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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
2章
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ウレウレのウハウハ商品

「つまり、軍部で独占したいんですな。確かにアレが他国に渡ったら大変だ」


「つまり?」

 アルは素で鈍い。


「つまり、特許申請して誰でも作製出来る様になると、他国が真似をして、軍事的優位性が無くなる」


「アル、“じゃあ軍属は止めた”は、無しだぞ。辞令は下りたし、軍令に従う義務がある。

 最悪、アルを拘束軟禁しなければならなくなるぞ」


「そんな事は言わないけど、怖いね国家公務員は、小便漏らしそ」


「まあ、そんな訳で手当は弾むよ。それに何時までも申請不許可という訳ではないよ」


「と、言うと?」

 アルは本当に、素で鈍い。


「軍事技術は、どうしても周知される。アレもその内に他国に知れる、類似した物が出回った頃に許可かな。

 他国にしても、特許申請はしないだろうから、やはり、ウレウレのウハウハになるだろうよ」


「特許取るのを、後回しにしろって事か」


「そう云う事。それから、アルは開発行きは嫌がっているけど、別に車両作製を嫌がっている訳ではないのだろう?」


「いや、開発云々じゃ無くて、城塞内が嫌なんだよ、人間が多い所だと、あいつらも矢鱈と湧くから臭くて嫌だ」


「はい、アルそれ禁句ね。周囲からも色々聞くけど、変人で通してよ」


「何だよそれ、変人で通せって」


「いや、アル不味いんだ。お前師匠がどうの、ウンコがどうのと、他人には感知出来ない物を感知するだろ、大っぴらに放言してると、異端の嫌疑が掛かる」


「大分緩くなったけど、教会の異端審問は健在だからね、中世さながらに拷問されたくはないだろ」


「あん?軍じゃ宗教審問もするのか?マジかよ」


「そこまで大袈裟じゃないけど、軍部内は教会の親派が多いのは確かだから、教会絡みで失敗する人はいるよ」


「何で教会親派が多いんだ?軍人なんて粗野で野人みたいな物だろ」


 当人は、その粗野な野人に属そうとしているのだが。意識の外だ。


「酷い言い草だな、アル。まあ、心の救済だな、新兵なんかそうだが、中々人は他人を殺せない。殺せても、どこか心が歪む」


「成る程、心のメンテナンスに宗教を活用するから、嵌まるヤツは嵌まるんだな」


 まあ、嵌まらないヤツは、軍曹みたいにイカれるんだな。やれやれ。


「まあ、火炙り水攻め鞭打ちは勘弁だから、なるべく変人で通すけど、大変だな変人の振りは」


 これには、二人とも答えない。そもそも変人の振りをして欲しいのではない、

 普通で良いのだ、普通で。


 だが、今更それは無理な相談だろうから、せめて異端嫌疑が掛からないように、ウンコ関係を封印してくれれば良いのだ。


 判っただろうか?


 判らないだろうな。


「……話を戻すけど、開発部の工房に例の車両を作らせたいんだけど、アル、技術協力をして欲しい」


「そりゃ構わないけど、どうするの。いや、ただの車両を作るのか、移動砲台を作るのかで設計が変わる。

 砲台ならばこの間の砲なのか、旧式砲なのか、一門なのか複式なのか」


「複式か、良いな、代わる代わる砲撃か、ロマンだな」


「ウーン、重くなって機動力が削がれるのは悪手かな。と言うよりね、まだデータ収拾をする段階でね、試作架台を造るのが先決なんだ」


「少尉殿、内容からして、第三砲台の業務ではありませんね、予算は大丈夫なので?」


「それは大丈夫、火砲術研究室を新設した時、概算で予算は確保したから。参謀本部からも根回しが有ったみたいだから、予算案はすんなりと通ったよ」


「参謀本部?何故参謀本部が、火砲術研究室の予算案に?少尉殿はツテでもあるのですか?」


「この間の()()は、アルの砲撃のみに目が行き勝ちだけど、移動架台の有効性が実証着目された訳でもあるんだ」


「つまり?どゆこと?」

 アルは本気で素で鈍い。


「つまり、特許に待ったを掛けたのも、火砲術研究室の設立に助力したのも、参謀本部の意向によると」


「ゴーン大尉殿が、参謀本部長以下、各務諸参謀に根回しをしてくれてね、参謀本部は総合司令本部内でも発言力が強いから、各部に意見通達したみたいだよ」


「成る程、道理で軍属の任命に辞令書が発行された訳だ、さっさとやれと名指しで圧力を掛けてきたのか」


「つまり、根回しをしといたから、砲術研究室で働けとな、まあ、良いけど砲台はどうなった?」


「研究するにも、移動架台が無ければ話にならない。だから兼務になるけど、アルに開発部の工房にって話だったんだ」


「やっと判った、何で先生が給料に“色を付けた”だの“弾んだ”だの言ってた訳が、こき使うからだ」


「色々すっ飛ばせば、そう云う事だよ。

 アル、軍属は悪い環境じゃないよ、衣食住が只だし、軍人ほど禁則事項はないし、有休だって使える。使う場所が無いから貯金できるしね」


「……なんか、あまり魅力はないな。そもそも車両の接収が嫌で軍属志望した訳で、更には車両の借金を……ああっ!」


「なんだよ、いきなり、アルお前落ち着きが無さすぎるぞ」


「先生、そう言えば砲門運搬の受領書はどうなった?ババアん所からまだ金貰ってない」


「私の裁量で決済出来る額だったから、とっくに運送費を送金したが、アルと運送屋とのやり取りは知らないな」


「それもそうか、受領書にサインをもらってババアん所に請求せにゃ、受領書はまだ渡して無かったな、確か」


「まあ、その話は後で。それで、開発部の工房なんだけど……」


 こんな感じで、三歩進んで二歩下がる形式の対話から、アルは第三砲台付火砲術研究室所属が決まり、開発部工房への技術提供兼、実験砲台作製が決定した。


 頑張れ、予算だけは潤沢だそうだ。

当分の間、隔日投稿になります。

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