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突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!  作者: 蟹江カニオ 改め 蟹ノ江カニオ
1章
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エピローグ

一段落つきました。次の戦い?の序章になります。

「……貴官は、随分と個性的な部下を持っているのだな」


「……一人は軍属なので部下という訳ではないのですがね」


 参謀のゴーン大尉とレオンだ。


 陥落した第三砲台の引見と、本作戦の殊勲者に会いに出向いていたところ、

 先程の狂態に出くわしてしまったのだ。


「取り込み中のようだ、出直そう」


 ゴーンは踵を返した、レオンもそれに続く。


「下から見ていたが、あの命中精度が新型砲門の売りなのか?准尉」


「いえ、新型砲門は砲弾の口径と飛距離、それと砲身の耐久性が目玉で、精度の方は普通でした」


「すると、あの精度は砲手の腕前か?いや、そんな砲手なら耳にする筈だが?」


「小官の方が、近くで見ていたので解りましたが、あれは軍属、アルというのですが、彼が砲撃調整をしていました」


「……いや、やはり覚えがない、軍属武官待遇者に、その名は聞いた覚えがないな」


「……いえ、彼はパルト市街から車両を借り受けるときに、臨時に徴用した一般軍属です。車両の扱いに慣れていたので、ここまで随行して来ました」


 一口に軍属と言ってもその幅は広い。


 基地内の売店の売り子も軍属だし、軍轄酒保のお姉さんも軍属と言えば軍属だし、兵器工厰から出向してきた技術者も軍属だ。


 武官待遇とは、データ収集、機器整備などで、従軍参戦する軍属に付けられた、正式な階級だ。


「すると、貴官は一般軍属に、参戦攻撃命令を出したのか?」


 雲行きが怪しくなってきたが、言質は取ってある。


「手段は一任するとの命令でしたので。

 彼はあの車両に一番精通していたので、適任と判断したのです」


 意訳すれば、丸投げしといてグズグズ言うな!と、いった所か。


 ゴーンはその意図を察した。大体、彼は参謀であって憲兵ではない。


「いや、准尉を問責している訳ではない。

 つまり運搬要員だった彼が、神業とも言える砲術を披露したという訳だな?

 これはあり得る事なのか?」


 実際目の当たりにしたが、信じられなかった。高速で移動し、停車したとほぼ同時に撃発、すかさず移動、全弾命中。

 常識では考えられない。


「……答えになるかは、解りませんが、極稀にそうした異能ともいうべき天才が現れます。

 大尉殿も、そうした天才は聞いた事がありませんか?」


「ムッ……つまらない与太話としてならな、

 100年先の日付の曜日を当てたりとか、

 数秒眺めた風景を詳細に描く。とかな」


「砲術家にも、やはり居ります。距離を計測する訳でも、風力、風向を調べる訳でもなく、目測だけで砲の仰角を定め、砲弾を目標に当ててしまう、砲術の天才が」


「あの光景を見た後だから、信じられるな」


「機動砲兵。機動砲架台にあの砲撃精度。小隊、いや中隊規模であれが編成できたら、戦の形状が変わると思いませんか?」


「フム、……いや、それだけに留まるまいよ、戦術では収まらず、戦略いや、国家戦略レベルで変革するだろう」


「いや、些かそれは……」


「貴官は砲術家としてしか、あの移動砲架を見ていないが、あれは応用が利く。

 例えば軍事だが、砲台据付けの重砲も、あれなら屋外に運搬できるだろう」


 レオンは己の不明を覚る、巨艦巨砲の有利は当然だ。

 重砲の砲弾質量、射程共に、野戦砲に数倍する。

 現に今日も、もし重砲がこちらに回頭できたら、戦にすらならず、遠巻きに包囲する()()手立てがなかったはずだ。


「物資運搬効率も格段に上がる、補給線の確保が容易くなる。……いや、兵の移動にも使えるな、行軍専用車両を作ってもいいな。

 今ざっと考えただけで、これだけ思い付く」


 レオンは舌を巻いた、確かに自分は機動砲兵構想しか、思い付かなかった。


 同じものを見て、参謀と砲兵とでは()()()が違うのだ。


「民間に転用すれば、流通に革命を起こすだろう、従来より早く、大量に物資を運搬できるのだから。

 当然道路も国家事業としてインフラ整備され、国庫から大予算が組まれ、国内景気は爆発的に向上する。

 税収が増える。国威が上がり対外的なカードが増える。

 私は経済の専門家ではないから、断言はしないが、まずこうなるだろう」


「さすがです大尉殿、小官は自分の浅はかさに嫌気がさしました」


「いや、そこまで卑下するのはどうかと思う。私には、機動砲兵構想など、思いつきもしなかった。

 今日の成果を鑑みて、中隊単位で運用できれば、確かに面白い」


 そこまで言うと、ゴーンは内海(ないかい)の艦隊に目をやった。


「見たまえ、パルト()()海上封鎖をしていた艦隊が、堂々と出帆した。

 何処の国の艦隊かは知らないが、恐らく任務を完遂したのだろう」


 わざわざ中尉と言った意図が、わからない。

 ゴーンは続ける。


「この度の、第二第三砲台の調略に、あの艦隊の国が工作している事は間違いない。

 だが結局、あの艦隊は何一つ我々に関与しなかった、ただ洋上に停泊していただけだ」


「だから、公的にこの度の反乱は、軍事訓練と公表されるだろう。外から見たら我々の一人相撲だったからな」


「な!それでは……」


「待ちたまえ、対外的にはそう処理されるが、少なくない人的被害がでているのだ、信賞必罰、とくに信賞は必ず行う。

 ほとぼりが冷めた頃、適当な任務を与え、功労者を昇進させるのだが」


「その、昇進リストに貴官の名前を捩じ込んでおこう。此度の砲門受領で少尉への昇進が決定していると聞いた。

 更にこの戦功だ、二段階の手順になるが、中尉に昇進するだろう、私も推薦する」


「あ、有難うございます大尉殿。しかし何故そこまで小官に肩入れ下さるのですか?」


 当然の疑問だろう、初対面のとき面と向かって、嫌疑が掛かっていると言われたのだ。


「何、私も興味があるのだよ、機動砲兵中隊。世界初の試みとなるだろう。参謀として、実際運用してみたい物だ」


「そのために、貴官には徹夜で機動砲兵構想をまとめてもらう、私の推薦で、総合司令部参謀本部に提出しておこう」


「決定すれば、貴官が中隊の司令官となるはずだ、中尉なのだから」


 そこまで言われて、ようやく意図が伝わった。この大尉は頭が切れ過ぎる


「ハッ!必ずや仕上げてみせます」


 私は踵をカツンと揃えた最上級の敬礼をした。


「貴官とは、長い付き合いになるだろう」


 そう言って、ゴーンは答礼した。


 この後、ゴーンは第三砲台付出向総合司令部参謀として、本当にレオンと長い付き合いになった。

 特記次項だが、彼は何故かアルと非常に馬が合ったという。……とても不安だ。




 そしてそのアルだが、小便をしたかった事を思いだし、


 軍曹を引き連れて、


 崖から仲良くジャアジャアと放尿をしていた。


 一章完

お付き合い頂きまして、有難うございます。まだ未定ですが、次章でもお目汚しできたら幸いです♪


新作、武侠少女!絹之大陸交易路を往く!同居中のショタコン妹を何とかしたいから、をよろしければ応援願います。例の老婆の設定がてんこ盛り過ぎて、使い捨ては勿体ないな~なんて書き始めた話です。キャラかぶり有りです、楽しめて頂けたら幸です。

ではよろしくお願いいたします♪


武侠のほうが一段落ついたら、こちらも再開します。

それでは。

多謝♪

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