サークル見学に行きます!
「お疲れ様!これで今日は終わりだよ!」
何事もなく撮影会は終わった。
ドレスを着た後、他に3着ほど着替えて撮ったけどその時も問題なかった。
午後までかかるかと思ってたけど、ちょうどお昼前に終わった。
「それじゃあ、写真の抜粋はこっちでするからみんな見学に行ってていいよ!」
撮った写真を選別するメンバーとそうでないメンバーが7対3ぐらいの割合で分かれているらしい。
氷柱姉と百々姉も選別する側らしく、私はやることがなくなった。
「紅桜、好きに見学してていいわよ?」
「見学って何の?」
なっちーさんも言っていたけど見学とはなんのことだろう?
「サークルの見学よ。今日はオープンキャンパスの日なのよ。」
驚きの回答だった。
ここは大学だからオープンキャンパス自体はおかしなことはないけど今日がその日だって知らなかったので驚いた。
それに、満さんがオープンキャンパスに行くと言っていたので、ここに来ているかもしれないと思ったからだ。
でも、流石にそんな偶然があるはずもないのでそれは心配する必要はないと思う。
「そう言えば、今撮ったのって何に使うの?」
「サークルの案内チラシ。」
「―――……え!!?それじゃあ、さっき着たのって――」
「サークルで自主制作したものよ。本物を見てもらうのもいいけど、誰かをモデルにしてチラシにした方が効き目がいいのよ。」
知らないうちに氷柱姉のサークルのモデル役になっていたらしい。
可愛い衣装を着れると聞いて来たのに辱めを受けた気分だ。
「紅桜、別に嘘ついてたわけじゃないでしょ?ちゃんと可愛い衣装をたくさん着せてあげたし。」
「ぷ~~。」
「ほら、頬を膨らませないの?」
「ぷしゅぅ~~~」
膨らませた頬を突かれて空気が抜けていく。
完全に遊ばれてる。
「これからはチラシを速攻で作って印刷所に連絡しないといけないから、黒瀬さんと校内を見学してくれば?」
「でも、ここを受けるかどうか決めてないし…。」
「何言ってるの?むしろどこを受けてもいいようにいろんな大学を見ておくべきよ。来年は受験生なんだからよく見ておきなさい。」
説教混じりに言われて、渋々行く事になった。
黒瀬さんも元々は見学のために来ていたらしく、お姉さんがこれから忙しいのもあって共に行動することになった。
「紅桜ちゃんってさ、変わったよね?それとも家ではあんな感じなの?」
自分でもよく思う。
感情が表面に出やすくなった気がする。
「女の子って感情的ってよく言うじゃん。元々は溜め込むタイプだったけど、最近表に出やすくなったよ。」
「やっぱりそうなんだ。いい方向に変わったんだね。」
良いか悪いかでは正直判断できないけど、客観視すれば完全に良い事だ。
溜め込むのは自分にとってストレスを与えるだけだから良くないと聞いたことがある。
「ねぇ、男の子に戻りたいと思う?」
「それは…」
正直戻らなくても良いと思ってる。
むしろこっちの方が氷柱姉に辛い顔をさせることも無くなるだろうし、両親とは上手くいきそうだもん。
樹たちとはぎこちなくなってしまったけど、それでも、悪い方向に入っていない。
それに、満さんと黒咲さんとも仲良く慣れて嬉しかった。
「でも、男の時も良かったかな。」
今は楽しい。
過去の自分を眺めていればよく思う。
でも、過去の自分はそれでも笑顔だからそれを否定したくない。
「そっか。野暮なこと聞いちゃったね。」
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「紅桜ちゃん、こことかどうかな?」
黒瀬さんの指示にしたがってついて行ったら、昼寝サークルと書かれた看板が掛けてある場所に来た。
胡散臭そうなサークルだけど、なっちーさん調べで候補にあるらしいので見学することにしたらしい。
「お邪魔します。見学に来ました。」
「失礼します。同じく見学に来ました。」
扉を叩いて声をかけてみたけど返事はなく、中を覗いてみると誰も居なかった。
今日はサークルをやっていないのか、それとも、サークルが潰れてしまったのか。
どちらにしろ、誰もいないので次に向かうことにした。
「次のサークルに行こっか。どこが良い?」
「一番近いオカルトサークルにしてみれば?」
なっちーさんのメモと校内の地図を照らし合わせて一番近くにあるオカルトサークルを提案してみた。
黒瀬さんが否定しなかったので、サークル活動をしている場所に向かった。
同じ階の右奥にある部屋。
扉が一つしかなく、構造上外からは見えない作りになっていてサークル名に打って付けの部屋だった。
「「失礼します。」」
扉を開けて中を覗くと3人ほど中にいた。
一人は紫のマントに紫の魔女の帽子をしていて、いかにもサークルメンバーのようだ。
しかし、残る二人のうち一人はソファーの上に横たわり、アイマスクをして寝ていた。
もう一人はパソコンに向かってカチャカチャ手を動かしていた。
「き、君たち、ど、どうしたの?な、何か、よ、ようです?」
最初に私たちに気がついたのは、ザ、オカルトサークルメンバーの人だった。
しかし、コミュ症なのか言葉は片言で内心会話ができるか不安だった。
「私たち、サークルの見学に来たんですけど、今大丈夫ですか?」
「け、見学、ですか?ちょ、ちょっと、ま、待って、く、くだ、さ、さ、さいね。」
そういうと、その人は立ち上がり、パソコンに向かって睨めっこしている人に声をかけていた。
その人は声をかけられてようやく私たちの存在に気がついたのかちょっとだけ驚いていた。
「何、君たち見学にきたの?マイナーそうなのによくきたね。立ってるの辛いだろうし、ソファーに座りなよ。」
「え?あの、ソファーにメンバーの人いますよ?」
「メンバー?オカルトサークルって、私一人だよ?」
その言葉を聞いて絶句した。
だって、ザ、オカルトサークルメンバーさんが実はメンバーではないってことだよね!?
いかにもな服装なのにメンバーじゃないってどうなの!?
それに、このソファーに寝てる人もメンバーじゃないのなら、ここはもうオカルトサークルの場所じゃないよね?
「あ、天狐!勝手に来てたの?もー、起きなさい。」
ペチペチと頬を叩く。
それでも起きず、次の作に打って出ていた。
机の中を漁っていたかと思うと、何かを取り出しそれを天狐と呼んでいた人に近づけた。
持っているものはスイッチを入れると、青い光が走っていて、それがスタンガンだと分かった。
「仕方ないな。えいっ!」
「…ぎゃぁぁぁ!?」
すると天狐と呼ばれている人は飛び起きた。
その光景を見せられる僕たちはお互いに顔を見つめてそっと部屋を出るか目で語っていた。
「な、何するのさ!?」
「それはこっちの話だよ。勝手に入ってきて。天狐は昼寝サークルなんだから。」
どうやら誰もいなかった昼寝サークルの人は目の前の人だったらしい。
「ほら、どいて。お客さんが座るから、他の場所で寝てなよ。」
「ちぇー。ほら、開けたよ。」
そういうと、部屋の隅にいく、寝袋を取り出して寝始めた。
なんとも不思議な人だ。
「ごめんね。オカルトサークルは私一人で部屋に勝手に入り込んでくる人をどうにもできなくて。」
「いえいえ。」
現状を見た以上なんとも言えない。
むしろ、よく仲良くできていると思う。
「それで、どうしてここに見学にきてくれたの?もしかして、オカルトが好きな人?」
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