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過去の話を聞きました

「まぁ、そんなことがあったのね。」

「すみません。」

「謝らなくていいわよ。娘も悪いところがあったみたいだし。それよりも、霜雪さんは大変な思いをしているみたいね。」


ことの経緯を話すと、ニコニコしながら聞いてくれた。

TS病についても話すことになったけど、満さんとは違ってすごく心配してくれた。


「娘はね、家の中だとすっごく良い子だから、少し心配だったの。私たちの前だけ頑張って笑顔を作っていい子を演じてるんじゃないかって。でも、貴方達の話を聞いて素の自分を出せてるみたいで。」


素の自分が出過ぎてちょっと口が悪くなってますとはいえなかった。


「娘が学校でそんな態度を取ってる理由を知ってる?」

「いえ、満さんからは何も。」

「私も聞いてないです。」

「私も存じ上げてません。」

「そう……」


さっきまでは嬉しそうに話していたのに、私たちの返事を聞くとどこか悲しそうな目になった。

多分、昔の満さんに悲しい何かがあったんだと思う。

でも、私たちは誰一人と聞いてなくて、黒咲さんですら友達の中にありながら一線を引かれていたんだと自覚した。


「娘はね、皆さんは知らないかもしれないけど、本当はとってもいい子だったの。それこそ、ご近所さんから羨まれるほどね。」


あんな態度をとっていても、黒咲さんには優しかったりとその片鱗は見えていたからなんとなくでは感じていた。

本当は優しい子だとは思っていたけど、どこで拗れたんだろう。


「でも、小学生の頃にいじめられて変わっちゃったの。」

「「……」」

「いじめ、ですか…」


私と黒咲さんは口を閉じて縮まってしまった。

でも、若葉先輩は表情を変えずに聞いていた。


「見たらわかると思うけど、うちはお金が裕福の方だから学校では何かと突っかかれることがあったみたい。その内エスカレートして行って本格的にいじめられて、私たちが気づいた時には心身共に参っていたの…。本当はあの子がそうなる前に親としてどうにかしてあげないといけなかったのに、家の中では元気にしてて、嬉しそうに学校のことを話すから楽しくやっているとばかり思ってて……」


とても悔しそうに話していた。

娘を助けられずに、気づいてあげられず、自分は親として何をしていたのかと責めていた。


「中学の頃には一度引っ越したのだけど、学校に行くことが怖くなって、引きこもってしまっていたの。私はあの子がこれ以上悲しい思いをしないために学校へ行けなんて言えなかったわ。」


満さんのお母さんの手を見ると、強く握り込んでいた。

過去の自分に許せなくて、無意識にやっているんだと思う。

それほど悔しかったんだと強く響いてきた。


「もうこれ以上傷ついて欲しくなかった。疲れた心を癒してほしかった。そして高校生になった時二度目の引っ越しでここにきたの。本当は高校は義務教育ではないから行ってほしくなかった。でもあの子は、自分を変えたいと言って、学校に行くことを決意したの。でも、やっぱりクラスに入る事はできなくて、特別クラスに入ることになったの。」


今までの満さんの話を聞いて、いつの間にか涙を流していた。

隣で黒咲も涙が止まらなくなっていた。


「あの時ね、娘が何度も『どうして私は普通のことができないの』って、自分ばかりを責めていて、見ていて苦しかったわ。その姿を見て私は、『もう良いんだよ』、『むりしなくていいんだよ』って、諦めさせるべきか、『もう少し頑張ってみよう』、『次があるよ』って、応援すべきなのかわからなくて何もできなかった。苦しんでるあの子を見ているだけしかできなかった。だからね、心配してくれる友達が来てくれて嬉しいの。私は何もできなかったけど、娘は自力で変われることができていて嬉しかった。」


満さんのお母さんは涙を流していることに気づいていなくて少し恥ずかしそうにしていた。


「貴方達は娘ともっと仲良くなりたい?」

「「「はいっ!」」」


みんな即決で返事をした。

だって同じように苦しんできたのが分かって、手を離すことは想像できなかった。

同じクラスとしてもっと仲良くなりたいと思った。


「娘はまだ怖いだけだと思うの。いじめられた時に仲が良かった子からもいじめられるようになってしまったから、同級生ってだけでトラウマが蘇ってしまってるんだと思う。黒咲さんは後輩で似たような経験があるから安心できるらしいんだけど、霜雪さんは一番辛いと思う。」


満さんがどうして私だけ無理なのかよく分かった。

黒咲さんは同じ経験から、若葉先輩は長い付き合いからと元々の性質。

でも私は、満さんを理解してあげられなくて、むしろ傷つけているだけだった。


「だけど、見捨てないであげて。きっとあの子も貴方と仲良くなれるように努力をしてると思うから。」


その言葉だけを託された。

私を信じて言ってくれた。


すると、ドアの開く音がして、足音がリビングへと近づいてきた。

そして、部屋に入ってきたのは満さんだった。


「ただいま、ママ……は?」

「お邪魔してます。」

「失礼してます。」

「あ、満ちゃんおかえり!」 

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