フっちゃいました!?
「やっちゃった……。やっちゃった……。」
頭を抱えて悶絶する。
締まり切らない気持ちが胸を押さえつける。
少しの焦りが、変な方へと行動させた。
今思い返すだけでも、自分は何をしているんだと自問自答してしまう。
「浮かない顔してどうしたんだ?」
「え、あ……樹君。」
「俺っちも忘れずに!」
「神事君。」
放課後の教室に2人が入って来る。
一息しろと缶ジュースを手渡された。
息つく暇もないのに、勘弁してほしい。
「で、1人でどうしたんだ?」
「ちょっと、考え事を。」
「紅桜のことでも考えてたか?」
「あ……、うん。」
なぜか分からないけど、嘘をつけなかった。
樹君を前にしてそんなことをすれば、なんとなく負けだと思った。
「もしかして、あれか?例の手を掴んで無理やり連行してたって言う。」
「連行はしてないよ!?」
「神事言っただろ?逢引だって。」
「あ、そっちか。」
「違うよ!!」
「違うのか?」
叫び声に少し喉がむせる。
今日のうちに何回叫ばさせられるのか。
「ちょっかい出すだけならやめてよね!」
「そんなつもりは……。多少心配をな。」
「落ち込んでないか心配してたんだぜ?ほら、紅桜の方も反応鈍かったし、きっとうまくいかなかったんだろうって、樹と話してたんだ。」
「それは……ごめん。」
心の底から反省する。
僕が卑屈な人間だから弱い部分を出しすぎた。
こうやって心配してもらってるのに、僻んでしまう。
「……で、紅桜引っ張り出して、どう切り出した?」
「そ、……れは、…………『好き……です』って……」
「なるほど……」
「……」
「それだけ?他にもあるよな?」
「え?……何も……」
「な、にも?」
「……うん。」
口を閉じ、2人ともが上を向く。
息を合わせて同じ行動を取っているみたいに、次々と動きがかぶる。
何となくだけど、失望しているのが分かった。
ただ、それを言葉に出さないように、どうにか喉元で抑えてる。
次出す言葉を探し当てるように手探り状態。
こんな姿を見せられたら、ボクの行動がどれだけ酷かったかよく伝わる。
「……まぁ、あいつの事だ。すぐに返事はなかったんだろ?」
「……ごめんなさいって……逃げられた……。」
「…………本当か?」
「……」
そうだよね。
何も言えないよね。
私もさ、紅桜ちゃんに必ずOKをもらえるなんて思ってなかったよ?
でもさ、せめて引き伸ばしはしてくれると思ってたよ?
実際は謝罪を受けて、その場を逃げられて。
完全に終わってるよね。
「……まあ、フラれたのは仕方ない。」
「そうだな。切り替えよう。」
「ははは……」
「まぁなんだ、……奢るから何処か行こうぜ。」
「そうだな。ヤケクソに食べるもよし、動くもよし。」
「……ありがとう。」
「はあ!?!?……告白されて、テンパって逃げ出したぁ!?!?」
「わーわー!!大声出さないで!?」
3人になすすべなく自白させられた。
こんな事恥ずかしくて絶対言えなかったのに。
とにかく悔しい。
「いや、どう考えても、最悪な行動してるわよ。」
「分かってるよ!……でも、まさかあんな直球に告白されると思ってなくて……。それに、相手が永久だったから余計に……さ。」
「そんな同情を求められても困るわよ。」
「そうですよ!そこは逃げず、ちゃんと断らないといけません!向こうがフラれてないと勘違いします!」
「私もダメだとおもうな。それは相手を傷つけちゃうよ。」
やっぱり、行動は良くなかったよね。
でも、私もテンパって余裕がなかったもん。
許してほしい。
「どうやって謝ろう……」
「逃げられたから、かなり落ち込んでるでしょうね。」
「そうだよ、ね。」
「でも、告白を断るなら、謝る必要はないのではないですか?もう一度言われても、先輩に告白した人が2度フラれる体験をするだけではないですか?」
「確かにそうだね。謝るのも何か違うかも。」
「いや、それが……」
言葉に出そうとすると息が詰まる。
確かにあの時は戸惑ってしまって逃げ出した。
でも、私は断ろうと思っていなかった。
戸惑いはしたし、好かれる事が怖かった。
面と向かって本心を告げられる事に困惑した。
実際に付き合いたいのかと言われたら、違うかもしれない。
自分の気持ちが今でも分からない。
永久という人物を愛せるか分からない。彼氏と観れるか分からない。
多分私最低な人間だから、それが出来ないかもしれない。
だから、目の前に迫る真剣な眼差しに私は負けた。
自分に出来ないものだから、目を背けてしまった。逃げてしまった。
「はぁ、断る気がなかったの?尚更、終わってるわね。」
「面目ないです……。」
「困ったね。断る気はなかったけど、断るかのような態度……。相手は絶対勘違いをしてるよね。」
「それならいっそ断りましょう!先輩が男の人と付き合うのに反対です!」
どうしよう。やっぱり2人の言う通りだよね。
私の行動のせいで、行動するにも何も出来ない。
本当に、最低だ。
こんな時、氷柱姉なら……、いや、それはダメ。
頼るの良くない。
「一先ず、告白については今は諦めるわよ。」
「そうです!諦めましょう、先輩!」
「大丈夫かな?」
「知らないわ。それより、次に会った時どう接するかでしょ?」
「え、もう、会話が必要ないのでは!?」
「う、それを言われたら、確かに。」
「確かに大事だね!告白の2日目をするにも、先ずは会ってからだしね!」
「まともに喋れるかな?」
「そこは、あんたならできるでしょ。」
「あんまり……自信ない。」
「なら、もういっそ話さないと言うのはどうで……」
「はーい。美和ちゃんはこっちで静かにしてましょうね。」
「弱気なのは意外ね。そう言うの得意でしょ?」
「違うの。」
確かに、関係が悪い人間と話したりすることは特に苦ではない。
相手とどうだろうが、何か話す必要があれば割り切れる。
話しかけたりすることに勇気が必要とかはなかった。
ただ、今の私は弱い。
いつからか、少しだけ勇気が必要になった。
情けない姿が出るようになった。
それに、真剣な告白……私が断らない前提のものだから、受けきれていない。
今までとは違って、きっと話しかけることをためらってしまう。
話をしても、絶対詰まって話にならない。
どうせ、逃げ出してしまう。
「……なら、そこはこっちでどうにかするわよ。」
「どうやって?」
「あいつに力を借りるわよ。」
向けられたスマホの画面には、樹とのトーク履歴。
そして、落ち込んでる永久と樹、神事の3人が映ってる写真。
「私たち……あいつが話の架け橋になるから、どうにかしなさい。」
「頼って、いいのかな?」
「良いわけないでしょ!?……はぁ、でも、そうしないと無理でしょ?なら、仕方ないから頼りなさい。少しだけか、彼氏を貸してあげる。」
「……意外だね。」
最初に会った時より、断然と大人になってる。
私と違って成長してる。
羨ましいほど眩しい。
明るくて、手を伸ばしてしまいそうなほどに輝いてる。
素直でまっすぐに伸びて、それでいて前に自分を克服してる。
だから、樹は散琉ちゃんを好きになったのかな?
「今日のあんたに比べたらなんて事ないわ。」
「そんな事ない。だって、私より凄いことをしてる。」
「ともかく、どう言う会話をするか決めておくわよ?どうせ頭の中が真っ白になるでしょ?」
「それは、経験?」
「……そうよ。文句ある?」
「ないよ。恋の先輩の言葉なら信じる」
「何それ。……まあいいわ、頭に叩き込むわよ。」
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