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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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テュニス、テレ街道会戦2

 両軍はザバ平原、テュネス、テレ街道で対峙した。


 テュネス軍1万。師団兵数人員だが、ここでは軍を名乗る。


 テュニス軍、兵員数不明。一個連隊プラス一個砲兵大隊。兵員2500プラスα

 実質テュニス四連合王国連合軍。


 数ではテュネスが圧倒しているようだが、砲門数、火砲性能ともに劣り、高地を押さえられている。

 動員出来る砲兵部隊は、パルト砲兵小隊を含め7小隊の70門。アルニン以外は骨董品とも呼べる青銅砲だ。


 テュニス軍想定砲撃射程の倍距離に陣を敷く。彼我の陣の距離はおよそ4㎞。


 テュニス、テレ間が距離にしておよそ10㎞。


 つまり平原全域が戦地と化した事となる。



 損耗を考慮しなければ、重装騎兵突撃、重装歩兵前進、砲台占拠がセオリーだ。


 しかしテュネス軍は混成部隊だ、6個歩兵大隊と騎兵大隊が直接指揮出来る戦力で、他歩兵大隊はあまり当てにならない。


 迂回案も出たが、その場合敵砲兵大隊はテュニス城門まで撤退するだけで、状況は現在より悪化する。


 長期的に戦争を継続させる意図があるなら、別に悪くもない。


 砲兵大隊をテュニス城門内に封印でき、被害は微少に抑えられる。


 海上は封鎖中だし、各方面軍を招集し、テュニスを包囲すれば、あとは勝手に陥落する。

 120万もの人口を抱えて、籠城など不可能だからだ。


 これがどこの紐もないテュネス国内の内乱なら、それがベストだ。


 だが、紐は双方に付いている。時と金は有限だ、速攻性が求められる。


 代理戦争をの辛いところだ、国土が荒れようが、大国には他人事でお構い無しだ。




 テュニス側は防衛一択だ。砲撃射程内に重装歩兵を配し、前線堡塁を構築する。

 丘上の砲台拠点を中心に同心円上に重装、一般歩兵を配する。


 重装騎兵、重装歩兵の前線突破を防ぐ為だ。


 テュネス側は軽装騎兵の出番だ。厳密には擲弾軽装騎兵だ。


 最前線に築塁された重装歩兵堡塁に、手投げ爆弾を投擲するのだ。


 重装騎兵では進発、後退時に猟兵の的になってしまう。装備+擲弾では重量超過である。


 風の様に軽快に前線を駆け抜けなければならない。


 ただ、これは前線堡塁攻略の為ではない。敵火砲の最大射程を測る為だ。



 テュニス連合軍としては、前線堡塁を擲弾攻略される訳にいかない。


 軽装騎兵の出撃に合わせて丘上から砲撃が開始された。


 テュニス連合側からの騎兵迎撃出撃は無い、やはり騎兵戦力は無いのだ。


「ダーレン曹長、敵火砲の射程はどれくらいだと思う」


 司令部の脇にレオン砲兵小隊は配置されていた。

 司令部に砲兵部隊が?と思うだろうが、この時代はこれが普通だ。


 火砲の側が一番の安全地帯で、定点砲撃なら司令部が砲撃点となる。


 敵側もそれは同じで、砲門が最も配備された地点が司令部の位置だ。


「砲弾重量は不明ですが、およそ打ち下ろしで1000位ですね。軽装騎兵が砲弾を拾ってきてくれると助かるんですが」


 砲の規格が違うので、砲弾の重量が分からない事には装薬量の見当がつかず、最大射程距離がつかめない。


「だいたいウチのと同じ位かな」


 ウチのとはアーガイル中距離野戦砲とだ。此方からは打ち上げになるので、射程が同じと云うことは性能は勝っている。

 新型も旧型砲も新砲弾により、射程が伸びていた。


 ただ、数が違いすぎる。こちらは10門、あちらは160門。重火砲の封印を解きたくなる。


 軽装騎兵は良い仕事をしてくれた。おおよその火砲射程距離が掴めた。


 掴めたが、対抗手段が無い。


 青銅砲では最大射程所か、最大飛距離ですら600㍍も砲弾を飛ばせれば御の字だ。


 敵砲台を砲撃するに足りる火砲は、レオン砲兵小隊にしかない。しかし、それも10門。


 以上の事をふまえれば、砲撃支援を切り捨て、損害覚悟の消耗戦、騎兵、歩兵突撃の前線突破、砲台占拠なのだろう、


 つまり一周回って、当初の作戦が妥当だが、


 それでこの場の勝利を収めても、まだ首都奪還戦が控えている。


 残存兵力は不明だが、海上封鎖により軍港内に押し込めている海兵戦力が残っているのだ。


 海兵は、メクラ撃ちとは云え砲撃を行える。

 損耗著しい所に、首都防衛城門砲台から砲撃を喰らいたくはない。


 なので、余力を残して勝ちを収めたい。


 ……重火砲の野戦投入が戦いの根幹から変えてしまうとは、つまり砲撃射程が違いすぎるからだ。

 彼我の司令部間が4000㍍なので、重火砲ならば距離は届くのだ、複数門で砲撃を行えば一方的に蹂躙可能だ。


 いや、司令部に限らない。砲台だろうが、堡塁だろうが、前線重装歩兵陣だろうが、ワンサイドゲームで終了する。


 ……重火砲の誘惑に、負けそうになるのも当然だ。


 司令部に同席しているゴーンに、レオンが呼ばれた。


 バクスタール以下司令部将校の前に出る。

 図らずも会戦となったが、殆ど遭遇戦だ。事前に作戦会議など出来る訳がない。


 砲撃を受け後退、布陣を整え、軽装騎兵に指令を飛ばしただけでも、大した物だ。


 工兵が、前線に土嚢築塁を進行中だ。


「パルト中尉、現状は理解していると思う。敵砲撃により進路を塞がれたが、進軍進路を変更するつもりはなく、敵戦力の撃破を決定した」


 ゴーン少佐だ、見慣れないからか、テュネスの軍服姿は周囲から浮いて見える。


「騎兵部隊の尽力により、敵火砲の射程は知れた。当火砲部隊の射程では、前線堡塁に攻撃砲撃をするには、敵火砲射程内に入らなければならない」


 ナンセンスな話だ。そもそも火砲砲門数が違う。青銅砲がノコノコ前進中に、集中砲火を浴びて壊滅だろう。正に的当ての的だ。


「そこで、砲科の専門家としての意見を聞きたくて貴官を呼び寄せたのだが、所見はあるかね」


 所見も何も、と思ったが意図が知れた。機動砲兵小隊の出撃を促せと云うのだろう。


 戦況は、劣勢と云うほどでは無いが不利である。


 そもそも、テュニス側のここでの抵抗の意味が無い。同じ抵抗ならば、城門守備重火砲で抵抗した方が守るに易い。


 ……時間稼ぎ、進軍遅延目的だろうが、テュニスの動向が不明だ。


 ならば、時を稼がせず速攻撃破でテュニスの意図を挫くが常道だ。


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