表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
64/174

射撃大会

「やった事ないな、撃ち方も知らないから、どうだろう?感覚的にいけそうだけど」


 長銃自体触った事がない。だから射撃姿勢を知らないし、取れない。


「何やら面白そうな話だ、技官殿は射撃()は有るのだな、試してみようではないか」


 ……連中は酔っていた。只酒と云うことも有るが、海兵は生還の解放感から、砲兵は船酔いでゲーゲーやった所に、空きっ腹のアルコールだ。


 戦艦二隻撃沈の興奮が甦り、射撃大会に移行する流れになった。………なんで?


 倉庫内では不味いので、埠頭でだ。商業港であるが、テュネスは戦時だ。港の埠頭部分をテュネス海軍が臨時に接収してある。


 倉庫を空に出来ないから、船酔いから本復していないモス軍曹とモス砲班が残る。


 長銃を持った小隊人員が、海軍水夫とゾロゾロ向かってきたのだ、埠頭付近に接舷中の艦隊水兵達は騒然とした。


 が、先頭を進むのはバクスタール提督だ。


 アルニンの砲兵に挨拶しに出掛けた事は周知だ。だからすぐに収まった。小走りで寄って来る者がいた。


「提督、何事ですか?アルニンの砲兵小隊の方々を引き連れて?艦隊視察ですか?」


「サンドロ中佐、斯々然々(かくかくしかじか)で射撃大会をすることになった。何か的を頼む」


「いえ提督。斯々然々では分かりません。それに射撃大会?何故ですか」


 当然の質問だが、何分酔っている。バクスタールも口が軽くなっていた。


「アルニンの砲術家に神手がいるのだ。先の連合の二隻も、その者の砲撃で沈めたと云う。

 やったことは無いそうだが、長銃射撃もいけるそうだ。興味が湧かないか?」


「な!それでは気のせいではなかったのか!

 いや、提督失礼しました。

 小官は連合の艦に何かが命中した所を目視していました。直後の爆発に気を取られ、それが砲撃であったとは思いもしませんでした」


「中佐、報告に無かったぞ」


「申し訳ありませんでした。砲撃の可能性は意識の外で、除外していました。隕石の衝突の可能性ならば報告に上げたのですが」


「ああ、あれか。流石にあり得ないと思って目が流れた。すまん」


 どっちもどっちだ。




 狙いを定める。的は50㍍先のリンゴ。昔から的はリンゴと決まっている。


 流石に頭の上ではない。


 ハッキリ言って、アルの構えば素人丸出しだ。


 生意気にも立射体勢だが、なんとも不格好だ。


 棒立ちに、無理繰り長銃を構えましたよ、ヤッタネ♪

 といった感じで、巫山戯ているようにしか見えない。


 長銃は軍曹の物を借りた。


「重い。なんだこれ、タイミングが掴めない」


 端から見れば失笑物だ、長銃を支えられないで銃口がブルブルと()れる。


「タイミングが合わないな」


 静止射的だから、本来はタイミングも無いものだが、これだけ銃口が振れるのだから、感が掴めないのだろう。


「お!手伝ってくれるのかね、新入りの二号君」


 そうアルが呟くと、銃身がピタリと静止する。

 構えは変わらず、不格好なのだからあり得ない。


 直後激発。“ダンッ”


 火打式の長銃だから、火蓋の当金(あたりがね)に、火打石がバネの力で打当たり発火するのだが、当然衝撃で銃口が()れる。


 振れる筈なのだが、銃身自体が微動だにしない。それどころか反動すらしない。


 だがそれを気にする者も居ない、的に全視線が集まっていたからだ。


 リンゴのど真ん中に命中。弾け飛んだ。


 ほう、と云う感嘆があちこちから漏れる。


「やるなアル、当てるとは思ったが時間がかかったな。砲撃ん時は即射だったが」


「銃身が振れて射撃タイミングがその都度変わるんだよ、でも分かった。次からはそんなにかからないよ」


「何か言ってたが、三号降臨か?」


「いや、新入り二号だ、キモイぞこれ。磯巾着かな」


 デカイ目玉が付いて無ければ、磯巾着に似ていた。


 この会話はアルニン語だ。テュネス海軍の面々には通じない。


 この後射撃自慢が、我も我も我もとリンゴを撃った。


 流石に的が小さくて、立射姿勢で射つ者は居ない。

 伏射で銃身を支えての射撃となる。


 当たったり、外れたりだが盛況だ。


 で、当然と言えば当然で、埠頭の方から連続の銃声が響きわたる訳なので、港湾警備隊が出動してきて、長銃を手にしている全員を連行した。


 港湾警備隊は軍組織では無い、アルニンで云う所の、治安維持省警邏局の下部組織に相当する。


 なので参考人として、バクスタール提督とサンドロ中佐も連行されていった。




 レオンがヒョッコリと倉庫に戻ったのは、その頃だ。隊員の不在をモス軍曹に尋ねる。


「モス軍曹、隊員が貴官と、貴砲班員しか居ないのは何故なのだ。何やら酒臭くもあるが」


「はい!隊長と参謀殿が、テュネス政府の首脳部と出られた後、テュネス海軍提督が見えられました。ワインを差し入れられ、固辞する事は失礼と、ダッド曹長の言により、小隊で頂きました」


 ワイン樽が有るのはその為か、酒の件は分かった。続きを促す。


「途中、本日撃沈した戦艦二隻の話しになり、我々の武装を見せた所、提督は大層感じ入られ、二人の曹長に質問をされました。

 そこにアル技官殿が小用から戻られ、砲術の話しになったのです」


 ……彼が絡んだのか、嫌な予感しかしない。

 それより。


「テュネス海軍の提督に武装を披露したと言ったが、全ての武装をかい?」


 機密だから不味い事は不味い。まあ、性能が知られなければ、ある程度は構わないが。


「いえ、戦艦を撃沈した重火砲架台だけです。そこでダッド曹長が、技官殿の射撃は長銃でも出来るのか質問をされたのです。

 我々もそうでしたが、提督も興味を示されまして、射撃術を見るべく埠頭の艦隊係留地に向かったのです」


「すると、小隊の面々もそれに連られてか?」


 なにを考えているのだ。モス砲班を残しているだけマシだが。


「その、言い訳がましく言いにくいのですが、その時かなりアルコールが入っておりまして、勢いに任せて、射撃大会の運びとなりました」


「……射撃大会……」


 本当に何を考えている、呑気とかそんな次元じゃ無い。


 ほんの数時間前まで、生きるか死ぬかの瀬戸際だったと云うのに、もう娯楽に興じているだと。


 ……正気か……


 レオンが絶句していると、港湾警備隊から小隊人員の引き取り要請がきた。


 小隊隊長が保護者扱いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=752314772&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ