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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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テュネス国軍臨時総司令、バクスタール

 ゴーンとレオンは、テュネス正統政府の集団と共に、歓迎会と称する参戦打診諮問会議に連行された。


 教砲小隊はと云えば、港湾内に借り受けた倉庫に装備弾薬を移動し、小休憩を取っていた。


 此方から到着の連絡をザベス市長に入れて、今後の行動指針を定める予定であったが、市長どころか先方の最高責任者がやって来たのだ。


 あまり良い予感はしない。


 上がいなくなったので、ようやくダッドは簀巻きから解放された。


「ヒデェ目にあった、猿轡までする事ぁねえだろが」


「馬鹿野郎。冗談めいた仕置きで誤魔化したが、本来なら軍事裁判物だ、海兵扇動してどうするよ」


 冷静になってみれば、一言もない。


「でもよ、軍艦二隻だぜ、頭に血くらい昇って当然だ」


「まあな、俺も年甲斐もなく興奮した。で、お前を見ていて覚めた。まあ、海兵連中も大概だったから、誤魔化せた。貸しにしておくぞ」


 とはいえ、ダーレンもボロボロ涙を流していたので、端から見れば充分大概だったのだが。


「艦隊が戻ってきたな、一応恩人だし、暇だし挨拶に行く?」


 まだ日中だ。予定では早朝に到着する筈だったのだ、擬装海賊に追い回されて遅れたが、まだ3時を過ぎた所だ。


「待機命令中だ馬鹿、勝手するとこの親父に簀巻きにされるぞ」


「いや、んな事ァしないさ、アル技官は軍人じゃ無いから待機命令も無いよ。

 ただ、トラブルの予感しかしないから、出歩かない方がいいぜ」


 テュネス艦隊は、海賊擬装の艦隊に良いように遊ばれたようなものだ、海兵も殺気立っている。

 トラブルは必至だ。特にこの男は近づかないほうが大吉だ。


……一号も漂ってきた事だし。



 一行は市議会所の会議室に連行された。


 ザベス市は良港を有する人口40万の都市だ。

 ナザレが60万なので、規模は大きな部類だろう。

 テュニスは消費形の港湾都市だ。首都の為、人口120万人の二、三次産業の税収で賄っている。


 ザベスはテュネスの主貿易品である食料品の輸出で賄っていた。


 当初連合寄り、と言うよりテュニス寄りで

 あったが、テュネス世論がフランク、アルニンに傾くと即座に正統政府に支持表明をした。


 これは仕方ない。ザベスとテュニスは距離にして60㌔程しか離れていない。方や首都防衛戦力として、海軍本部が控えている。追従して当然だ。


 だが、陸軍を抑えた正統政府が、ザベス防衛戦力を回してくれるとなると、話が違ってくる。


 世論が傾き、支持表明をするのも当然と言えば当然だ。


 ザベスは穀物産出の一大農地を押さえている。

 陸軍戦力の方が、ザベス市の治安世情は安定するのだ。




 互いに初対面だ、それぞれ挨拶を交わして本題だ。


「まずは、確認なのだが、アルニンの砲兵は、援軍であるとの解釈で宜しいですかな?」


 ゴーンはテュネス側の面々を見回す。


「会議室が広すぎる様です」


 暗に人払いが必要と要請した。アリー暫定首相はそれには首を振る。


「それには及びません。ここにいるのは、首都脱出時からの同志です。外部に漏れる事はありません」


「わかりました。では、率直な事を言いますと、違います。そもそも、小隊の人員で戦力勘定をされても困ります」


 これには、レオンが“おや?”と云う顔をする、若い。


「ふむ、では()()()()を喧伝することは如何ですか?」


「はい、戦力勘定は困りますが、充分援軍効果をお国で発揮出来ると、我が国では考えています」


「では、派遣された砲兵小隊の運用は、此方に任せて頂けると」


「戦闘行為以外ならば。新型砲の試射も、場所を選定すれば、援軍効果が有りましょうから。選定した場所、日時は従う様に命令されています」


 これは嘘が多少混じっている。責任の所在をアルニン政府に押し付けて暈しているだけだ。


 全権委任されているとは、態々公言しない。


 あと、戦闘行為も別に禁じられていない。

 俗な言いかたをするならば、(連合とフランクに)バレなければO.K.なのだ。


 既に戦艦二隻を沈めている事だし。


 なのでレオンは“おや?”とした訳だ。


「では、選定をさせて頂きます。軍事的な説明になるので、専門家を呼びますが、宜しいですかな」


「信頼の置ける人物ならば。軍部の方ですか?」


「テュネス国軍臨時総司令、バクスタール大将です。総司令を入れてくれ」


 バクスタールは出迎えには参加せず、此方で待機、いや執務をこなしていた。


 海軍からの報告書を受けとり、急遽執務となったのだ。


 詳細が不明な報告書のため次報待ちだ。

 まさか、詳細不明の原因がアルニン輸送艦だとは思わない。


 彼は元々陸軍少将であり、テュネス内陸部の要塞都市の司令官だ。


 クーデターで首都から脱出した親フランク、アルニン議員を保護した功により、テュネス国軍の最高司令官となる。他に人も居ない。


 強運ではある。ハッキリ言えば、首都防衛組の様な精鋭、エリートの類いではなく、クーデター騒ぎが無ければ、田舎要塞都市の司令官が上がりだ。


 能力的にも、首都防衛組からすれば、一段下がる。


 それが一躍、国軍の暫定総司令だ。


 世情が安定すれば、暫定の文字が取れて、あわよくば元帥だ。


 なので、アルニンからの援軍は大歓迎だ。

 首都奪還の手伝いをしてもらう心算であった。

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