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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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筆談報告

 別室だ。と言うか軍務特使であるゴーンに当てがわれた執務室だ。

 昨日の今日でよく手配が済んだ物である。


「あらましは報告書で目を通したが、理解が及ばない点もある。まあ、それは後として、今回の遠征を総括した所見を聞きたい」


 それは有り難い、理解が及ばない点は(アル)絡みだから、専門家の意見無しには報告不可能だ。


 折角専門家(ゴーン)が目の前に居る事だし、報告からのゴーン解析を、こちらこそ聞きたい。


 いや、本気の本気で。


「兵科としての戦果は想像以上でした。機動架台の機動性能もさることながら、特殊弾との相性がよく、一撃離脱、そう、軽装騎兵と同じ運用で、重装騎兵と同じ戦果を上げる事が可能と思われます」


「うむ、続けてくれ」


「昨日の試用では重装騎兵との連携でしたが、砲門が更に四門あれば、機動架台単独出撃が可能です、交互に砲撃をすれば良いのですから」


「同意見だ、ただ、猟兵の狙撃が怖いがそれについてはどう考える」


 火砲が敵陣に肉薄するのだ、当然考えられる。


「猟兵の射程外から二号散弾で砲撃し、それから接近水平砲撃で宜しいかと、ただ、盾役は必要で、そこは考慮する必要が有ります」


「ああ、昨日の後退砲撃は見事だった。成る程、あれを事前に行うのか、上手く行けばそれで決着だからな、盾役とは?」


「これは実用性よりも、心理面での装備となります。火薬を担いでの火砲突撃となるので、誘爆の恐怖感は尋常では有りませんでした」


「成る程、盾兵員もしくは機動架台に盾装備の改良が必要だな、機動性が削がれない様、防弾効果がある様、そんな改良点が必要な訳だ。本国に帰国後開発部に具申しよう」


「これはアル技官からの提案ですが、アーガイルの中距離野戦砲、これに慣れたので、専用機動架台を作りたいと、現行は試作なので」


「了解した、先程の話からして機動架台は八門で稼働したい様だったがそれで良いのか?」


「いえ、行軍中の軍馬の疲労具合からして、砲門は全て機動架台が良い様です。戦闘時のみでなく通常行動時の事を考えますと」


「これも了解した。さて、当たり障りの無い質疑はここまでだ。筆談で要点を答えてくれ」


「了解しました」


 盗聴されているとは思わないが、士官階級でこの位の要心が出来ねば馬鹿である。


 友好関係では有るが、テュネスは同盟国ではないのだから。


「重火砲用の二号拡散弾が想像以上の効果を発揮したとの事だが、詳細を」


「口頭で答えられる部分は口頭で返答します。まず、砲弾重量が軽くなった為、従来の重火砲でも最大飛距離が伸びました。計測は状況的に出来ませんでしたが、体感的に」


『2割増し程』


 もどかしいが、仕方ない。東灯台砲台の運用はアルニン組のみの運用だった。


 火砲の飛距離向上など、超機密事項だ。

 飛距離が2割増しになるなら、拉致されて情報を引きずり出される程の機密だ。


「それから、これは想定外でしたが」

『二号拡散弾は対戦艦、いや、船舶全体に絶大な効力を発揮します』


「具体的にはどう作用したのだ」


『船舶の主帆、副帆を切り裂く様に破壊するので、航行不能にします』


「ほう。では、あとは的当ての要領で砲撃か。成る程、三艦撃沈拿捕とはこうした理由か」


 二隻は沈めたが、一隻は拿捕していた。ただ、拿捕した戦艦は、損壊激しく連合王国製を立証するのは困難だ。


「はい、何よりも収穫だったのは、アル技官の様な砲撃の神手による戦果ではなく、通常の砲手による戦果だと云う事です」


「成る程な、では、海軍にも汎用が効くな。軍艦登載の火砲は、云わば寸足らずの重火砲だから新型砲弾も使用可能か……」


「流石です、言われてみたら尤もで、計測射撃が出来ない状況の海軍こそ、効力を発揮するでしょう。対物拡散弾だから命中しやすい」


「うむ。さて本題だが、何故連合王国艦隊は全軍撤退したのだと思う。これが不可思議だ、現場で実際目撃した貴官の所見を聞きたい」


「……これについては、つい先程判明した事で、報告はこれからになるのですが……」


「なにやら言い難そうだが、どんな情報でも構わない、これ程の軍事行動をしながらの不意の撤退だ。有り得ない不測事項が発生したのだろうが、それが特定できない」


 やはり、見えている人間には見えるものだ。

 その通り、有り得ない不測が発生したのだ。レオンは感心する。


『連合王国艦隊総司令、ジャール提督を、アル技官が重火砲で狙撃し殺害しました』


「なんだと!本当か!いや、彼ならあり得るか!いや、しかし!」


 そう、この辺りになにやら引っ掛かりを感じるのだ。彼、アルが嘘をついているとは思わない。連合王国の行動から、ジャール提督は確かに死亡したのだろう。


 だが、何か違和感を感じるのだ。


「当人と、その時帯同行動をしていた砲班長が兵舎に居ますので、詳細は直に質問される事を進言します。その、多分に彼の言動は超常的でして」


 オカルト的にな意味だけでなく、常識的な意味でも超常的だから丸投げしたいのだ。


 まあ、ゴーンの専門はオカルトだからちょうど良い。


「フム?中尉の言からすると、彼の“神の眼”とは別の要因がありそうだが、そちらもそっち系かね」

 ……なんか、イキイキとしてきた。


 本当に好きだねぇ。これさえ無ければ、良い上官なんだが。


 レオンはそう思うが、まあ人間とはそんなものか、と納得させる。彼もまた生粋のアルニン人で、アルニン人は超楽天的だ。


 アルとダッドが呼ばれた。

後二話で2章完結します。なので明日連続二話投稿します。

最後までお付き合い願います。

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