お互いの本音を話し合います!
「あんた達なんでいるのよ!」
「えーっと…」
「それは…」
本人を前にすると、やっぱり固まってしまって口が動かない。
言おうと決意していたのにその決心が鈍りそうになる。
「まあまあ、せっかくお友達が来てくれたんだから。」
「友達じゃないわよ…」
お母さんには強く言えないのか、弱々しかった。
心配させていたから負い目を感じているのかも。
「あら、いけない。お母さん、お買い物に出かけてくるの忘れてたわ。散琉ちゃん、お留守番よろしくね。」
「ちょっと待ってよ!マ…お母さん!」
お母さんの方は演技のような振る舞いで出かけて行ってしまった。
多分私たちに気を利かせてくれたみたい。
「頑張ってね。」
横を通った時、不意に小声が聞こえた。
こんなこと言われたらなんとしてでもちゃんとした友達になりたくなってしまう。
「その、お母さん、出かけちゃいましたね。」
「マ‥‥お母さんはそう言うところがあるのよ。それより、帰りなさいよ!」
「嫌、です。」
「私も帰りません。」
「さっきはマ‥‥お母さんがいたからきつく言わなかったけど、もういないから猫をかぶらなくても良いし、これ以上私の口から言わせないで。」
「ママって言っていいんだよ?恥ずかしいの?」
「殺すわよ!」
「怖い、怖い!」
真剣に話している中、急に若葉先輩が話に入ってくる。
ママと言いそうになってお母さんと言い換えてるところは確かに気になるけど、突っ込んだら怒らせるのは目に見えていたからやめて欲しい。
「コホン!…話を戻すけど、さっさと帰りなさいよ。」
「分かりました。言わせてもらいますが、もちろん嫌です!それに、素なのはお母さんといる時の満さんじゃないですか!あんな顔をしておいて、言い訳はしないでください!」
「うるさいうるさい!早く帰りなさいよ!」
「だから嫌です!だって、あな昔話を聞いて黙ってられません。それに、頼まれましたから!」
「っ!ママから、何を聞いたって?たかが話しを聞いたぐらいで私の気持ちがわかるって?何様の気持ちよ!!良い加減にしなさいよ!!」
そんなのわかるに決まってる。
だって、私も1人だけ異質な存在だったんだから。
「分かりますよ!私は、今までずっと、女の子みたいな可愛い姿に憧れて、でも、現実は憧れから遠ざかって全然慣れなくて、自分を押し殺してばかり生きてきてとても辛かった。」
「だから何?その苦しみが私と同じだって言いたいの?それぐらいで?」
「同じです!常に消失感ばかりで人生何も楽しくなくて、それでも、諦めないように毎日頑張って……それで、最終的に失望して、諦めることになる。その気持ちは、一番分かりますから。」
自分で言っていて泣きそうになる。
こんな気持ちを打ち明ける日が来るとは思っても見なかった。
「っ、何!?同情のつもり!?……もういい。帰って。これ以上話しを聞きたく無い。」
「嫌です!」
「そっちが帰らないなら無理矢理外にだすだけよ!」
「きゃっ!?」
咄嗟に何をされたのかわからなかった。
気がつけば、無理矢理首元を掴まれて体が宙に浮いた。
突然のことで足をバタバタとさせたが、満さんの顔を見て固まってしまった。
「分かってたまるか。私が受けた苦しみがわかるわけない。あんたみたいなやつは、平気で嘘つくんだから!あいつもそうだった!その時になればどうせ見捨てるんだから!」
「‥‥っ!!」
「……え」
いつのまにか手を出していた。
と言ってもこの体では力が強くないので精々かを叩く程度の力だった。
それでも、満さんを黙らせる程度の意味はあった。
満さんは手から力が抜けて、私の足が地面に着いた。
しかし、状況を理解した瞬間、目の色が変わっていた。
「何するのよ!やっぱりあんたも‥‥」
それは、ぁたかれた怒りの言葉か、それとも、前のお友達と同じものだと決めつけの言葉か。
どちらとも取れる言葉を発声しようとしていて、私が遮った。
「それはこっちのセリフです。前のお友達の話は聞いてます。だから、トラウマですぐに友達になれないと言うなら納得してました。でも、実際は勝手に私が悪と決めつけられて、こっちは頑張って仲良くなろうとしてるのに、最初から偏見で避けられて、あんまりじゃないですか!そんなに前のお友達に似てますか!?」
「…………似てるわよ。」
諦めたのか、消えそうな声で言い始めた。
「そうやって、ズケズケと私情に入り込んで好き勝手言うところ。あんたみたいなのはどうせあいつと同じように私を裏切るんだから。最初は優しい言葉で騙して、後でひどいことを言うんだわ。」
不貞腐れたように語っていた。
自分が言われた一言一言を正確に並べて行った。
その言葉はどれもひどいものばかりで、いじめのレベルではなかった。
それでも、私が同じことをする人間だと思われるのが嫌だった。
だって苦しみを分かち合えるから、私からは絶対言えないことばかりだから。
「私の目を見てください。私がそんなことをするように見えますか?」
「見えるわよ。」
「そっぽを見ながら言われても説得力がありません。ちゃんと見て、発言してください。」
「……」
そっぽを向いていた目と私の目の焦点があった。
その瞳は涙と苦しみで濁っていた。
「それでいいんです。ではもう一度聞きます。私は満さんをを傷つけるように見えますか?」
「‥…見え‥‥ないわ。」
「なら、私と友達になってもらえますか?」
「‥…今は、まだ無理。……だから、時間を頂戴。時間があれば……なれる……かもしれないから。」
「はい!もちろんです!!」
顔を合わせた満さんとは、ほんのちょっぴりだけど、それでも大きく近づいた気がする。
満さんから努力するように言われて私は飛び跳ねそうな思いで喜んだ。
そうして、私たちは本来の目的のために黒咲さんと並んで満さんに頭を下げた。
いきなりのことで満さんは動揺している。
「それじゃ次はこっちの番ですね。」
「何?さっきので終わりじゃなかったの?」
「いえ、今日はもともと学校のことで謝りに来たので謝らせてください。」
「そんなのもう良いわよ。気にしてないわ。」
「でも、ちゃんと謝っておきたいんです。」
まずは黒咲さんから謝罪した。
その後に続いて私も謝罪した。
「満先輩、嫌いって言ってすみませんでした。もう一度友達になってもらえませんか?」
「私もすみませんでした。そしてどうか、黒咲さんを許してあげてください。」
沈黙が流がれた。
もしかしたらまだ怒っているのかもしれない。
許してはもらえないのかもしれないと、嫌な想像が頭の中を駆けった。
「もう気にしてないし、頭あげなさいよ。」
「………………しぇんぱい、すみましぇんでしたぁぁぁ。」
黒咲さんが満さんに泣きながら抱きついていた。
あの時のことを相当悔やんでいたのだろう。
私は胸を撫で下ろしながらよかったと思っていたら、今度は満さんが私の前で話したそうにしていた。
「どうしたんですか?」
「あんたさっき私を叩いたわよね?そのことについて何もないのかしら?」
「‥‥…いや、あれは、その、勢いでして…。」
「へー。勢いだったら、人を叩いて良いんだ。」
ひぇ〜。
目が笑ってないよ!?
これはガチのやつだ!!
「すみません!すみません!」
「やり返さないと気が済まないわ。」
肩を鳴らすように振り回していてその力強さがじわじわ伝わってきた。
これを食らったらタダでは済まないと本能が警告を鳴らしている。
「ぼ、暴力は禁止です。」
「満ちゃん、ダメだよ!暴力反対!」
流石にこれに関しては黒咲さんと若葉先輩止めに入ってくれた。
「と言うか、なんで変態もいるのよ。何もなしに来てたんだったら通報するわよ。」
若葉先輩がいる事に対して忘れていたのか、今になって再びツッコミを入れていた。
その際に逃げ出そうとも思ったけど、お互い許し合おうと言う場でそれは良くないと思い覚悟を決めた。
「覚悟はできてるわよね?」
「やるなら右のほっぺにお願いします。」
注文だけを済ませると、後は任せたと目を瞑った。
視界が真っ暗になって怖くてたまらない。
そんな時、扉が開くような音がした気がしていた。
しかし、叩かれると言う事でそちらに神経が回らず気にしていられなかった。
「ふっ!!」
「ただいま〜」
叩かれると同時に満さんのお母さんが部屋に入ってきた。
お母さんの目には娘がお友達を叩く姿が高画質で映し出されていた。
「な、何してるの!?暴力!?散琉ちゃん、暴力はダメよ!?」
「ち、違っ!」
前後を知らないので、娘がただ単に暴力しか振るっている事しか入ってきていないのですごく気が動転していた。
その間私は何倍返しかわからない威力を食らってまた意識を失ってしまった。
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