イケメンの男達はクズでした。
「私たちは姉の紹介で見学にきました。」
「名前聞いていい?」
「多分、なっちーと言えば伝わると思うんですけど。」
「あ、了解。という事は、君たちなっちーの妹さん達?」
「私はそうで、こっちの子は友達です。」
「なっちーから妹さんが見学に来るかもって聞いてたよ。
にこやかな笑顔で迎えてくれた。
「それで、何か聞きたいことある?なっちーには仲介係としてよく助かってるから。」
「それなら、活動を教えてもらってもいいですか?」
「活動はね、特に何もないかな?この部屋でゲームしてるだけだからね。オカルトサークルって名前だけだから。」
自分でこう言うのはどうなんだろう。
本当に名前だけのサークルなんだろうけど、嘘でも何かやってますよ的なことを言わないのかな?
「あくまでここは、憩いの場みたいなものだから、サークルに入らなくてもあそこで寝てる子みたいに気楽にくればいいよ。自由に使わしてあげるから。」
サークルメンバーを増やすつもりはないみたい。
あくまでも自由を求める人なのかな?
「他にあるかな?」
「私はないけど、紅桜ちゃんは何かある?」
「それなら、寝てる人……天狐さんでしたっけ?その人は寝に来てるとして、さっきからウロウロしてる人は誰ですか?」
「この子ね、妖精だよ?」
妖精だよと言われてなんと返すのが正解なんだろう?
ジョークだろうけど、笑ってればいいのかな?
それともツッコミ?
「嘘じゃないよ?妖精って表現は私が決めたんだけど、間違ってはないはずだから。この子はこの学校に在学してないのに四六時中部屋の中にいるから。」
真顔でそんなことを言われてもどう反応しろと言うんだろう。
その話を信じろと言われても俄には信じられないし。
それに、こんな大きなのが精霊っていうのはイメージと全然違う。
「ま、冗談だけどね!どうだった?面白い冗談だったでしょ?」
「そ、そう、ですね。」
「面白い、ですね。」
真剣そうな顔で喋ってたから、笑えない冗談にしか聞こえなくて掠れた笑い声しか出せなかった。
黒瀬さんも笑えなかったみたいで、なんとか振り絞り出していた。
「この子は何年生かは教えてもらってないけど、ただのコミュ症の子なだけだからもしオカルトサークルに入った時は仲良くしてね。」
本人そっちのけで頼まれてしまった。
それからは聴きたいことを聞いてみた。
かなりフレンドリーな人でなんでも答えてくれた。
「そろそろお暇します。ありがとうございました。」
「ございました。」
そろそろお昼にはちょうど良い時間になった。
お互いにお昼を食べていないので、解散した方がいいと思った。
「またね。」
最後まで優しくてとても魅力的な大学生だった。
いつも見ている大学生とは違った姿にちょっとだけ憧れてしまう。
でも、氷柱姉はまともだとして、百々姉があれだから大学生という姿を見失っていただけかもしれない。
「紅桜ちゃん、このまま食堂でいいよね?」
「いいんだけど、混んでるかな?」
「お姉ちゃんはいつでも大丈夫って言ってたけど。」
なっちーさんは見た目はギャルでも元は真面目な人だし、サークルでも的確な指示を出していてかなりできる人だと思う。
そんな人が言うんだから信じてもいいと思うんだけど、やっぱり初めて来る場所だから心配だ。
「放してください!」
廊下を降りている途中、突き当たりの廊下から叫ぶような声が聞こえてきた。
「何かあったのかな?」
「声は女性の人みたいだけど、トラブルかな?」
少し心配だ。
必死に訴えてる声だったから、知人関係だったとしても放っておけない。
階段を急いで駆け下り、角をきれいに回り切ると男達が2人の女の子を囲んでいた。
「ちょっと、本当に放しなさいよ!」
「見学だけだからさ。来なよ。」
「俺達のサークル楽しいからさ。」
厄介なサークルに勧誘されてるらしい。
勧誘してるのは少し筋肉がついてるイケメンだった。
女性からしたら断りづらそうだった。
「紅桜ちゃん、何する気?」
「何って、助けてあげないと!」
「私たちが言っても無理だよ。他の人たち呼びに行こう?」
「それは…―――」
確かにそうだ。
私が行ったところでどうにもならないのはわかってる。
素直に誰かを呼んだ方がいいかもしれない。
でも、その時間のうちに連れて行かれてたら助けられないよ!
「紅桜ちゃん、気持ちはわかるけど、堪えて。」
黒瀬さんはとても冷静に判断している。
ここは、自分の無力さに食いながら諦めるしかない。
「満先輩、怖いよ!」
「あんた達いい加減にしなさいよ!女の子泣かして何が楽しいわけ!?」
「いや、ほらさ。俺達は一緒に楽しみたいだけなんだって。痛いこととかするつもりないんだからさ。」
その言葉を聞いて自分の頭の中で何かが切れる音が聞こえた。
多分聞き間違いだ。
それとも、たまたま同じ名前か。
でも、微かに見えた少女達の顔はとても見覚えがあった。
『自分は至って冷静』と、言い聞かせながらも跳ねる心臓の音と波打つ脈拍を無視して歩き出していた。
「ねぇ、何してるの?」
案外、怒ってる人というは冷静なことの方が多いのかもしれない。
繕った偽物の笑顔はとても上手にできたと思う。
「何?もしかして、俺たちのサークルに興味あるの?ごめんね!先客がいるから、ちょっとだけ待ってね。」
「そうですか。……なら、待ってる間は、ラクにしておきます、ね!!」
目の前の男が目を放した時、とある場所目掛けて思いっきり足を振り上げた。
ドゴっ、という音がしたら、目の前の男は股間を押さえながら倒れた。
「な、なんだ!?」
「あなた達さ、女の子囲って何が楽しいの?」
「お前、何しやがった?」
「股間蹴っただけですけど?」
目の前の惨状に他の奴らはどよめいていた。
なんせ、小さな女の子の前で、仲間が股間を押さえながら倒れてるんだ。
「せ、先輩!」
「霜雪。あんたなんで…――」
捕まっていたのはやっぱり黒咲さんと満さんだった。
それが分かると余計に怒りが込み上げてきた。
「早く手を離してあげて下さい。聞こえないんですか?」
煽ってみれば男達は少しだけ縮こまり、言う事を素直に聞いてくれた。
「お兄さん達、お痛が過ぎましたね。今日のことは内緒にしておくのですぐにどっか行ってください。それと、報復とか考えない方がいいですよ?うちのお姉ちゃん、情報屋って呼ばれてて、もし私に何かあったら、ただじゃ済まない事になると思いますよ?」
「じょ、情報屋だって!?嘘だろ?!」
「ず、ずらかるぞ!」
男達はその言葉を最後に走って逃げていった。
それにしても、情報屋って何?
かなりビビってたけど、なっちーさんって実はかなりヤバい人なのかな?
「も~、紅桜ちゃん、なんで勝手に一人で行くの!危なかったんだよ!」
「ご、ごめんなさい。」
本当に申し訳ない。
自分でも制御しようと思ってたんだけど、どうしても体が動いちゃった。
「脅しが効いたから良かったけど、もしお姉ちゃんのことを知らない人だったら、あんなすぐに退散してくれなかったんだからね!」
その後も説教が続き、10分程度のそばに正座させられてしまった。
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