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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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双子の将軍

「バクスタールです、アルニンの方々。援軍感謝します」


 バクスタールは、如何にもといった風貌だ。


 白髪が混ざった、俗称、カイザー髭を整えた偉丈夫だ。


 アルがいたら、“おお、正に将軍様”などと喚きたてた事だろう。


「アルニン軍総合総司令本部所属、作戦参謀少佐、ゴーンですお見知り置きを」


「アルニン軍総合総司令本部所属、臨時編成新型砲教導砲兵小隊隊長、砲兵中尉パルトであります」


「海軍から報告があがっています。()()海賊艦隊の襲撃を受けたとか。無事で何よりでした」


「海軍の方々の助力により、難を逃れました。艦隊の手配を感謝します」


「閣下、()()海賊と把握されている事から、何処の艦隊か目星がついて居られるのですか?」


「断定まではしませんが、連合でしょう。近ごろでは、連合の艦がテュニス軍港に清々入港していると報告を受けています」


 護衛に艦隊を寄越したのは、当方の歓心を買うためだけでもないようだ、確実にキナ臭くなっている。


「現在、テュニスは外部から孤立しましたから、港が頼りなのですよ」


「つまり、首都近隣の都市、防衛戦力は正統政府の支持をしたと?」


 そこまでは掴んでいない情報だった。出国前に共有した情報では、連合不利程度のザックりしたものだった。


「貴国のお陰ですよ、アルニンの支持が大きい。ご存知テュネスは輸出依存経済だ。

 テュネスの各財閥の協力もあって、首都周辺都市以外の支持を取り付けた。

 彼等も国内の混乱を収めたいのだ」


 ゴーンは内心ほくそ笑む。


 勝ち戦だ。アルニンの支持表明で大勢が決したのだから、護衛艦隊派遣も、また擬装海賊の横行も頷ける。


 ただ、テュネス資本か………まあ、今は良いだろう。所詮他国の事情だ。


 状況は、これ以上ない位に好都合だ。大規模な戦闘に巻き込まれる事もなく、勝ちに乗った。

 更にはアルニン支持の上での事だから、政府としても恩を売れ、上々の結果だ。


 あとは、機動砲兵の実地投入()()だけだ。



「では、周辺都市のいずれかに、教導砲兵小隊のデモンストレーションが必要と言う事ですか」


「如何にも。出来ればテュニス側の降伏を促したい。同胞の流血は極力避けたいのだ。既に大勢は決したのだから」


 情報一つで、ナザレ港封鎖からの一連の軍事行動が水泡に帰す訳だ。連合としては面白い訳も有るまい。


 他国の介入待ちが、却って首を絞める結果になったか。策の弄し過ぎだ。


 しかし、正統政府は理解しているのだろうか、テュネス資本の本質を。


 アルニン政府を動かしたのは、誰だと思っているのだろうか。


 その後、バクスタールと話しを詰めた。

 テュニス衛星都市、テレ城塞市街の攻略だ。


 テュニスの衛星都市だから、大規模な武力は持たない。大事が有れば首都から戦力が派遣されるからだ。


 アルニンで例えるとナザレ軍港城塞都市とパルト市街の関係と同じだ。


 だが、今回は恐らく戦闘に成らない、テュニス陸軍は迎撃に出兵はしないだろう。


 と、言うより陸軍兵力はない筈。精々首都防衛に一連隊が残っている程度だ。


 テュネスでは通常、一連隊は四個大隊からなる。





 前面に砲兵小隊を配備し、司令部と進軍してアルニン支持を見せびらかす、云わば宣撫行進を請け負う事になった。


 些か拍子抜けだが、機動砲兵の適性行軍速度を図れるので、無意味ではない。

 軍馬での牽引になるので、馬の疲労を測る。


 暫定政府所在のテュネス内陸部、ハマクーラ城塞都市から、バクスタール大将が指揮する一個師団が進発する。


 砲兵小隊は此方の歩兵中隊と共に、ザベスから街道沿いに南下し、途中ザバ市街で師団と合流する。


 同時にスール軍港より、かき集めた四個艦隊が出艦し、テュニス沖に停艦する。


 ザベスからはバクスタール艦隊が出艦し、遊撃する。


 四連合王国艦隊の牽制だ、テュニス海軍を封じる海上封鎖の為でもある。


 作戦行動開始は10日後とされる。


 教砲小隊は歩兵中隊と合流したのち、三日後の進発だ。


 この後、本当の意味での歓迎会となったのだが、流石に部下を待機させて、自身は歓待を受けるのも気が引ける。


 レオンは、顔繋ぎ程度に留め早々に辞去した。


 ゴーンは流石に慣れたもので、情報収集に努めた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 時はレオンとゴーンが、臨時政府要人に連行された頃に戻る。


 借り受けた倉庫で、待機中の小隊に来客だ。


「誰か来たみたいだね、軍人?海軍の人かな」


「適当言うなよ、んな事わかる……三号様か?」


 残念、一号だ。船上でもそうだったが、最近一号を通して感覚が冴える。


 レベルアップか?


「なんだよ三号様ってのは?」


「守護聖霊だとよ、此方に御わすアル技官様は、何とカルなんちゃら守護聖人様に比肩するお方だそうだ」


 なんかトゲが有る。簀巻きの八つ当たりだ、大人気ない。


「ははは、守護聖人揃いだな、ダーレン曹長はヨハネスだったっけ」


「コロンボにも、そのうち適当な守護聖人を見繕ってやるよ」


「なんダ守護聖人ってイうのは?」


「ダーレン曹長、ダッド曹長、テュネス海軍の提督が見えられました、どうしよう」


「ウンコしてくる。ピさん、便所の場所分かる?」


 マイペースな連中だ。教砲小隊は各砲台の混成だから、各々固まっている。


 会話に加わってはいないが、コロンボ、ダーレン、レオンの砲班員も一緒だ。


 倉庫の大扉が開いた、まだ、夕刻には早い。

 陽射しが差し込む。


「驚かせたならすまん、アルニンの諸君。貴君達に差し入れを持ってきたのだ」


 流暢な公用語が聞こえた。


 公用語の主は偉丈夫だ、白髪の混ざった、俗に言うカイザー髭を蓄えた()()()()だ。


 将官位で有ることは海将独特の服装から分かる。


「テュネス海軍少将バクスタールだ、諸君達の援軍、心から感謝する。

 また諸君達の護衛任務が、僅かばかり間に合わなかった。謝罪する」


 もう一人のバクスタール氏だ。こちらは海将だ。


 ピンときただろうが、二人は双子だ。


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