入院中です!
目を醒めしてから何人か見舞いに来てくれた。
最初に来てくれたのは、当たり前だけど看護師さん。
たまたま様子を見に来てくれたらしく、運良く目が覚めたところに立ち会った。
看護師さんにあれやこれや聞かれたので、落ち着いてゆっくりと喋った。
聞かれたことといえば、自分が誰かわかるか?、年齢は?、性別は?などなどごく一般的な質問。
「霜雪紅桜です。年齢は16です。性別は見た目通り女です。」
ごく一般的な回答を答えた。
「脳に異常はないようですね。また今度脳に異常がないか検査を行います。今日はベットで安静にしておいてください。」
質問が終わったら、看護師さんは部屋から出ていった。
この部屋はまた私1人だけの静寂な空間になってしまう。
とても心が縮こまってしまう。
すると扉を叩く音がした。
声を出そうとしたけど、その前に扉が開かれ3人の女の子が部屋に入ってきた。
「ノックする必要あるの?」
「紅桜ちゃんが起きてるかもしれないじゃん。」
「先輩、起きてたら、嬉しいです。」
「嬉しいけど、そんなすぐに意識が戻るわけ……!!」
3人の女子の1人と目が合う。
こういう時、どう言葉をかけてあげれば良いのか分からない。
『おはよう!今日はいい天気だね!』
と明るく言うべきなのかな?
『みんなどうしたの?』
と何もなかったようにいつものように振る舞うかな?
『お、おは、よう、ございます。』
とおどおどとした口調で言うべきかな?
はたまた無言のままでぎこちない笑みでも浮かべればいいのかな?
結局、ぎこちない笑みを浮かべながら小さく手を振ることにした。
「せ、先輩!!」
黒咲さんが勢いよく飛びついてくる。
「っと、危ないよ。」
こっちの方が色々小さいから倒れるかもと思ったけど、何とか受け止めてあげられた。
黒咲さんは涙を流しながら頬擦りをしてきて本当に小動物みたいというか、このままではペットかな?
どちらにしろ、すごく心配してくれたみたいだ。
「紅桜ちゃん、もう大丈夫なの!?」
「今さっき起きたばかりだから分からないけど、看護師さんの反応は悪くなさそうだったから多分大丈夫。」
「よかった〜。入院したって聞いた時は本当に驚いたんだから。」
「迷惑かけてごめんね。」
「こっちこそごめんね。私の方こそ甘くみ過ぎちゃった。」
黒瀬さんに謝られてしまった。
黒瀬さんは何も悪くないと思うから頭を下げなくていいんだけどな。
「あんた、丸3日寝てたみたいだけど、本当に大丈夫なの?私たちに無理してない?」
「そんな事ないよ。嘘ついたっていい事ないから。それにしても、3日も寝てたんだ。学校大丈夫かな?」
「入院中に学校のこと心配とか本当に変わってるわね。多少遅れてても教えてあげるぐらいするから、今は安静にしてなさい。」
目を丸めてしまう。
私は今ツンデレがデレた瞬間を目撃してしまった。
これはとても貴重な瞬間だ。
「何?顔に何かついてる?」
「のり弁食べた?」
「海苔がついてるの!?どこ!?」
「いや、どこにもついてないけど、本当にのり弁食べたの?」
「満先輩はオムライス食べてました!」
誤魔化すついでに悪戯を言ってみたらとても上手に引っかかってくれた。
ここまで綺麗な流れは相当ないと思う。
「ぐぬぬぬ。」
「まあまあ。紅桜ちゃんも和ませるために言ってくれただけだから。」
「満さんがいつも以上に真剣だったからつい。本当に大したことないからいつものツンデレに戻っててよ。じゃないといつものノリになれないよ。」
満さんはため息をついて、本当にいつものツンツンした満さんになった。
でも、これがいつもの日常だ。
「そういえば、2人に連絡しないと!紅桜ちゃん大丈夫だよね?」
「う、ん?」
2人とは誰のことかわからないけど、呼ばれて困る人ではないと思うのであやふやな返事をした。
「先輩、早く学校に来てくださいね?先輩がいないと元気が出ないんです。それに、満先輩も口数少なくて怖いんです。」
「私はいつもと変わらないわよ!」
黒咲さんは寂しそうな目を向けてくる。
やっぱり、私に気を許したのと同時に心の拠り所にしているだね。
それなら、少しでも早く退院しないと!
「早く学校で会えるように頑張るね。」
「先輩、待ってます!」
「私も早く戻ることを期待してるわ。じゃないと若葉のやつにずっと絡まれてだるいのよ。」
「あはは。」
私がいない間、若葉先輩はかなりだる絡みをしているようだった。
そうなると満さんにとってはストレスが溜まる一方だ。
多分ツンデレで変に言い訳してるだけだど。
「紅桜ちゃん、連絡終わったよ。お姉さんすぐに来れるって。」
「そうなんだ。」
「そこまで嬉しそうじゃないね。」
「お姉ちゃん待ってる間に起きた事だから気負ってそうで心配なんだ。」
お姉ちゃんならいいまでのこともあってそう言う感じがする。
あまり自分のせいだと思ってほしくないんだけどな。
「そういえば、霜雪が入院してた理由聞いてないわ。」
「私も聞いてないです。先輩に直接聞こうと思って……私たちと別れた後何があったんですか?」
私は黒瀬さんの方を見る。
彼女は知っているようで誤魔化して欲しそうな視線を向けられた。
「実は帰り道で階段を踏み外して頭ぶつけちゃったんだよ。」
「そうだったんですか!?頭大丈夫ですか?なでなでです。」
優しく頭を撫でてくれた。
「頭は気をつけた方がいいわよ。打ちどころによっては死ぬんだから、本当に気を付けなさい。」
「う、うん。気をつけるよ。」
かなり真剣な声で言われた。
その真剣さに驚いてしまう。
「ともかく、紅桜ちゃんが無事でよかったよ。あまり長居は良くないからもう帰るね。」
「うん。みんなありがとうね。」
3人は帰っていった。
そして私は1人になった。
静寂で何もない部屋に取り残されるとなんだか心が落ち着かない。
ソワソワして気分が悪くなりそう。
「もう一度寝直そう。」
どこの病院なのかはわからないけど、百々姉が学校から来るのならまだ時間はか筈だ。
その間、寂しさを忘れるために寝ることにした。
――――――――――
何分寝ていたのかは分からない。
寂しさから逃げるように寝たから時間の感覚がわからない。
自然と目が覚めて気がつけば2人の女性が座っていた。
視界はぼやけていたけど徐々に晴れていく。
「あ、れ?」
初めに視界に入ったのは百々姉の姿だっだ。
時間があると思って寝ていたのにいつの間にか訪れていた。
「百々姉いつの間に来てたの?寝ててごめんね。」
「勝手に入っちゃった。まだ寝ててもよかったんだけど、むしろ起こしちゃったかな?」
百々姉は聞いてくる。
いつも口調が強かったりするけど、私が危ない時はいつも心配してくれる。
「よかったね、氷柱ちゃん!紅桜ちゃん意識が戻ったみたいだよ。」
百々姉はもう1人の女性に話しかける。
彼女はどこかで見たことあるような顔立ちなのに誰かわからない。
でも、知っている気がする。
「紅桜、……だ、大丈夫だった?怖い思い、してない?」
女性は私を知っているようだ。
「助けた時かなり怯えてるようだったから心配なの。周りも見えてなくて、幻覚を見ているみたいだったし、変な薬を打たれなかった?化け物って言われて悲しかったけど、紅桜は混乱してただけなんだよね?」
彼女が手を伸ばそうとする。
その手には包帯が巻かれていて少しだけ血が滲みている。
その光景に影響されて記憶がフラッシュバックし、鼓動が速くなって声にならない声が出る。
「あ、ぁ…」
殺意のこもった血走った目。
彼女の手は血に染まって、だんだん近づいてくる。
そんな彼女の顔は目の前の女性にそっくりだった。
「い、いやっ!」
伸ばされた手を弾く。
こんなに怖いと思ったことはない。
目の前に人殺しがいると言う現状に吐き気がする。
「た、助けて!殺さないで!いやっ!やだった!助けて!助けて百々姉!助けて!怖い!怖い!」
泣き叫ぶ。
自分でも取り乱した理由はわからない。
喉が渇ききっても言葉は続く。
「紅桜ちゃん!?大丈夫だよ、落ち着いて!?私たちは化け物じゃないから。」
「いや!死にたくない!死にたくない!死にたくない!殺される!殺される!百々
姉助けて!百々姉助けて!」
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