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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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0.3、0.5、0.8の奇数配合

 調合室だ。例の食材は既に煮しめた状態だ、透明なクリーム状態である、少しも美味そうでない。


 火薬の調合もする部屋なので、火気厳禁だ。

 焼成は焼き付き塗装などを行う、焼成室で行う。


 それよか、ギャラリーが多いよ、臭ぇ。


 アルの目には、部屋中に三号達が居る様に見えるのだが、他者にとっては貸切り部屋状態だ。


 新入りの軍人三号が硫黄を指差した。

 調合で比率を変えるのは、硫黄と云う意味か?


 因みに新入り軍人三号は六名で、今指差しした三号が、一番階級が高い。

 喧嘩になりかけた三号でもある。


「取り合えず、木炭と混ぜよう」

 硫黄の比率を変えるのだから、炭は良いのだ。


 調合用なのだろうか、やたらとデカいボウルに両方を投入し、交替で混ぜた。


 ギャラリーは特に無反応。


 火薬調合用の木炭だ、均一に粉になっている。

 割りと早く混ぜ終わった。


「2㎏づつ取り分けて、100㌘づつ硫黄を混ぜていこう。アル技官の推奨配合は、1対1対0.5だから柔らか過ぎたり、固すぎるかもしれないけど、試験片を取り分けて用途を考えたい」


 靴底の例もある、意外な用途を思い付くかもしれない。


 さて、ギャラリーだが、0.3、0.5、0.8、の奇数配合に反応した。


 例のキチがい笑いだ、もう慣れたが、コイツら本物の馬鹿みたいだな。


「ガリ少尉、これと、これと、これ。半分貰って良い?」


「そりゃ㌧単位で材料が有るから構わないけど、焼成前で良いの?」


 新入り三号がうるさいのだ、さっきからバケツを指差している。


「それから、ガリ少尉、そこのバケツの中身だけど、何それ?貰っても良い?」


「おまっ!分からない物を貰って……そうか、三号とやらが降臨か」


 最初からこの部屋に団体様で御降臨だが。


「全部は不味いけど、構わないよ。長銃弾の研究用の鉛弾だけど、どうするの?それから、三号って?」


「俺もよく分からないけど、何だろね?死に損ない?成仏未満?妖精?悪霊?精霊?何かそんな感じの臭い汚物みたいな奴?」


「さっぱりわかんねぇ。なんだよ汚物みたいな精霊って、アル、大っぴらに言うなよ。

 少尉殿、アルの噂は耳にしたでしょうが、こんな感じで、こいつは突拍子もない事を口にします。

 ですが、これはこいつの天恵と言うか、閃きと言うか、たまに訪れる天才的発案時に有ることなんです。なので、内密に願います」


 一応フォローはしておいた。


 別にこの国では異教徒は構わないのだ、ブブエロがそうだ。


 だが、アルはアルニン人だから誕生時に洗礼を受けている筈だ。


 だから、教会に異端認定されると不味い、破門は当然として、教区から追放される。つまり国籍戸籍が抹消される。


 まあ、移民政策の名残りで、外国人として新規に帰化戸籍登録すれば良いのだが、保証人がいなければ難しい。


(何年も前に廃止された移民受入法では、市町村が保証人となり帰化戸籍登録された、審査方法は市町村による)


 逆に言えば、異端認定された所でその程度だ。中世ではないのだから火炙りは無い。


 なのだが、今は時期が悪い。


 戸籍剥奪となると、国籍も剥奪され、当然軍も放逐される。


 今アルに放逐されると、重火砲移動架台が出来ない。


 いやそれ所か、南方大陸の砲兵派兵自体が無くなる恐れがある。


 それだけは、断じて避けねばならない。


 俺はアレを戦地でぶっ放したいのだ!


 重火砲だぞ、重火砲!ロマンの塊じゃないか!


 ダッドの思惑は兎も角として、ガリレイは承知した様だ。別に彼は教会親派では無い。


 アルはと云うと、途中から面倒になり聞いていない。鉛弾を適当に仕分けて団子状態の試験片に詰めていた。


 何やってんだ?


「リクエストはこれか。ギャラリーの大半が満足してお帰りだ」


 見た目は同じ黒団子だ。


「アル技官、なんだいそれ?」


 アルは首を傾げた。


「わからん。まあ、これで良い筈だから、焼成しよう」


 握拳大の、馬糞の様な塊だ。軍曹が食いついた。


「なあ、アル、それ砲弾じゃないか?何で長銃弾を混ぜるのかは知らないが、固めたら撃ってみようぜ」


「はい、正解です。凄いね軍曹、よくこんなんで分かったね、流石サイコ軍人」


 何か残った三号達が、軍曹の発案に反応しゲラゲラしていてウザいのだ。


 と、言うか別に俺が言わなくても、コイツら通じているじゃん。


 今度から、軍曹に考えさせよう。


「本当、一言ずつ多い馬鹿だな。お前作っている時、判らないでやってるのか?」


「うん」


 シャアシャアとしたものだ。


 だが、全部が全部分からないでやっている訳では無い。


 今回は脈絡が無さすぎて、理解の外だっただけだ。



 試験片だが、0.3以下は形にすら成らなかった。


 やはり、硫黄の量が増えるごとに固さ、弾力が増す様だ。


 形には成らなかったが、0.3以下も一応バットに開けて焼成室に回した。


 ガリレイ技術少尉が予め焼成した靴底だが、良い感じで固形安定していて、さっそく靴底に張り付けた。

焼成前の0.5配合を塗りたくったのだ。


 船のメンテナンスに使用していたと言ったが、これは火で炙れば固まるから、目地、隙間埋めは勿論、部材間の強い接着効果があるのだ。


 これはガリレイ技術少尉に喜ばれた。この手の接着剤は開発中だったそうで、これも特許申請に回すそうだ。


 焼成室前で野郎が三人、己の靴底を火で炙る姿は、ナンとも言いがたい絵面になった。

応援有難うございます。


武侠少女の方も応援お願いします。

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