悩みます!?
「あ〜、もうだめだ!全然だめ!」
部屋の中でうずくまる。
早すぎる鼓動のせいで、気づかないふりをしていた気持ちに気付かされる。
抑えても抑えても、この鼓動はなり続ける。
絶対だめなのに、そう思ってきたのに。
女の子を好きになっちゃだめ。
紅桜ちゃんは女の子だから。
私は誰も好きになっちゃだめ!
なのに、胸の鼓動が痛い。
気づけって、訴えてくる。
紅桜ちゃんだって、そう言う関係になる事を嫌ってる。
私が抑えないといけないのに。
「……二の舞は嫌だよ。」
溢れる涙を掬い上げながら、目をこする。
心が痛い。
過去の記憶が今もなお蝕み続ける。
「なんで、こうなっちゃうんだろう……。」
繰り返さないと決めたのに、どうしても同じことをしてしまう。
こんな事なら、一度の失敗を恐れないような人間になりたかった。
もっと言うなら、胸を張れるようなかっこいい人だったなら、一度の失敗もなくいけたからもしれないのに。
「ダメだ。頭の中が悪い方にしか考えられない。……こうなったら寝よう。」
こんなこと考え続けたくない。
苦しいのが続く事が嫌だ。
どうせ、何もしないのだから、変な妄想で悲しくなりたくない。
瞼を閉じて、無理矢理思考を変える。
浮かびそうなる言葉をどうにか沈めて無を貫く。
閉じた視界に映る顔すら黒く染める。
明日になればきっと忘れてる。
これは今日で終わり。
明日は笑顔でいられる。
「……」
「永久くん、おはよう。……今日は元気無いね。」
「委員長…ちょっと寝不足なんだ。」
「そうなの?昨日何かあったの?」
「いや、色々考えてたら寝れなくなって……。」
「色々……、発情しちゃってたの?……あぁ、男の子って溜まると大変なんだよね?ちゃんと出せた?」
「……ごめん、ちょっと何言ってるの?」
急に耳元で囁かれたと思ったら、変な言葉が飛び出してびっくりした。
正直女の子同士だったとしても、ドン引きだよ。
いや、もしかしたら寝不足のせいで、僕の耳がおかしいだけかもしれない。
「紅桜ちゃんとデートしてたらムラムラしちゃったのかなって。」
「待って、前提がおかしいよね?」
「どこがおかしかったかな?……あ、デートはしてなかったね。」
「そうだよ。あとね、ムラムラも発情もしてないからね!?」
「面白い嘘をつくね!だって永久くん甘い匂いしてるもん!」
「発情したら甘い匂いが出るとか無いからね!?」
「いやいや、匂いするって。ちょっと嗅がせて。」
鼻を近づけて、薬品を匂うように手を仰ぐ。
まるで何か匂いを嗅ぎ取ったかのように反応し、体を反応させる。
違法薬物を吸ったかのような体の反応と薄い声が本当に危なそうに見えた。
「甘くて病みつきになるぅ!……あ、精子の匂いもする!身体中にぶちまけちゃったの?すごいね!」
「…………」
「どうしたの?そんな汚物を見るような目をして。」
ドン引きを通り越してしまった。
委員長の様子おかしすぎて言葉が出ない。
こんなヤバい人だったっけ?
委員長がリアル狂人に変身してた。
「委員長、大丈夫?僕よりも委員長の方がヤバそうだけど……。」
「ははは。……大丈夫だよ!ほら、私メンタル化け物だから!あのクソビッチ野郎が何言おうと気にしてないよ!」
え、委員長の目に深淵が映ってる……。
昨日はとても元気だったよね?
昨日から今日の朝にかけて何があったの!?
「ま、あれについてはもう良いや!それより、永久くん!!」
「は、はい!」
「紅桜ちゃんとは、どうなったの!?」
「…何も無いから―、何も……。」
言葉にすると恥ずかしくなる。
実行に移しても度胸が無かったせいで何もできなかったなんて言えない。
アレだけ好きにならないように心を決めても、すぐに好きになる。
手を出さないように思っていても、動いてしまうし。
矛盾だらけですごく苦しい。
「何を悩んでるか分からないけど、同意無しでことには及んだらダメだよ?」
「何の話かな?」
「乙女の口からは……。まあ、紅桜ちゃんは優しいから、勢いよくやれば断らないよ。」
「野蛮な方法過ぎるよ……」
「何いってるの!?漢らしさとは度胸と勢い!!」
「かもしれないけど、今の流れで使われてもただのレイ……」
「ち、違うよ!私が永久くんに獣のように紅桜ちゃんを襲えって言う訳ないよ!もぅ!」
顔をにやけさせながら涎を垂らしている人間の発言とは思えない。
どんな妄想をしてるんだろう。
本当に気が狂ってるみたい。
「委員長、そろそろ席に戻ろうね?ちょっと冷静になろう。」
「私は平気だよ!あのクソビッチバカ便器女のことなんか気にしてないよ!」
「……」
あ、ダメだ。
変な絡まれ方されたっぽい。
何気に下品な悪口を超えてる。今時炎上するタイプの発言だ。
委員長をここまで追い込むなんて……。
こんな委員長相手にしてられない。
話を切らないと。
「委員長、一度でいいから冷静になろう?」
「私は冷静だよ!そんなに疑うことあるかな?」
「うん。」
「仕方ないな……。冷静になるか……。」
目と口を閉じる。
うーと悩むような声を数秒続ける。
「……やっぱり私はもとから冷静だよ!」
「そ、そっか……。」
あ、これはもうボクには無理だ。
委員長が自力で冷静になれない以上、私がどれだけ言葉を口にしても耳を傾けてくれない。
「おはよう。二人共……?元気ない?」
「あ、紅桜ちゃん!」
「?」
良い所に!
紅桜ちゃんなら委員長を引き取ってくれるかも!
ごめんなさい、紅桜ちゃん!
「委員長、そろそろ朝礼だし、席に戻った方がいいと思うな?それに、紅桜ちゃんが来てくれたから、話を聞いてくれると思うよ?」
「もうそんな時間か……。そうだね、紅桜ちゃんとお話しようかな。」
「??」
「さ、席に戻ろっか!……あ、樹くんがちょうど来た!」
席に戻る紅桜ちゃんに心の中で手を合わせる。
情けないことをしている自覚はあるけど、ちょっとこれは私には無理だ。
2人が居なくなると席の周りが静かになる。
これから朝礼があるから、静かになるのは問題ない。
けど、たまに紅桜ちゃんの周りが羨ましくなる。
あのテンションについていくのはしんどい事もあるけど、話してる顔を見ると、とても輝いて見える。
やっぱり胸が痛いや。
紅桜ちゃんが笑う度に締め付けられる。
アレだけ気持ちを否定してもダメみたい。
話せれば嬉しくなって、他の人と話してるのを見ると苦しい。
紅桜ちゃんに会うだけで気持ちがこんなに揺らぐなんて思ってもみなかった。
今の私はきっと誰にも顔を見せられないと思う。
それだけ、気持ちに呑まれてる。
もう、私はこの気持ちを認めるしかない。
きっと、嘘だと思う事ができない。
嫌だな。
嫌われたくないな。
でも、伝えたいな……。
この気持ちを伝えたい。
嫌われるって分かってるけど、それでも伝えたいよ。
こんな時、彼ならうまく伝えられるのかな。
彼ならきっと迷わないだろうな。
彼が羨ましいな。
一番近くにいる彼のようになりたい。
迷うぐらいなら、行動に起こせる人間なりたい。
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