと思ってたのに、紅桜に怖い思いをさせて拒絶されて今の私には何者でもない。
ただの役立たずだっだ。
―――――――――――
怖い怖い怖い怖い。
化け物に襲われる。
頭の中が真っ黒になって死んでしまいそう。
凍えるような寒さを体を縮めることでなんとかする。
流れる涙が止まらないほど私は怯えていた。
「……だから!…、……しっかり……。」
誰かが声をかけてくれている気がする。
体を抱きしめて安心させようとしてくれる。
恐る恐る顔を上げると百々姉の顔がそこにあった。
『大丈夫だよ。』と優しく語りかけてくれている。
「百々、姉?百々姉なの?助けてくれたの?百々姉が化け物を追い払ってくれたの?」
「……っ、…そう、だよ。だから、安心していいんだよ?大丈夫だか、怖いことは起きないから。」
「…よかった。百々姉が助けてくれた。」
あの時は助けに来てはくれなかったけど、今回は助けに来てくれた。
大好きなお姉ちゃんが助けに来てくれた。
「百々姉は私の大好きなお姉ちゃんだから信じてたんだよ。絶対助けてくれるって信じてたよ。あり、がとう。ありがとうなの!」
「うんうん。よしよし。」
百々姉の腕の中で泣いた。
恐怖から解放されて安心できたことがとても嬉しかった。
「百々姉、もう離れないで。私を置いてかないで。一緒にいて。」
「そうだね。今度から一緒に行こうね。」
頭を撫でてくれた。
恥ずかしかったけど、安心できて嬉しかった。
お姉ちゃんは暖かくて気が緩みそう。
「霜雪さん、大丈夫ですか!?先程、パニック障害になったとお聞聞いたして伺いに来ました。」
看護師の人が現れた。
私が泣き叫んでいたせいで迷惑をかけてしまったようだ。
「今治りました。」
「そうですか。ならひとまず安心です。ですが、この後検査をしてもよろしいでしょうか?原因不明のままですと今後に影響すると思います。」
「分かりました。紅桜ちゃん、見てもらおうね。」
「百々姉と離れるの?」
「少しの間だけね?でも、直ぐ終わると思うし、頑張ろう?」
「嫌だ嫌だ。百々姉と離れたくない!」
さっき一緒にいるって百々姉が言ったんだもん。
それに、また怖い思いをしてしまうかもだから、離れたくない。
百々姉と離れると安心できないよ。
「仲がよろしいんですね。」
「えへへ。そ、そうなんですよ。」
「私は百々姉の事大好きだよ?」
「……!?紅桜ちゃんがこんなにデレるなんて……私も大好きだよ!!」
看護師さんの前で顔を擦り合う。
微笑ましそうに見ていて止められることはなかった。
ひと段落すると、検査はやっぱり必要と言われ、百々姉からも言われたので渋々受けた。
離れている間は怖かっけど、なんとか検査は終わらせれた。
「百々姉頑張ったんだよ!褒めて褒めて!」
「偉かったね、よしよし。」
百々姉が頭を撫でてくれる。
それだけで心が満たされた気がした。
「お姉ちゃん、今日は一緒にいてくれる?」
「ごめんね、面会時間が決まってるから6時までしか無理なんだよね。」
「帰っちゃうの?嫌だよ、寂しいよ。」
駄々をこめてみたけど、お姉ちゃんはごめんねと言うばかりだった。
寂しいけど、お姉ちゃんにもどうしようもできなくて悲しそうな顔をされた。
「数日我慢すればいつでも一緒にいれるからね。頑張ろう?」
「う、うん。頑張ってみるね。」
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