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美和ちゃんとお話です!!

 今年の実行員は保健係になったため、去年との勝手が変わる。

 指示に従って見回りを行い、困っている人がいれば案内をする仕事から変わってしまう。

 保健係は基本的に二箇所にとどまることになっていて、一つは外テント、一つは保健室。

 

 外テントは保健師と一緒に熱中症対策として飲み物を配る事になっている。

 保健室は怪我をした生徒の手当てとベットの貸し出しを行う。

 基本的には外テントの方が来た人みんなに飲み物を配るため仕事が多い。

 保健室は怪我人が続出することが基本的ないため、冷房の効いた部屋で静かに待っている事になる。


 仕事的には保健室の方がやる事がないため簡単だけど、代わりに文化祭に参加する事が出来なくなる。

 もちろん当番制なため、当番以外の時間であれば自由に回る事ができる。

 ただ、準備係の時のように樹達と一緒に見回りが出来ないのが難点だ。

 せっかくの文化祭なのに、保健室で待機か、入場口で飲み物配布のどちらかしか選択できないのは酷い。

 改めて、保健係の苦労を目の当たりにする。


「先輩の顔がさっきよりも暗くなってます?……保健係は嫌でした?」

「嫌…とまでは言わないけど、樹達と文化祭が回れないのは残念だなって……」

「う……、あの男ですか…。私の先輩を未だ惑わすなんて……満先輩も……なのに……」


 まだ、樹の事を気にしてるんだ……。

 しかも、満さんの名前も出て来てるし、樹は何をしたのだろう?

 変な事はしないと思ってるけど……。


「先輩、あの男は危険なので、文化祭中は絶対にあったらダメですよ!」

「そこまで!?……樹は悪い人ではないよ?」

「関係ないです!…絶対に接触させないです!私がガードします!」


 過剰な防衛本能すぎて、ちょっと怖いんだけど。

 そろそろ、許してあげてほしいな……。

 と言うか、前に許してた気がするけど、記憶違いかな?


「安心してください、先輩の担当時間は私と同じにしておいたので、文化祭中一緒にいられます!」

「え!?」

「驚きましたか!!ドッキリ大成功です!!」


 待って、ドッキリってどう言う事!?

 それよりも、もう当番の時間を決めてたの!?

 そんな話、何一つ聞いてないよ!?

 私の都合は一切関係無し!?


「喜びのあまり、声を失ってますね!!」

「え、あ……ちょっと待って、いつ決まったの?」

「昨日決まりました!先輩が学校に休んでる間、話は出てて、ちょうど期限が一昨日だったので、私が申請しておきました!」


 あー期限がね、一昨日だったのかー。

 その日はちょうど氷柱姉と会った日だ。

 なら、無理だ。

 絶意に外せない日だから、どうしようもないね。


「うん、……理解した。後で当番の時間教えてね?」

「はい、分かりました!!」


 実行委員の仕事はこれ以上聞くと疲れそうだったので、今日はここまでにした。

 残りの時間は、自習と美和ちゃんの勉強を見た。

 やっぱり教室でみんなと勉強するよりも、心が落ち着いて出来る。

 この場所を作った人はきっと、優しい人だ。


「美和ちゃん、ばいばい。」

「うう……もっと一緒にいたいです!」


 時間になると美和ちゃんを先に帰らせる。

 私は後一限分の授業があるので残って自習をする。

 保健室の方には先生がいるけど、擬似的に一人の空間を作れる。


 充分リラックスして勉強ができそう。

 文化祭が終わった後に定期試験があるから、文化祭の準備ばかりに時間割いていられない。

 

「し、失礼しまーす……紅桜ちゃんいる~?」

「?」

 

 勉強に手を付けようとすると、扉から声がかかる。

 扉には、顔を少しだけ覗かした永久がそこにいた。

 私を見つけると、少しだけほっとしたように顔を緩ませて、少しだけ女の子らしさを感じた。


「永久、どうしたの?」

「あ、やっぱりいた。来てよかった~。」


 永久は私を見るなり顔を緩ませる。

 それが何を意味するのか分からずに疑問が残る。

 教室の方で何かあったのかな?

 

「6限目が休校になったの忘れてたでしょ?」

「休校…?」

「朝礼の時に言ってたの聞いてなかったよね。しんどそうにしてたからもしかしたらって、思ったんだ。」

「あ~、確かにあまり聞けてなかった気がする……。」


 思い出そうとしても、少しどころか何一つ覚えていない。

 今日は本当にダメだな。

 美和ちゃんにあれだけ先輩面してたのに恥ずかしい。


「教えてくれてありがとう。私は片付けがあるから、先に行ってていいよ。」

「あ……えっと、…………一緒に帰らない?」

「いいけど……待たせる事になるよ?」

「う、うん。それは大丈夫。」


 すごく言いづらそうにしてたけど、どうしたのだろう?

 一緒に帰る事ぐらい普通のことなのに。

 帰路の途中で何か仕掛けてるとかかな?ドッキリ?

 でも、永久はそんな事をするタイプではないからな……。


「何を考えてるの?」

「……え、いや……特に、何も。」

「あ〜や〜し〜い!」

「ほ、本当だよ!……邪な気持ちなんて……」

「…………ぷっ。冗談だよ。それに、永久なら私でも撃退できそう。」

「なにそれっ……!?」


 冗談を言うと、笑みがこぼれてしまう。

 永久の反応も面白いから、余計に笑いが止まらない。

 久々に笑った気がする。


「……冗談は置いといて、どこか行きたいところがあるのか?」

「それが……ふ、服を見に行きたいなって……」

「服なら一人で行けば?……あっ、別に、一緒に行きたくないって事では無いからね?」

 

 私の答えを聞いて、永久の顔がくすんだ。

 一言置く前に急いで訂正を行う。


「う、うん。分かってるよ。」

「そ、そう?……理由を聞いていいかな?」

「そ、そのね……ボクってほら、元々女の子だから、久々に気になって……」

「……?永久なら一人で行ってもバレないと思うよ?……まあ、恥ずかしいなら一緒に行ってあげる。」

「ほ、本当!?」

「丁度、新しい服を買いたいなって、思ってたの。」


 私の答えを聞いて、今度は喜ぶワンコみたいに笑顔を輝かせる。

 永久は奥手な所もあるし、一人だと大丈夫だと思っていても動けないタイプだよね。

 都合もいいし、行くに越した事は無い。

 丁度、誰かに見てほしいなって、思ってた。

 それで、氷柱姉に見せて……。


「紅桜ちゃん、どうかしたの?」

「……大丈夫だよ。荷物も整えたから、行こう!」


 永久の手を引いて部屋を飛び出す。

 こういう時は勢いが大事!

 やるぞーって思った時が一番の行動タイミング。

 こういう気を逃すと一生停滞してしまうからね。


「紅、桜ちゃん、て、手……!」

「別に女の子同士、問題ないでしょ?」

「ボ、ボクは、男……」

「見に行くんでしょ?……女の子の服。今からなりきろう?」

「……うん。」


 なんとなく、心が晴れたような気がする。

 絡まっていた糸が少しほどけたような、喉のつまりが取れたような、体が軽くなる感覚。

 同じ人間を相手にして、何かを共感して楽になってるのかもしれない。

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