挽回します!?
翌日、朝から気まずい空気をどうにか払拭するため努力した。
午後から樹と散琉ちゃんがセッティングしてくれた場を無駄にするわけにはいかない。
そのためにも朝から頑張らないと……と思いはしたものの、うまくいかない。
果てには、少しでも言葉を出せるようにと永遠に声をかければ、向こうから避けられる始末。
教室だけでも、ちらほらと永久が「女子生徒の手を引いて……」という噂が飛んでいる。
幸い、相手が私だったことはあまり広がっていない。
問題は永久の方。
周りの視線は明らかにそちらへ向いている。
そのため、どう声をかけようにも永久の方が先に逃げる。
「永久君、大変そうだね?」
「そうだね。声かけようとしたら、逃げるし……」
「全然話せないね。クラスのみんな、例の噂を聞いて気にしてるみたい。まぁ、気になってるのは、永久君の恋愛対象が『女性』だったって事に驚いてるみたい。」
「そう……ん?今の話本当?」
「え、うん。あれ、紅桜ちゃん知らなかったの?」
私はてっきり、クラスメイトの色恋沙汰を気にしての反応だと思ってた。
委員長が言うにはそう言う部分もあるけど、永久の恋愛対象が女性というインパクトが大きいらしい。
永久自身が男なのだから、恋愛対象が女性なのは普通のことだと思う。
みんなが永久の過去を知っていないことが前提だけど……。
ただ、そう言う衝撃を与えていたのは私たちらしい。
簡単に言うと、永久自身が中性的だったからこそ、私たちがその囲いのように見えてたらしい。
決して、永久を姫とした囲いではなく、1人の女を3人の男がと取り合う仲のようなものだと思っていたらしい。
それにしては、私と樹のカップリングで大半の女子が騒いでいたのに、永久を取り合う男たちだと思っていたのは矛盾だと思う。
別に私と樹のカップリングのことは良かったけど、女を取り合う仲だと思われてたのは、ちょっとムカムカする。
私と樹は、そんなライバルみたいな関係ではないから。
「どうにか軽く話すことができる状態にしたいのに……。から元気を出したら空回りしちゃってる……。」
「樹君が何かしてるみたいだし、最終的には永久君から声がかかりそうだけどな?」
「それは嬉しいけど、やっぱり、自分から行動を起こしたいかな。」
「健気だ。広瀬君に嫉妬しちゃう!」
「そう思ってもらえるなら、正しいことができてるのかな?」
どちらにしても、行動に対して結果が伴ってない。
せめて、お昼の時間に声をかけて、それで…………その後どうしよう。
一先ず声を掛けようと頑張ってたけど、その後何も考えてなかった。
告白関連の話を出す訳にもいかない。
まして、他のことを話そうにも変にギクシャクしてしまいそう。
そうなったら、余計に私たちの間で何かあったと噂から確信になってしまう。
そうなると、むしろ声を掛けない方が良い?
いやいや、それこそ噂を助長させるだけだよね?
声をかけるとして何を話す?
共通の話題でこんな時に適した物がないの?
誰かに助けを求める?
それは良くない気がする。
なんだかわからないけど、胸がざわついてダメだと言ってる。
だから、自力で探さないと。
「授業内容が全然頭に入らない。」
「悩んでるな。」
「授業中に振り向くと注意されるよ。」
「あんまりこっち見ない人だから大丈夫だって。まぁ、ちょっと話したいことがあって。」
「それこそ休憩時間にすれば良くない?」
「永久に聞かれるかもしれないから、このタイミングで。」
「午後からの話?」
「そう。こっちで打ち合わせ自体は終わらせてるから、いつでも呼ばれたら来れるように。」
「どこに呼ばれるの?」
「一応、ここに誰もいない時間を作るからそれまでは別の場所に。永久も別の場所に居てもらうから、紅桜も同じようにどこでもいいから待機しててくれ。」
完全に逃げ場を無くす感じかな?
準備してくれるのはありがたいけど、上手くいくかな?
どんな手口を使うつもりだろう?
それこそ、みんなでよって囲って捕まえるとかしそう。
永久は力強いって印象ないし……
実は強かったり?
そんなことあるかな?だって永久だよ?
どう考えてもないよね?
あの見た目に反して強かったら、ちょっと考えちゃうな。
ギャップ萌えというか、何と言うか……。
言葉に表すのは難しい。
でも、思うことはあって……「良いな」とは思う。
………………///。
いけないいけない。
ちょっと顔がニヤけて来ちゃった。
授業中に変な考えを持ち込むなんて良くないよね。
ちょっと、樹!こっち見てニヤニヤしないで!
私は別に変な妄想に浸ってるわけでもないから!
もう、乙女の心をわかってよ!
……恥ずかしい。
樹に変な顔を見られた。
こんなの見せたくなかったのに……。
ううぅ……。
「紅桜が幸せそうでなによりだな。」
「からかわないで!」
「からかってないって。心から思ってる。」
「嘘だ!顔が笑ってる!」
「おっと悪い。」
樹のイタズラのようなからかいを止めることができず、授業の大半を付き合わされた。
こっちは全然良い気分でもないのに。
おこだよ、おこ!ぷんぷん!!
樹を叩こうにも手が届から反撃できないのがもどかしかった。
まあ、樹の言葉に嘘だらけでないことは分かってるから多少許せなくはないけど。
話の終わり際に、保健室で待ってれば問題なく時間を潰せるだろうと言われた。
嘲笑われた気もしなくはないけど、励みとして受け取ろう。
放課後になると、言われた通り動いた。
すぐに動かずに、ちょっとだけ教室を見ていれば人が減っていた。
いつもより早いペースで人が居なくなって、少しだけ安堵し、私も動いた。
保健室にはいつも通り人は少なく、奥の部屋へ入る。
いつもなら、美和ちゃんか散琉ちゃんがいるけど、今日はどこへやら。
静まりきったに1人椅子に座り、脚をぶらぶらさせてみる。
学校で1人静かにする事なんて、最近なかったからちょっと新鮮だ。
こういう時、寂しくなる人もいるだろうけど、私もそう。
ちょっぴり寂しかったりする。
2人がいつも話を聞いてくれることが、楽しかった。
誰かと笑いながら喋るのが好きだった。
だから、樹達とも一緒にいられた。
偽る必要のない会話が好きだった。
「なんだか眠たいな……」
何もする事なく座っていると睡魔に言い寄られる。
この後のことを考えると起きていないといけないのに、争うのを躊躇う。
こうなったら、少しだけ仮眠しよう。
ちょっと眠るだけ。
長時間眠る訳ではない。
誰かが呼びに来るまで目を閉じておくだけ。
机に顔をつけると、ほんのりと冷たさを感じる。
丁度良い冷たさが、より一層私の睡魔を強くする。
目を閉じるだけ、目を閉じるだけ。
そう心に呼びかけながら眠りについた。
そうして案の定、眠りすぎていた。
耳元でカサカサと音が鳴り、ゆっくりと瞼を開ける。
ぼやけた視界が徐々にひらき、近くに永遠の顔があった。
『なぜ』
その問いが頭に浮かび、ぐるぐると回る。
咄嗟に立とうとすると、肩に勝ったていたものがぱさりと落ちる。
その瞬間、永久も後ろにのけぞり驚きをあらわにする。
「ち、違うよ!?気持ちよさそうに寝てたから、ブランケットをかけてあげようと……、し、してただけ!!」
永遠の発する声が、入ってすぐに抜けていく。
私の中には、来るはずもない永久がどうしてここにいるのか。
それの思考を止めることができない。
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