永久と一緒に帰ります!?
「みんな、待たせてごめんね。」
「広瀬くんがついに来ちゃった!」
「離れたほうがいいかな?」
「いや、そこは霜雪の返答次第だと思う。」
「りょ!」
離れた場所で話し始めて少しすると、永久が戻って来た。
場所をうまく伝えられたか自信がなかったので、少し安心だ。
代わりに、話に盛り上がっていたクラスメイト達は、身を寄せ合って内緒話を始めていた。
うっすらと内容が聞こえるからこそ、変な気遣いはやめてほしいと思う。
永久は、私を心配して遊びに誘ったのに、下心なんて誤解をされたくないはずだ。
「ボク、何かしたかな?」
「丁度、永遠の話をしてただけ。気にする必要はないよ。」
「それ、悪口を言われてなかったって、喜んでいいのかな?」
「ポジティブに捉えてたほうが後々楽だよ。」
「そっか。」
こっちも内緒話をする。
小さい声で掛かると息がくすぐったく感じるけど、今は我慢。
何食わぬ顔を貫いて返答をする。
そんな中、クラスメイトも話をやめない。
と言うか、私たちの話を聞いてより盛り上がった気がする。
「あれ、私たちに気づかれないように密談してるよね?」
「絶対してる。気づかれてないと思ってるね。やばい、尊い。」
「これが……青春。」
「こんなアオハルをリアルで見れるなんて!」
盛り上がってるな……。
別にね、気にしてないから良いけどね?
相手に失礼ではあるからね?
てか、黒瀬が話を止めてよ。
何で聞き耳立ててるだけなの!
いつもなら、叱るぐらいするよね!
もしかして、混ざりたいとか思ってる?
まさか、思ってないよね?
あ、黒瀬が輪の中に徐々に近づいてる!
いや、中に入った!
話に入って、こっちに目を向けながら話してる。
もう終わりだよ。
ん?
瞬きで何か訴えかけてる……。
『ゴ、メ、ン』
黒瀬の口の動きを注視すると、そんな言葉が出て来た。
…………謝らないで!
「あ、あのさ、本人達の前で、内緒話をされると……」
「ごめんごめん。せっかくのデートの雰囲気ぶち壊しだよね?」
「で、デート!?」
「広瀬君やるね!……ってことで、私達は邪魔はしたくないから、もういくね!」
「霜雪ちゃんもごめんね?」
「今度みんなで埋め合わせするから!」
黒瀬もクラスメイトと同じく申し訳なさそうな顔をしながら行ってしまった。
これは完全に誤解されたままだ。
今から否定してもどうにもならないや。
「行っちゃったね。」
「ね。……誤解されたままね。」
「誤解…………デ、デートって、間違われてるよね。」
「うん、言っちゃってたしね。……明日、噂されるかな。」
それが今もっと気になること。
こんな事噂されてたら、教室にいられなくなるよ!
あぁ、明日はきっとみんなから変な目で見られるんだ!
視線が集まるのが辛い。
「紅桜ちゃんは、動揺しないね。」
「そんな事ない。しっかり驚いてる。」
「全然顔に出てないから、気づかなかった。」
「そうかな?私顔に出やすい方だと思ってたけど……」
男だったら時はあまり表情を出さないようにはしてた。
というよりは、冷めてたから何事にも一定の距離があったんだと思う。
今思えば、もう少し近づくべきだったのかもしれない。
仕方ないと壁を作って、勝手に離れてた。
もしかしたら、話せば分かってもらえていたかも……
『紅桜、あなたを分かってあげられるのは私だけ。お姉ちゃんだけを信じて。何を言われても、信じちゃだめよ。』
そうだ、忘れるところだった。
私がどうして壁を作ったか。
簡単に信用していいはずがない。
過去の話にして、後悔の対象にしてはいけない。
氷柱姉の優しさでしか私は救われなかった。
「なんだか、疲れちゃったな。」
「そうだね。今日はもうお開きにしようか?」
「そうしたいけど、一息つきたいかな。」
「なら、いつもの場所に行こうよ。」
「いつもの?……あ、あそこのね。でも、意外。永久にとっては苦手な場所だと思ってた。」
「苦手ってわけではないよ?……ただね、僕たちが入っていい場所なのかなって。」
そう言って、少しだけ苦虫を潰した顔をする。
私は、可愛いもの、綺麗な物について目が無かったから特に気にならなかった。
神事は周りを気にしない性格だから、何も思わなかっただろう。
樹も周りを気にしないし、何より甘いものに目がない。
女の子であると分かっているから、永久があの場にいても気にする必要ないと言える。
けど、それを知らず、男だと思っていたら、今の永久の気持ちになるのも分かる。
このTSは日常を変えてしまう、元々の性別がどっちだったからと言う理由を謳えない。
こういった問題にもなってしまう。
だからこそ、可哀そうだと思ってしまう。
「ま、男子禁制ではないから、胸を張っていこう!」
「紅桜ちゃんは肝が据わってるよね。元からさ……」
それは、据わってたわけではないよ。
外でしか気を抜けれなかったから、自分の事で精一杯だっただけだよ。
ショッピングモールから少し離れた場所に向かう。
私たちが向かうのは、スイーツカフェのお店。
店内外ともにピンクを主とした彩の装飾で、女性人気が高い。
「いらっしゃいませ!あっ永久にゃん、おひさー!」
「ひ、久しぶり……」
陽気なテンションで出迎えてくれたのは、このお店でアルバイトをしてる子。
私たちがよく通っていた時に、常にいた子。
通う回数が長くなるにつれ、徐々に話す事が多くなり、すごく仲良くなった。
「永久にゃん、最近全然来ないから心配してたよ。いつきんと紅桜にゃんもいつの間にか来なくて……残ったのはしんじんのみだよ。」
神事は来てたのね。
基本的にみんながいる時にしか行かないから、みんなもそうなのかと思ってた。
「……て、そっちの子は初めての方かな?ふ〜ん、ちょっとちょっと……」
「何かな?」
「永久にゃんもついに彼女が出来たんだね!良かったね!」
「彼女って……」
「反応が初々しいにゃ〜。」
永遠の腕を引っ張って、耳打ちを始める。
ただ、声が大きくて何を言っているのか丸聞こえ。
「彼女連れて来たってことは、カップル割にしとくにゃ。」
「いや、ボクら……」
「どうも初めまして!」
トワが余計なことを言いそうになったので静止する。
ここに来た意味を無にするところだった。
ここは、カップル割がある。
しかも、女性側の値段が8割減!
たまに恋人同士出来ている人も見る。
それから、ホントかウソか女性同士で恋人を名乗って割引してもらっている人もいる。
私たちは、男同士で恋人とかはやってこなかったけど、今は性別が違うから適応してもらってもいいと思う。
「私、紅桜って言います。永久と恋人同士で、デートで来ました!」
「これは丁寧にどうも。永久君に恋人とは涙がホロりにゃ。……と、席案内をしますね。こちらへどうぞ。」
永久は面食らった顔をしながらも、足を運んでいた。
そこへ、ごめんとポーズをとって謝る。
その後、注文を軽く唱え、口を運ぶことにした。
やっぱり、ここのスイーツは別格で下がとろける。
「紅桜ちゃん、さっきのは……」
「もちろん嘘だよ?ほら、あそこはカップル割にするとすごく安くなるから……」
「な、なるほど……」
帰り道、気を取り戻した永久に問われて答える。
何も伝えていなかったから、きっと驚いたはず。
でも、学生の持てるお金も多くないから仕方ないよね。
「永久、今日はここまでで。」
「家まで送るよ?」
「ちょっと用事があってね、今から行かないといけない場所があるの。」
「……そっか。なら、また明日ね。」
「うん、また明日。」
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